ユメノ銀河の作品情報・感想・評価

「ユメノ銀河」に投稿された感想・評価

夢野久作原作小説『少女地獄』の一編、『殺人リレー』を映画化。
婚約者を殺す、連続殺人犯かもしれない男、新高竜夫(浅野忠信)を好きになってしまった女、友成トミ子(小嶺麗奈)の恋物語をサスペンスの味わいで描いている。だが、緊張感はどちらかといえば抑え気味で、二人のちょっとミステリアスで非日常的な空気を映像に活かすことを大事したような演出でかなり落ち着いた作品になっている。
モノクロームの映像がとても美しく、小嶺麗奈と浅野忠信のあまり動かない人形のような表情が幻想的オーラの広がりを増している。その静謐ともいえる薄暗がりの中でトミ子は強くで情熱的な恋心を秘めている。その蠢きがどこか小さな地獄のようなのだ。が、自分も殺されるかもしれないのに、何を考えているかわからないような男、新高から逃れられない地獄の中でトミ子は苦しんでいるのではなく、花ひらくような輝きを見せる。その地獄に咲いた一輪の花のような驚きがある。小嶺麗奈は決して演技が上手いわけではないし、カラー映像作品の中ではそれほど目を引くようなイメージはない。しかし本作品ではモノクロ映像の中で、少したどたどしい台詞を言わせることで、レトロさとかわいらしさとわずかばかりの妖艶さが混ざり合って、幻想的な存在感を持つようになる。

「わたしが降りたら、わたしのこと、轢くんでしょ」というようなトミ子の台詞がある。ここには恐怖よりも、彼女の命を投げ出す反作用として、何よりも生命を感じることができる歓喜が見て取れる。それはとても彼女のカタルシスであり、エクスタシーのようで淫猥な響きさえも含まれているようだ。
そして、人を見つめることでひと時を費やせる幸福があり、そこには愛情と憎悪がない交ぜになっている。トミ子と新高が口を開く度に生み出される地獄の中でトミ子は静かに拡がる艶やかなモノクロ銀河を見ていたのかもしれない。
原作の夢野久作「少女地獄」をキレイにまとめた映画。影のある人に惹かれる心理。
LinusRufus

LinusRufusの感想・評価

5.0
友人と"浅野忠信祭り"を開催していた頃に観た内の1本。

懐かしいような、怖いもの見たさのような、(●●ズニー作品じゃなくて、怖さもある本来の)おとぎ話の中に入り込んだような作品。
kei

keiの感想・評価

5.0
地味な作品かもしれないけど素晴らしい作品だと思います。静かに物語が進んでいくんだけどただならぬ雰囲気があるんだよね。観ていて心地よい。原作も面白いです!
モノクロ画面の美しさ。
昭和初期の街並みを再現したというよりも、昭和初期の映画の画面の世界を再現したというような映像世界。
その中で小嶺麗奈の演技は本当に危うくてよろめいていて美しい。
惑星を回る衛星のように、恋しい男の周りをグルグル回り続ける。
不信から激しく恋に落ち切って惚れ込んで芽生える疑惑に翻弄されまくる。
だって、毎日生きててつまんないんだもん。というなんとも心憎さ。
対する浅野忠信の演技は沈黙の中では冴えるが、やはり、話すと…一瞬で現代劇になってしまうのが、残念。
黙っていれば本当にいい男。
石井聰亙監督の低迷期、なんて言われてたけど、僕は断然好きだ。
粗が見えそうな危ういところをできるだけ小さなお話にして、お芝居もできるだけ小さくして、極力極力無駄なものを省くだけ省いて、セリフに頼らず丹念に映し出していると思う。
何もわからない。
ただ愛しいから信じたいという、幻想の中でグルグル回る、という浮遊感は心地よい。
先日京橋フィルムセンターの石井岳龍自選シリーズ展で見てきました。

汽車、豪雨、白黒の世界をスクリーンで見て堪能しました。
浅野忠信の姿、小嶺麗奈とほかの女優たちの麗しさ、見てほしい…
息をのみました。

(映画生誕百年とかのオマージュもあるのかなぁなんて。浅はか付け焼刃で思ったのですが)
MM

MMの感想・評価

3.9
石井監督の色が丁度親しみやすいくらいの出方で、現実でありながら切り離された世界を見ているようでした。
主演のふたり、1万点…
原作の「少女地獄」は昔読んでいたのだが、友達に教えてもらうまであの話がこの映画の素だとは気づかなかった
監督の演出の行間とモノクロ映像が相俟って、不思議な世界に入れてもらえた気がしました
小嶺麗奈さんも浅野忠信さんもとても良かったです
一

一の感想・評価

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あんまりゆったりじっくりしているのですっごいじれったいけどヤング浅野忠信が素敵すぎるので平気。モノクロ16ミリ撮影も素晴らしくて良いムード。
音と映像に拘る監督と、夢野久作のドロドロした世界は
相性が良いとは思えない。それは室生犀星原作の「密のあわれ」でも感じたことで、文学ものは石井監督には似合わない。