世界が食べられなくなる日のネタバレレビュー・内容・結末

世界が食べられなくなる日2012年製作の映画)

Tous cobayes?

上映日:2013年06月08日

製作国:

上映時間:118分

3.8

あらすじ

「世界が食べられなくなる日」に投稿されたネタバレ・内容・結末

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この映画で描かれるある実験は、なかなか衝撃的だ。
GM(遺伝子組み換え)作物の長期摂取に関する実験だ。

GM作物は、アメリカの多国籍企業であるモンサント社が世界中に拡大させている。色んなパターンがあるだろうが、基本的な仕組みはこうだ。例えば大豆。大豆の中にある遺伝子を組み込む。そうすると、ある除草剤(農薬)に対して耐性を持つ。つまり、その除草剤を撒いても枯れない。当然、その大豆以外の植物は枯れるから、大豆を植えているところにその除草剤を撒けば、雑草を抜き取る作業をせずに大豆の栽培・収穫ができる、というわけだ。モンサント社は、この特殊な遺伝子を持つ種子(特許取得済)と、その大豆が耐性を持つ除草剤をセットで販売する。

さて、ここまでの記述で、「ん?」と思った方もいるだろう。大豆が除草剤で枯れないなら、農家は制約なく除草剤を使うだろうし、その除草剤が大量に振りまかれた大豆を、我々は口にしているのではないか、と。

まさにその通りである。それが問題の一つだ。

さて、健康に問題があるんじゃないか、という疑問に対して、モンサント社はどんな回答をしているのか。

実験結果を示して、「安全だ」と言っている。しかし、である。

そもそもモンサント社は、その実験結果を隠していた。何かの裁判で提出が命じられ、そこに、実験でラットに健康被害があったことが示されていた。

しかもだ。モンサント社は、ラットを使った実験をたった三ヶ月しか行っていない。たった三ヶ月の実験結果を使って、世界中の政府が、GM作物の輸入を許可しているのだ。モンサント社は超巨大企業であり、アメリカ政府とも密接な繋がりがある(とは、この映画ではそこまで指摘されないが、別の映画でそれを知った)。GM作物に関しては、世界中の化学者が危惧しているが、しかし、様々な圧力がありGM作物を使った実験はなかなか行われない。

そんな中、クリージェンという団体が中心となり、カーン大学と共同で、世界初となるGM作物の長期摂取の実験を行うことにした。実験は極秘で行われ、政府やゲノム企業とは無関係の団体から、通常の実験規模を超える研究資金を集めた。GM作物の配分量や、除草剤のみの摂取など、ラット全体を20グループに分け、2年間に渡ってGM作物を与えるというものだ。準備に3年以上の時間を費やしたという。

その結果は衝撃的なものだ。数字はともかく、この映画で映し出される、超巨大な腫瘍をぶら下げたラットの映像には誰もが驚かされるだろう。人間に換算すると、体重60キロの人が10キロの主要をぶら下げているようなもの。そんなラットが、複数確認出来た。モンサント社の3ヶ月の実験ではわからない。悪影響はほとんど、3ヶ月以降に現れているからだ。驚くのは、農薬を与えずにGM作物だけを摂取させた場合も、健康被害が確認されたことだ。映画の中で実験を主導した科学者は、この結果を他の研究機関も追試して確認すべきだ、と訴える。

GM作物は原子力と共通点があると、同じ科学者は映画の最後に言う。「汚染が起きたら取り返しがつかない」「すでに地球全体が汚染されている」「食物連鎖を通じて食品に蓄積する」という3つだ。

もちろんそれもそうなのだけど、この映画で特に描かれているのは、「技術が人や環境を救う」という側面が強調される、という点だ。

原子力は、クリーンなエネルギーで、枯渇するだろう石油資源などと比べて無尽蔵で、しかも安全だ、と喧伝されてきた。しかし、それは嘘だった。GM作物も、この技術によって発展途上国に安全に効率よく食を届け、貧困を解消出来るのだ、と主張する人もいる。技術が人や環境を救う、というわけだ。

しかし、そんなわけがない。

GM作物というのは、前述した通り、農薬とセットだ。モンサント社は、「GM作物を使えば、農薬の使用量が減るからクリーンだ」と宣伝するが、それは嘘だと農家の人たちは語る。むしろ使用量は増えているのだと。そして、農薬による健康被害の現実が描かれていく。

意外だったのが、港湾労働者だ。GM大豆などを船から陸に積荷する港湾労働者に、甲状腺がんなどが増えているという。大豆を船から下ろす際は、船内の密閉空間にショベルカーをクレーンで下ろし、その中で作業する。大量の農薬が使用されているGM大豆の荷降ろしをする過程で農薬を吸い込んでいるのが原因だろう、と考えられている。

フランスの、GM作物刈り取り隊というグループについても描かれる。彼らは、GM作物の危険性を訴えるために、大勢でGM作物の畑に入ってそれらをなぎ倒していく。モンサント社が彼らを訴え、GM作物刈り取り隊の活動は国内で注目を集めることになる。結果的に、GM作物刈り取り隊が敗訴した。

重要なことは、GM作物の安全性について、まだ確認されていない、ということだ。その確認が阻まれてしまう要因がいくつも存在する。そして、危険であることを示す実験結果が出ているのだから、世界中で科学者が安全性を確認するための実験が出来る環境になければならない。しかし、それは難しい。映画の中で詳細に描かれることはないが、科学者もまた、様々に圧力を受けてしまうからだ。

この映画では、原子力についてもかなり描かれる。福島第一原発事故後に作られた映画で、福島への取材も行っている。日本での原発反対のデモや、フランスの原子力で起こった事故など、原子力の危険性についても改めて訴えている。

国や政府に任せていると、どんどん良くない方向に社会が進んでしまう。それは日々、多くの人が様々な形で実感していることだろう。だからこそ、考えなければならない。今国を動かしている人たちは、20年後30年後にはもうこの世にいないだろう。その時、僕らは、ドーンと負債を渡されることになる。もはや避けられない未来だとはいえ、その負担は出来るだけ減らしておきたい。今できることは、きっとあるんだろうな、と思う。自分に何か出来る瞬間が目の前に現れたら、躊躇なく飛び込めるように心の準備だけはしておきたい。