麦秋の作品情報・感想・評価

「麦秋」に投稿された感想・評価

完璧な映画

というのはこういう映画のことをいうのかな、っと思います。

父親と母親が二人で空を眺めながら

「今が一番幸せなのかもしれないねぇ」

というシーンがあるんですけど、このシーンが本当に好きです。

この何気ない状態が幸せな瞬間なのかもしれない。って思います。
k

kの感想・評価

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京アニ事件がキツすぎて、ツタヤ行って借りて見た。ツタヤ行列できてた。フィクションがどうしようもなく必要な時があり、それはフィクションの大前提なのかもしれないと思った。
まさかの、はじめての小津

会話の端々に戦争の気配が残ってはいるものの、大文字の歴史と人々の見る夢が融けあい、終始健やかで甘いムードが漂う。
深夜の大人だけの楽しみ、和装と洋装の切り替え、女たちの集う銀座。どこに目をやっても、これはなにかの黄金時代を切りとった映像なのだ思わせる徴がついている。

見た誰もが感じることだと思うのだが、日本家屋の間取りがとにかく強烈な印象を残す。
カメラを置いた地点から画面の奥へと、部屋A→部屋B→縁側→庭という層が重なり、前後左右の動きが軽快に表現される。空間の出入りをとらえる微妙な角度からのショットや、階段の移動を挟んだショットは動きの余韻がかなり楽しい(それでも「?」となるショットが時々あってまた良い…)。
前後の層は襖や障子によって区切られており、その開閉で変化がつくのもたまらない。襖は時代を区切るかのごとく、世代間の生活空間を切り分ける。障子は開けば日差しを通し、閉じれば洗濯物の影をうつすスクリーンとなる。そういえばこの映画には雨が降らない。

終盤、「あなたが結婚するはずだった人が来てるんですって、ちょっと覗きに行きましょうよ」と誘われた紀子のためらい、あの引きずられながらそろそろと歩く身振りに、戦後の日本という壮大な背景を重ねずにはいられなかった。本作の最も美しいシーン。
Ken

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3.5
戦争で亡くなってたりっていうのが散らばっていて、当時の戦争観がわかった。

最近の若い人はって話を友達と昨日してた。同じセリフがこんなところで聞けると思わなかった。
小津作品は「晩春」に続き2本目の鑑賞。生活感あふれる何気ない日々をここまで魅力的な映画に変えてしまうのだからやはり凄い。小津監督のスタイルと名匠と言われる所以が分かってきた。

冒頭の朝食のシーンからぐっと引き込まれた。本当に何気なくて当たり前の普通の日々。それが映画になると一周回って凄く新鮮で斬新に感じた。温かみや優しさに溢れた作品で、じわりじわりと寄せてくる感動があった。ボクシングに例えるならストレートやアッパーの様な強烈なパンチではなく、ジャブやボディブローの様なパンチをこまめに打ち続けられ、気がついた時にはその魅力にドップリと浸かってるというような感覚。「これが小津マジックか!」と思った。

「晩春」に続き原節子の美しさは圧巻だったが、個人的には三宅邦子が美しくて演技もとても印象的だった。笠智衆の存在感も流石だった。

劇中の音楽もとても良かった。
koocky

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3.5
原節子(紀子)嫁入りまでの大家族の物語。
紀子は両親、兄、義姉、甥っ子に囲まれて賑やかに暮らす毎日だが、ある日勤め先の専務から縁談を持ちかけられるところからゆっくりとストーリーが動き始める。
文字に起こすと何てことない話なんだけど、当時の社会的風潮みたいなものが感じられて面白い。今みたいに多様性とかそういうものが無い時代で、女は皆、嫁いでいくのが幸せっていう考えが当たり前だったひと昔前の日本人のホームドラマです。
家族はいつまでも皆んな一緒…とはいかない、それぞれの生き方がある。当たり前のことなんだけど、小津安二郎が紡ぎ出すと味わい深く感じられた。
果糖

