公私共にパートナーだった妻エヴァを失った後のヤン・シュヴァンクマイエルによる夢と現実が入り混じるコメディ。
夢の中で出会った女性に心奪われた中年男がその夢の続きを見続けることに執着して実生活を見失う物語です。
切り絵による表現は予算が無かったからと冒頭にヤン自身が言い訳しますが、むしろそのアナログ手法が短編時代の作品を思い起こさせてくれて良かったです。
精神分析医の場面が観客に向けた解説の役割も果たしているのでヤンの作品としてはかつてないほど分かりやすく、そこがかえって物足りない気もしてしまいましたが、入門にうってつけだとは思いました。
終盤で視点が妻に移り始めてからスリリングな雰囲気が漂い、夢が単に欲望の象徴ではないと明らかになる結末はストーリーに奥行きが生まれて素晴らしかったと思います。

[夢で会いましょう]

以前見たものの覚書き。
ヤンシュヴァンクマイエルが本当に好きでして、コンプリートボックスを買って、書籍を買ってとほとんど全てを買い集めるほど。
「なぜ魅力的なのか」はいずれどこかでじっくりと。

冴えない現実、夢で見た美しい女性。
男は妻の目をぬすんではひたすらに夢へと向かう。
シュヴァンクマイエルの中でも本当にわかりやすくシンプルな構成ですが、写真の切り貼りによって構成されたアニメーションにより、現実と非現実(夢)がフラットに溶け込んでいく。
男が最後に見るものは、、、、、

ユングやフロイトなどに興味を持ってる方は特に楽しめるのではないでしょうか。
ホドロフスキーもそうですが、シュヴァンクマイエルも同じく、メイキングや書籍を読むとわかるのですが、一見理解できないシュールな部分にも「作家なりのルール」がある。
そこを自分で推測するというのも楽しいのがシュヴァンクマイエル作品の魅力でありますね。

以前の一般上映時にも観ているので2回目にはなる筈だが前回は108分中106分くらい寝たので実質初見である。今回もいい感じに夢と現を行き来しつつの鑑賞となったが、おそらく1時間分以上は起きていられたのでちゃんとストーリーを理解する事が出来て良かった。愛妻エヴァを亡くした後のヤン爺はメンタルが崩壊して精神病院に入ってた時期もあったらしいので、せめて夢の中でくらい愛する人に再会したいとの思いも強く反映されている様に思う、まぁオカンなのだがヤン爺にとっての全ての「女性」を引き受けていてくれたのがエヴァなのだろうよ（とか言うと界隈にボコられそうだが）。予算が無いから切り絵にしましたと説明が入るが、ぎこちなさと気持ち悪さがいい塩梅、私にとってのヤン爺最終作はやはり『蟲』ではなくてこっちでいいかなと思った。額縁越しにしばき合いを続けるフロイトとユング、高尚なギャグだ。