Ryan

サタンタンゴのRyanのレビュー・感想・評価

サタンタンゴ(1994年製作の映画)
3.7
無秩序と混沌の駄作


ストーリー
ハンガリーのある田舎町。シュミットはクラーネルと組んで村人たちの貯金を持ち逃げする計画を企てていた。その話をシュミットが彼の女房に話しているところを盗み聞きしていたフタキは、自分もその話に乗ることを思いつくが、村の外では死んだはずの男が帰ってきたという噂が聞こえ始める。


監督 タル・ベーラ


4年の歳月をかけて制作された、7時間18分の作品。やっと鑑賞。
何度観るのをやめようかと心が折れかかったことか。

ハッキリ言って駄作。
己の人生の時間を見つめ直すような時間。
映画であり映画ではない
別の世界のどこか別の自分を見ているような、身近なパラレルワールド。

どうしても考えてしまうのは尺の長さ。
7時間もの壮大な映画!とも言えるが、逆を言えば「7時間もあるのに平均評価4なのか」とガッカリした。
スコセッシの倍長いのだから、倍面白くなくてはいけないのに尺の長さと面白さが比例していない。平均評価5は欲しいところ。


今作はアート寄りの作品だから無理を言うなと言われるかもしれないが、アート作品ならなんでも許されるものではないし、アートだからこそ他に伝え方があるはず。
そりゃ、ルーブル美術館で上映されたとか言われれば聞こえはいいかもしれないが、誰も美術館で「7時間の映画を観る」人間なんていない。
掛け流しの様な状態でちょうど良いと言っているようにすら聞こえる。都合の良い解釈ではあるが。
それに評論家も「7時間の映画は傑作だった!」なんて言ってみたいだけなのではないか?と思い始めている。

今作は最初から伝えたいことや伏線、メッセージ性など多々あったと思うが、観賞後には忘れた。長い。その終わり方を見るために7時間?と疑問。


最初のカットは牛を撮るだけに10分以上。
同じ絵がひたすら続くが、よほどのアート系の映画好きか、時間に余裕のある大人でないと鑑賞するのは無理だろう。

しかし、良いところも沢山ある。
長すぎるが故、1カット15分以上あるシーンがたくさんあるのだが、静かで面白くないのに絵力だけで脳裏に強烈に焼き付いている。それは尺が長いからなのか印象深いからなのかはこの際どうだっていい。
"伝説"と呼ばれるだけの映画監督であるのは間違いない。

猫と少女のシーンは長回しでずっと2人を見ているだけだが、どんな残酷な描写よりリアルで残酷。ただひたすら"死"を待つかの様なあのシーンは強烈すぎて忘れたくとも忘れられない。
村のおじさんやおばさんの歩いている所や酒を飲み踊るだけを延々と見せられるのだが、そこにあるリアル感は現実とは別の異質な空気感であり、これはそんな異質を受け止めて映画として観ないと最後まで鑑賞するのは辛いかもしれない。


結局、この物語は何を伝えたかったのだろう?アート寄りではない私には難しくてわからない。
確かなメッセージ性が隠れてはいるが、鑑賞後にほぼ全ての人が「観終わった!」と思わせた時点で"それ"がメッセージ性に変換されているのではないだろうか?メッセージ性を上回る"長さ"は作品として失敗じゃないのだろうか?
この辺を"伝説"の監督、タルベーラはどう考えているのだろうか?
タルベーラ監督には「インターステラー」を観ることをオススメしたい。

最後に、これが"伝説"の作品?ふざけるな!と言いたい。
Ryan

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