【第81回ヴェネツィア映画祭　審査員大賞】
イタリアのマウラ・デルペロ監督作品。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され審査員大賞を受賞、アカデミー国際長編映画賞イタリア代表にも選ばれショートリストに残った。

大傑作。セリフを最小限に抑え、見事な撮影とロケーションに彩られている。女性の苦難を描く作品は数あれど、ここまで美しいのはスゴい。

かなり人を選ぶ作品だとは思う。生活を淡々と描いていくだけではあるので退屈と感じるのも分かる。でもこのテンションに同調できればぐいぐい引き込まれる。

純然たるアート映画で、デルペロ監督の美的センスが冴え渡る。静謐で美しく、でも明確なテーマもある作品。

これは配給つきづらいだろうなとは思うが、刺さる人にはとことん刺さるだろう。美しさという点では今年一かもしれない。

• #第81回ヴェネツィア国際映画祭
• #イタリア映画祭2025

イタリア映画祭2025から、昨年のヴェネチア国際映画祭で審査員大賞を受賞した家族ドラマを鑑賞です。
第二次世界大戦を舞台にしたある村の物語を大家族の視点で描きます。
戦争が起きているとは思えないほど、あるいはその対比として、非常に静かな映画で、台詞も少なく、あっても囁くような話し方です。
まるでここにいることに気づかれてはいけないように。
突然大きな音楽が流れるシーンは決定的な何かが起こる時で、抑制された表現が見事な映画ですね。

第2次世界大戦下に脱走兵を匿った子だくさんの家族に起こった出来事を、長女を中心に描く。
監督は、これが長編2作目となるマウラ・デルペーロ。
ヴェネチア国際映画祭審査員大賞受賞。
原題:Vermiglio
(2024、120分、PG12)

第2次世界大戦末期の1944年、北イタリアのアルプス高地にある山間の村ヴェルミリオ。
シシリー島出身の脱走兵ピエトロ(トンマーゾ・ラーニョ)が負傷した村の若者を背負ってやって来る。
子だくさんの教師チェーザレ(トンマーゾ・ラーニョ)は彼を家に招き入れ、匿うことにする。
やがて、ピエトロと一家の長女ルチア(マルティナ・スクリンツィ)は恋仲になり、結婚。
間もなく終戦を迎え、ピエトロは身重となったルチアを残して一時帰郷の途に就くが、それっきり連絡が途絶える…。

～登場人物～
1️⃣北イタリア、トレンティーノヴェルミリオ村の人たち
①グラッツィアデイ家
・〈父〉チェーザレ(トンマーゾ・ラーニョ):村の子どもたちの教師。大人用の教室も開催。煙草と女性の裸体本を隠し持っている。長男に辛く当たる。
・〈母〉アデーレ(ロベルタ・ロヴェッリ):10回出産を経験するが、夫から花束一つもらったことがない。
・〈長女〉ルチア(マルティナ・スクリンツィ〉:主人公。
・〈長男〉ディノ:本当は優しい子だが、父親の望みには叶わない。
・〈二女〉アダ:ヴィルジニアに言われて、父親の煙草を盗む。進学のことで、妹に嫉妬する。
・〈三女〉フラヴィア:成績優秀。
・〈？男〉ピエトリン

②その他
・〈ピエトロに背負われてきた兵士〉アンティリオ
・〈その母〉:チェーザレの姉？
・〈男っぽい少女〉ヴィルジニア(カルロッタ・ガンバ):父は出征。戦後、生活のため家族でチリへ行くことが決まる。
・〈アントニア〉

2️⃣シチリアの人
・〈脱走兵〉ピエトロ・リーゾ(ジュゼッペ・デ・ドメニコ)
・〈ガラーティ教区の司祭〉アンナ・ベンジーニとサルヴォ)

「戦争で男はみんなバカになった。」

「お子さんは？
(..)
幸運だわ。」

①終盤、ピエトロからの連絡が途絶えた理由が判明してからが本作の見どころ。
②戦争や災害が起これば、弱者(女性や子どもや障がい者など)がいちばん被害を被ると言われるが、戦争によって本作のヒロインと似たような体験をした女性はたくさんいたのではないだろうか？
ヒロインの名前が由来する「サンタ・ルチア（Santa Lucia）＝聖ルチア」は、キリスト教の聖女の名前。目の守護聖人で、「ルチア」はラテン語の「光」を意味します。
映画のルチアは予期せぬ現実に茫然自失となり生きる力を失いかけますが、それでも生まれてきた命の大切さに気づき、未来に光を見いだそうと一歩を踏み出します。