Jun潤

マイ・エレメントのJun潤のレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
3.9
2023.08.05

ディズニー・ピクサー最新作。
今回の舞台は元素の世界。
火と水のような一見共存できそうにない存在同士がどう関わり合っていくのかという、『ズートピア』っぽさもありつつ最近のポリコレにも適しているようには見えます。
あまり無理矢理な展開ではないことを祈りつつ、今回は吹替版にて鑑賞です。
同時上映の『カールじいさんのデート』についてもこちらでレビュー。

舞台はエレメント・シティ。
この街には水・(土というより)木・風、そして火の四つの元素達が暮らしていた。
街の一画にあるファイアタウンでは、火のエレメント夫婦が雑貨店を経営している。
一人娘のエンバーは父の店を継ぐべく日々お店の営業を手伝っているが、癇癪が収まらず、小火を起こしては受け継ぐのを先送りにされていた。
そんなある日、父から店のセールを任され、張り切るエンバーだったが、癇癪が収まらず、店の地下で爆発させる。
結果水道管が破裂してしまい、水が通っていないはずの管の中から水のエレメントの青年・ウェイドが出てくる。
水道管の不備を指摘されてしまい、店の営業を停止されるのを阻止するためにウェイドを追う中でエンバーは、初めてタウンの外に出て、エレメント達が共存するシティを初めて目にする。
水が通らないはずのファイアタウンにまで水が来た原因を突き止め、事態を収束させるべく共に動き出すエンバーとウェイド。
その中で、決して交わることのなかった火と水のエレメントが心を通わせる。

ふむふむ、なるほどなるほど…。
まずはじめに思ったことは、エレメントである必要なくない?でした。
単に火と水の相容れない関係さえあれば成立するストーリーで、風と木の描写がほぼ無くストーリーや世界観的にも存在感が発揮しきれていなかった。
土っていうか木じゃん。
もうあらすじ含めレビュー内では土=木でお送りします。

とまぁ色々と出てはしまいましたが、これまでのピクサー作品を振り返ってみても舞台となる世界の存在全てに言及したような作品はほぼ無く、どちらかというと作中でフィーチャーされた存在以外に関しては想像で膨らませられる余地が多いことも特徴の一つだったと思います。
一回劇場鑑賞した限りでも、水は火を消すけれど、火は木を燃やして、木は風を受け止め受け流し、風は水を飛ばすなどの弱点や、水は木が生きるために、木は火が燃えるために、燃えた火が風を起こし、風は水に形を与える利害関係などの相性表が浮かんできたので、これはぜひともシリーズ化して他のエレメント達や違うエレメント同士の関係性も見てみたいところですね。

大枠のストーリーについても、違う世界の存在が外の世界への可能性を広げてくれるという、どちらかというとディズニーアニメーションに近いような感じでした。
これをピクサーが描ける世界観の広がりと取るか、ピクサーのディズニー化の流れが良い方へ向くか悪い方へ向くかの岐路に立たされたと取るか、今後も目が離せませんね。
また、要所要所で印象深い描写をタイミングバッチリに回収していく展開はとても良かったです。

今作が持つ、例年のピクサー作品とはまた違う味を出した魅力の一つは作画だったと思います。
それも3DCGの出来や美しい背景に留まらず、特に火のエレメントの、燃える炎の中に描かれた表情や線が絵本チックになっていて、リアルな火に近付きつつも、独特のキャラクターらしさをちゃんと出している素晴らしいものでした。

今回は吹替版にて鑑賞でしたが、まず玉森裕太声優上手すぎんか??
キャストは知っていましたがさすがに上手すぎてびっくりしましたね。
あとは英語での表現がどのようになっているのか、知識不足で恐れ入りますが、日本ならではの水の慣用句の使い方が絶妙でしたね。
「水をさす」、「水に流す」、他にももっとたくさんあった気がしますが、ストーリーの咀嚼を忘れて感嘆してしまいました。

同時上映の『カールじいさんのデート』については、『カールじいさんの空飛ぶ家』自体最後に見たのが何年も前で、だいぶ時間も空いたしスピンオフアニメ『ダグの日常』も未視聴でしたが、カールじいさんとダグの生活の様子やデートに向かうまでに繰り広げられる会話と、いつ見てもいつまでも見ていられるような安心感と微笑ましさに溢れていました。
ダグの言っていた人間も犬みたいになったらどうかというような言葉も、一瞬「なるほど……?」と思わせてくるのがまたズルいですね。
Jun潤

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