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「さゞなみ」に投稿された感想・評価

YOU

YOUの感想・評価

4.0
好きな雰囲気の映画

蓮舫を地味にしたような
女優さん(唯野未歩子)がいい。
少年のよう。真っ直ぐな脚、無口で孤独で
さっぱりしたたたずまい。
透明感があって、凛として、涼し気な表情が綺麗

さすがに、というかそのギャップのせいか
着替えで見えた下着姿や
体の線が見えるワンピースが
秘めた感じで色っぽい

静かな映画だ。
母役の松坂慶子はまだ痩せていて、
大仰な表情やしぐさを見せず、
沈黙の中に哀しみをにじませる。
自宅の濡れ縁でネギの束を持ったまま
ぼんやりしているところは印象深い

父と母は駆け落ちの恋だったが、
結局ブラジルで違う女と暮らし死んだ父親。
なんだか怪し気なダメっぽい男を
好きになる娘。
その男とどうなるのかわからないまま
ラストを迎える。
大丈夫なのだろうか、と心配してしまう。
駄目な男を好きになってしまう母娘なのだろうか。
幸せになってほしいなあ
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山形は東北の京都と言われるくらい
独特の文化があって、祇園みたいな所もあるらしい。
山形に娘、和歌山に母というのも新鮮な設定だ

温泉っていい。
まずは山形・米沢。秘湯。「奥津館」。
ひなびた宿だが温泉は出てこない。
自然が美しい。山奥感がいい。
ラスト近く、母娘で泊まる凌雲峡という
温泉がいい。景色が素晴らしいし、宿も情緒がある。

しかし「凌雲峡」は実在しない地みたい。
宿のロケは、名前から松之山温泉・凌雲閣かと
思ったが、欄干や廊下、部屋の造作が違う。
景色は合成のように見える。
結局不明なまま
さざなみというよりもそれはとても小さな波紋だ。そして、その波紋は水面で大きく広がり、やがて消えていく。そんな静かな出来事と主人公の心が表現されている。

夏井稲子(唯野未歩子)は温泉の水質検査技師として規則正しい生活を繰り返している。時折、耳が聴こえなくなって不安になることもあるのだが、映像の中で彼女は静かに食事をし、仕事をこなす。その描写を何度か繰り返し、時間をかける。特に壁に向かって黙々と採りつづけられる食事は寂しさや小さな不安というものを通り超えた、無の境地を見せられているようだ。そこで、彼女そのものを描き出そうとしている。それはあまりにも冗長ではないかと思えるほどの繰り返しが行われる。他にも彼女の生活の繰り返しが多用される。まさに揺れることのない水面を長時間見続け、すうっと風が吹いて水面が揺れるときの感動をもたらそうとしているのだ。

映像の中にある空気は唯野未歩子そのものが持つ空気と混ざり合っている。華奢で壊れそうな外見と芯をもっているようなまっすぐな目線が美しく、自然や日々の生活の静謐さと混ざり合っているのだ。
しかし、死んだものとなっていた父親からの手紙と玉水(豊川悦司)との出会いから、彼女のその小さな日常に小さな変化が起こる。玉水のことを意識するようになり、彼に会いに行くために、初めて口紅を買い、鏡の前で塗ってみるシーン。たったそれだけのことなのに、とても美しい映像なのだ。これまでの繰り返しのシーンが活きている。相変わらず彼女は言葉少なく、ボソボソと断片的に語る。しかし彼女の体から足りない言葉が溢れていて、すべてを観る者に伝えてくれる。

母親である澄江(松坂慶子)との絡みもその口数の少ないところで多くを語る。彼女は母親として、女として、一人の人間として稲子に向かい合う。その全身は女優の存在感など微塵も感じさせない凄さがある。松坂慶子は『死の棘』でもそうなのだが、役でその女優のオーラを消し去り、おばさん臭さをぐっと前に持ってくる演技ができる数少ない女優だ。存在感のある女優は山ほどいるが、存在感を変化させることができる女優はほとんどいない。

全体的に語られている内容よりも、その映像の中で表現されている心象が際立っている。