果糖の感想・評価

5.0
飛び行く風船をただただ見上げるばかりの老夫婦。諸行無常vs円満家庭の対決は熱い。
「みんな段々遠くなっちゃうのよね」

東京物語のように家族が分離する前の話。

単純化すると、笠智衆、東山千栄子の演じる夫妻にかなり寄り添った話だった東京物語に対して、その対象が独身の紀子になっている。家族や友人から結婚しなさいと言われ続けだ挙句、彼女が自分の本心に従って下した決断に対しても彼らは納得しない。紀子がいないところで「自分一人で大きくなったような気になって、、、」と言う東山千栄子の怖さは「歩いても歩いても」の樹木希林に通じるババア怖いよ描写だった。
このように自分が身内に押し付ける欲や願望が思い通りになるということは難しい。だからいつかは「別れ別れになるけどまた一緒になるさ」という希望を抱いて、「しかしまあ私たちはいい方だよ、欲を出したらきりがない」と小さな幸せを噛みしめることが大事なのかもしれない。
そんな家族が再開した結果が東京物語なのだとしたら少し悲しくなる、、、

東京物語では親子だった笠智衆と原節子がここでは兄妹。テッカテカ黒髪の笠智衆は最初本人か分からなかった。
コミカルで可愛らしいけど意思疎通のできないもの、分かりあうことができないとして描かれている子供達が最高に笑えた。
耳が聞こえない祖父の兄にバカと言い続けたり、おじいちゃんのこと「大好きだよ」と言いってお菓子を大量にもらって帰り際に「大嫌いだよ」と言うところとか爆笑してしまった。

淡島千景の美貌!
なつこ

なつこの感想・評価

4.0
一人暮らしのさみしさを小津映画で紛らわせたりしている..
TaiRa

TaiRaの感想・評価

5.0
この前後に撮られたやつの中では一番良い。前回父娘やってた笠智衆と原節子が今回兄妹なの凄いな。

冒頭の朝の家族を映す場面からして凄い計算してあってビビる。これが日本家屋の正しい撮り方かぁ…って、いつもの事だけど。動線の設計と動き出しのタイミング、フレーム内死角の使い方、全部美しい。アラサーの原節子が「行き遅れ」認定されて早く嫁行けって家族から言われる話。原節子の女性像は現代の価値観と地続きで、結婚する/しないを自分の意志で決めようとしてる。結婚して、子供産んで、主婦やるのが女の本分とされる時代に迷い込んだ現代女性にも見える(今も大して変わってない?)。同級生との女子会でも未婚組と既婚組に分かれて、ふざけながらだけど、ディスカッションみたいになったり。未婚の女友だちを淡島千景がやってて、彼女は「自立した女性」として出て来る。原節子は二つの価値観の間で揺らいでる人。縁談の話を持ちかけられた原節子の喜んでるんだか、悟られないように嫌がってるんだか分からない芝居は意図的なのかな。学生時代「ヘップバーンのブロマイドばかり集めてた」というのに対して上司の男が「変態(レズビアン)なのか?」って言ってて時代。彼女はもしかしたら同性愛者かもしれないしアセクシャルかもしれない。とにかく彼女の意思は尊重されない。兄貴の笠智衆も厳しく言うが別に悪い人じゃない。両親も優しい様で結構キツい。兄嫁の三宅邦子もはっきりしない。最終的な着地に、戦争で死んだ次男の存在が滲む。原節子のせめてもの抵抗なのか、唯一許容出来る選択としての「兄の代替物」なのか。中心にある家族の死とその周りを動き回る子供の無邪気さが良いコントラストを生む。笠智衆が部屋から出て行かない子供を追い払う為に立ち上がり、ずんずん歩み寄って行くと子供が部屋を出て行くので、そのまま動きを止めないでくるっと元の位置に座り直すムーブが最高。曾祖父と子供たちの場面とか好き。劇中一回だけ台所にカメラが入る瞬間(一人でムスッとお茶漬け食う原節子)にハッとする。縁談を持ち掛けられた直後、それまで止まっていたカメラがトラックアップで動き出し、そこから数シーンに渡って移動撮影が組み込まれいるとこも。「ずっとこのままって訳には行かない」家族に、変動が訪れる瞬間。あと砂丘でのクレーンも珍し過ぎて記憶に残る。
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