ロックス・イン・マイ・ポケッツの作品情報・感想・評価

ロックス・イン・マイ・ポケッツ2014年製作の映画)

ROCKS IN MY POCKETS

製作国:

上映時間:88分

3.8

「ロックス・イン・マイ・ポケッツ」に投稿された感想・評価

☆☆☆

2015年6月4日 国立近代美術館フィルムセンター大ホール
noriko

norikoの感想・評価

5.0
ラトビアの映画など初めて観ました、それもアニメーション。
上映開始前に、女流監督自らポストカードを観客に配ってくれたのですが、事前情報なしに観たため、監督の奥さん?などどすっ呆けた感想を持っていました。

アニメーション自体は非常にシュールです。
監督の尊敬するアニメーターが、ヤン・シュヴァンクマイエルであることから分かるように、かなり独特な映像です。
可愛いかと聞かれると、おどろおどろしく呪われそうと答えます。
なんといいますか、無意識に人を不安にさせる作風です。
それでシュールな中身ならまだ安心してみていられました。

しかし本作のテーマは、”depression”(憂鬱)です。
しかも半自伝的な。

監督の一族は代々うつ病をはじめとする精神疾患に羅漢している人が多いそうで、自殺者も多く出しています。
監督自身も自殺未遂の経験者で、今もうつ病と戦っているそうです。

本作では、メインの5人の女性の自殺の過程が描かれています。
物語は監督の希死観念の大本をたどるところから始まります。
そして彼女の祖母の話を。
うら若き乙女だった祖母は、やり手の実業家と略奪婚。
結婚後は事業に失敗し、田舎暮らしをさせられます。
祖母の美貌が男を惑わすと狂信的になり、半ば森に軟禁され、二人の間の子供8人を育てるだけになります。

当時ソ連がラトビアを占領します。
一方ナチスも対ソ連の要塞としてリトビアを攻めてきます。
ソ連が軍力をもってナチスを撃退するも、今度は対ソ連のレジスタンスが結成され、祖父一族は歴史に翻弄されます。
そして祖父の死後、祖母が死にます。
その不可解な死に納得できない主人公(=監督)は、彼らの8人の子供(=監督の母や叔父・叔母)に、死の謎を聞くもけんもほろろに対応されます。

その後も主人公は祖母の死の謎を追いながら、いとこたちの自殺の過程を淡々と描いていきます。
首吊り自殺が多いですね。
ふらふらふら~と輪に首をいれ、窓から大ジャンプなど。

このアニメーションは一風変わっていて、登場人物らの会話が一切ないのです。
すべてナレーションのみ。
しかも膨大な。
字幕を追うので四苦八苦。
その大変さは監督自身も言っていましたが、たった88分だから我慢してとのことです(笑)
我慢しました。

あの作風で、ひたすら暗く救いようのない中身なのですから、かなり参りました。
しかも怒涛のナレーションで。
ついあの世に渡るために背中を押してもらっている錯覚を起こしました。
いや、危ないですよ、これは。
これを観て落ち込んで首を吊っても不思議ではないと思います。

唯一最後救いがありましたが、その救いを救いポイントに思えなければ、三途の川までノンストップでしょうね。

主人公がさて死ぬかという状況でふと思いついたのです。
隣に住む女性が、パーティーの準備にてんてこ舞いしていることを。
そこで主人公が訪問し、パーティーの準備を手伝います。
どうやらその女性のだんな様が40歳になったよう。
主人公は、”40”とかたどられたボードをチョキチョキはさみで切ります。
「明日にはこのボードはゴミとなるでしょう。でもこの”40”のボードが今人と自分を結び付けている」
この一言で、滝のように目から涙があふれました。

確かにゴミ屑でしょう。
けれどそれを介し、人と繋がれるのです。
人と繋がることがことのほか難しい現実で、心が鷲掴みにされました。
殻に篭っているだけでは何にもならないです。
些細なことでも一歩踏み出すことで、人とのつながりを感じられ、最悪の事態を自ら回避できるのだと思います。
苦しくって閉じこもるよりも、苦しいからこそ人と共にいることの重要性を認識させられました。
まさかのシュールアニメーションで。

ここまで大号泣した映画は久々です。
その昔が思い出せないほど。
ただ・・・ね、明かりがついて泣いていたのは私一人という切ないシチュエーションには参りました。
中途退場者が何人もいましたし、その後監督とのQ&Aがあるにも関わらず帰っちゃう人もいましたし。
本当に感性は様々です。
私は、監督に泣きながら抱きつきたくなりましたね。
今日たまたま国際アニメフェスティバルで見る機会があったんだけど、なんだか一人一人の人生を深く考えるような映画だった。
アニメだからこそ淡々と人の生死や葛藤、悲しみをユーモアも加えつつ表せられたんだと思う。
こういう時代がラトビアという国であって、そこでもただ純粋に生きた作者のおばあちゃんは綺麗だと思った。最後のシーンもすごくよかった。
965

965の感想・評価

3.5
アニメーションで苦しみや死がライトに描かれてるのが逆にリアリティがあってなんだか誰もが共感できたり発見できたりしそうで。
アリ

アリの感想・評価

3.9
これは好きなやつ!
ラトビアの言葉(EUフィルムデーズのチラシやIMDbでは英語となってますけど英語じゃないですよね)でよどみなくまくし立てるように語られる、精神疾患の家系に生まれた監督自身を含む女性たちの物語。
時代と女であることと、妄想や希死念慮とともに生きたり死んだりするユーモアも苦痛も同じ重さで描かれてるみたいな。
この乾いた感じはアニメでしか出来ない味わいだろうなあ。

誰かの苦しみを「わかる」なんて思いはしないけど、でも私のポケットにも時々は石が入っていると思うし、今日もまたそれを投げ捨てて映画館に行ったり出来ているのは、不思議なことなのかも知れない。