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マックス・エルンスト 放浪と衝動

『マックス・エルンスト 放浪と衝動』に投稿された感想・評価

みや
4.0
大学の頃の課題以降、自分が絵を描く際に、いわゆるモダンテクニックがうまく使えた試しがないのだが、本作を観ながら「そりゃそうだよな」と納得させられた。
デジタル技術の進歩でコラージュは誰もが当たり前に使えるようになったし、フロッタージュは小学生も図工でやって遊ぶし、デカルコマニーも図工や美術の授業で扱う先生もいるだろう。
でも、技法はあくまでも技法。問われるのは、偶然に目の前に現れた形や色に、自分の中から湧き出る何と結びつけて表現するかなのだ。自分にとってその必然性がなかった中、エルンストにとっての戦争の影響や彼の中の鳥のモチーフの意味なども描きつつ、その手法とイメージの湧き出し方の融合性が唯一無二だったことが、観る側に、彼の制作風景や作品を通して伝わってきた映画だった。
シュルレアリスム100年映画祭ということで、いくつもの作品が公開されていたが、自分が観ることができたのは、公開最終日の本作のみ。でも、エルンストが、オートマティスムの一つのフロッタージュを獲得していく場面や、後のポロックなどのアクションペインティングにつながったと主張している、穴を開けたペンキ缶を紐でつって揺らすオシレーションの位置付けなども、よくわかり、おもしろかった。
それから、彼が描く森や大地は、ずっと彼の中の幻想的な心象風景という印象をもっていたのだが、アメリカのグランドキャニオンなどの映像を観ると、強烈なリアリティがその裏に存在していることもわかって興味深かった。
やっぱり、表現は、その人を取り巻く環境の積み重ねによって立ち現れてくるのだなぁということも思った。
とにかくこのエルンストという人は、エネルギーに満ち溢れていて、尊大で、自由で、お見事な人生だったのだなあと。
きっと生活が苦しい場面もあっただろうが、いい年の重ねかたをしたことが、彼に刻まれた表情から見てとれた。

付け加えだが、エルンストのアトリエに、カルダーのモビールが飾られていたのを確認して、自分なりにちょっと納得。
シュルレアリスム絵画の中心的アーティスト、マックス・エルンストの生涯を生前のインタビューや創作風景を折り込みながら作品群とともに辿るドキュメンタリー。監督はかつてエルンストと映画を共同制作したピーター・シャモニー。

観るのを楽しみにしていた一本。エルンストの生き様が作品にどのように反映したか、全体像が良く解る優れた伝記映画だった。

ドイツ時代のエルンストが描いた風景が、アメリカ亡命後に初めて訪れたグランドキャニオンそっくりだったのが実に興味深い。本人はこれを予知ではなく「客観的偶然」と述べていたが、非科学的なこの世の運命を感じさせられた。

”芸術家は己が何であるか知ったときに一つの限界を迎えるが、(エルンストの場合は)幸運にも死ぬまで己が何者なのか解らなかった”とのコメントも奥深いものがある。

エルンストの作品は初期の「百頭女」(1929)「慈善週間」(1934)などの銅版画コラージュが好きで、自分の原点のひとつになっていると言えるが、本作で観たその後の作品も気になるものが多かった。岡本太郎や現代アートの殆どはエルンストの引用ではないかと思えてくる。本作の鑑賞を機に中期から後期の画集も入手しようと思う。
mikan
3.8
エルンストをWW1後から晩年の活動まで彼と関係の深かった人々の言葉と共に追ったドキュメンタリー。
時代ごとの作品の変遷も楽しい。
アリゾナの雄大な風景に魅せられた時期がとても良◎

映画終盤の「自分を見つけていない事が(自分の)良かった所だ」「自分を見つけた芸術家は迷う」というエルンストの言葉が良かった。
深い……。

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