[夢で会いましょう]

以前見たものの覚書き。
ヤンシュヴァンクマイエルが本当に好きでして、コンプリートボックスを買って、書籍を買ってとほとんど全てを買い集めるほど。
「なぜ魅力的なのか」はいずれどこかでじっくりと。

冴えない現実、夢で見た美しい女性。
男は妻の目をぬすんではひたすらに夢へと向かう。
シュヴァンクマイエルの中でも本当にわかりやすくシンプルな構成ですが、写真の切り貼りによって構成されたアニメーションにより、現実と非現実(夢)がフラットに溶け込んでいく。
男が最後に見るものは、、、、、

ユングやフロイトなどに興味を持ってる方は特に楽しめるのではないでしょうか。
ホドロフスキーもそうですが、シュヴァンクマイエルも同じく、メイキングや書籍を読むとわかるのですが、一見理解できないシュールな部分にも「作家なりのルール」がある。
そこを自分で推測するというのも楽しいのがシュヴァンクマイエル作品の魅力でありますね。

初めて観た当時はあまり面白いと感じなかった、切り絵表現も既視感がありどうなの？と思っていた、しかし改めて観ると...大傑作でした、自分の環境や年齢も大いに関係ありそう、タイミング大事、

精神分析コメディと銘打ってあるが、多分その当時の監督本人の状態を本人が精神分析したのだと思う、そういったお話、

シュヴァンクマイエル特有の狂気や恐怖がかなり抑えめ、地下室も螺旋階段も目玉ギョロリも無い、舌ベロベロはちょっとだけあった、ただドアップ演出はかなり多め、

原作が無いのも珍しい、が、オリジナルストーリーのシュヴァンクマイエル長編にハズレなし、とてもよく出来たストーリー、

基本的にメタファー多め、とは言え分かり易い部分も多く、重要なものは劇中で解明されるものもある、分からないものはとことんに分からない、

切り絵のアニメはシュヴァンクマイエルっぽさは少なく、言ってみればテリーギリアムっぽい、手法だけで無く表現方法も世界観も、決して悪い訳では無いのだがこの部分がいつものイメージとの違いに感じる、

シュヴァンクマイエルのコマ撮りアニメはコマが大胆に省かれたりする独特のあえての“荒さ”が特徴に感じる、その点でこの映画の切り絵アニメはとてもなめらかに動く、なんか本来の几帳面であろう性格が滲み出ていた、

シュヴァンクマイエルの自伝の様であり集大成の様であり...一生のうちにこの様な映画を撮る事は映画監督としての“誉れ”の様に感じた、

昔、映画館に観に行って
とても自分好みの世界観で
面白かった作品

また観たいな〜…と
ずっと思っていたのですが
配信にもレンタルにもなし

ソフトも廃盤で
中古がプレミア価格になっており
なかなか手が出なかったのですが
ヤフオクで落札できたので
12年ぶりくらいに観ました

夢の中で人違いで声をかけられた
女性と恋仲になり
また夢の中で会えるように
夢をコントロールしようとする
既婚中年男性の話…

夢の中で再会する度に
事態が進展していき
謎の女性の正体や主人公の過去が
明らかになっていく…

みたいなストーリーでしょうか

映像表現が
実写の写真を切り絵にして
ストップモーションアニメにした映像と
実写の映像が混ざっていて

なんか昔の「みんなのうた」とか
「ポンキッキ」の歌コーナーの
不思議で不気味な
トラウマになるような絵…みたいな
世界が全編に渡っておりまして

どこまで夢でどこまで現実なのか
わからなくなってくるのが
作品内容的にも合っていますしね

わけがわからなくて難しそうな
ストーリーのようですが
けっこうコメディタッチで
気軽に見やすくもありますし

貼られた伏線に、ちゃんと
なるほど！となる落ちも付きますし

アート作品として優れていながら
娯楽作としても楽しめる
という点でも稀有な作品

改めて傑作だと思いました！