カラスの飼育の作品情報・感想・評価(ネタバレなし)

「カラスの飼育」に投稿された感想・評価

ミツバチのささやきと同等かそれ以上のアナ・トレントの存在感、彼女を含めた子供たちの所作、時たま垣間見えるベルイマン的不穏さ、これらの要素から決して悪くない映画だと同意はできる。

でもこの数年後から撮り始める、カルロス・サウラのライフワークとも言えるフラメンコ映画群のイメージが強いせいか、画面から熱が感じられないことに物足りなさを覚えてしまう。
No.603[アナ・トレントという怪物に撓垂れ掛かったサウラ、一本締め映画に関する私的論] 100点(オールタイムベスト)

初めて見たのが国立二次試験前日だったのだが、Jeanetteの”Porque te vas”の破壊力が凄すぎて試験期間中ずっと聴いていたという思い出がある。今でも聴くと嫌そうに学校に行くアナ・トレントの顔と共にあの時の感情が鮮明に思い出される。想い出記録。

後から考えてみて内容があやふやだったり、見ている途中では何とも思わなかったりするけどラストシーンで気に入る映画を”一本締め映画”と勝手に命名しているのだが、本作品は最たる例である。
フランコ政権の高官である父親が情事の最中に死亡し、残された三姉妹は叔母に引き取られるという話で、成長した次女と亡くなった母親をジェラルディン・チャップリンが演じることで系譜を重ね、少女時代の次女を怪物少女アナ・トレントが演じている。1973年に退陣したフランコが1975年に死亡、翌年の1月に公開されたこの映画は、フランコ後の世界をぎこちなく謳歌する次世代とどうしていいか分からない旧世代の対立を描いているような描いていないような話で、実は内容は無いようなもの。ただ、ラストで超嫌そうに学校に行く三姉妹が雑踏に消えるまでを追う際にかかるJeanetteの”Porque te vas=あなたが去るから”は非常にエモーショナルで、心を揺さぶる。一本締め映画は”終わり良ければ全て良し”の観点から評価が上がる傾向にあるのが分かっていただけただろう。

サウラは「ミツバチのささやき」以降学業に専念していたトレントを説得し、休み期間に撮り上げたらしい。トレントに心酔していたサウラの心が見え透く脚本はやはり当て書きなのだろう。彼女の存在感が凄いが、それ以上にトレント以外の存在感が最早空気レベルなのは、トレントの凄さ以上にサウラのトレント愛がチラつく。これ以降学業に戻ったトレントはアメナーバル「テシス 次に私が殺される」で復帰するのだが、可愛いぷっくりした少女時代をどこかへ置いてきたラテン系のお姉さんになっていた。

色々御託を並べたが、私は本作品が好きだ。映画に想い出が絡まると正当な評価を下せないのは知っているが、それでも好きなものは好きだから仕方がない。私のiPodでJeanetteのこの名曲はトップ10に入り続けている。
人間離れした雰囲気のアナトレントがとにかくいい。ほんま眼!!!!!って感じや。ただでさえ妄想が交差するからわかりづらいのにジェラルディンチャップリンの一人二役がますます混乱を招くから、そこだけはする意味あんのか?と理解不能であった。聖ロザリンド的なのを期待してたのに、内に秘めた暴力性だったのでやや期待はずれ。
ヤクルトホールでの試写会で観た時は『悲しい朝』というタイトルだった。
アナ・トレントがレコードに合わせて踊るシーンが本当にツボでツボでyoutubeで何回でも見ている
T

Tの感想・評価

4.0
アナ・トレントの顔の整い方が尋常ではない。死んだ両親、残された3姉妹。喧嘩する夫婦のおままごとのリアルさが、彼女らが置かれた状況を余すところなく把握していることを示す。いつ死んでもおかしくないような狂気を放つ、ベッドで苦しみ悶えるジェラルディン・チャップリンの演技がとんでもない。口ずさむ音楽の不穏さ、やり遂げた後の彼女の顔。素晴らしい。
アナ・トレントのまっすぐで、どこか達観したような目に震える。強権的なフランコ体制下にあったスペインにおいて可能な婉曲的体制批判。時間を行き来する構成そのものが、自由への渇望であり希望。シンボリックでありながら同時にリアリスティック。その絶妙なバランス感覚も見事。
Soichiro

Soichiroの感想・評価

3.5
子どもが大人に向ける純真無垢な残虐性。アナちゃんを怒らせると恐い!笑
大人にはない純粋でシンプルな狂気を垣間見た!
ち

ちの感想・評価

4.2
幼少期に覚えるふわふわとした寄る辺なさ、そこから来る不安を映像化する試み。現実と妄想、過去と現在と未来から語られる少女の精細だからこそ毒された純真。アナ・トレントが一番キュートな映画なんじゃないかな。この頃のスペイン映画はエリセもそうですけどすごい遠回しに体制批判をするのでそこが面白いですよね。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.2
単にアナ・トレントたんの可愛さ爆発さくらや無双の映画かと思ったら、まったくそんな事なく、あんなつぶらな瞳で「死んじゃえ死んじゃえ」言われたら、おじさんもう…飴玉買ってあげちゃう…。少女の悪意とも呼べぬ無垢なる精神、幼心に刻まれた「死」なる最終手段、当然背後にはフランコ独裁政権の影。『ミツバチのささやき』と比べたら、なんて無粋なことは言わぬ、これはこれで素晴らしい作品。そんな幸せな幼少期を経験した覚えもないけど、こんな死に溢れた幼少期じゃなくてよかったとすら思える。とりあえず子供の前で「死にたい」とか「死ね!」とか言わない方がいいみたいですよ、全国のお父様・お母さま。
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