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MOTHERLAND
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『MOTHERLAND』に投稿された感想・評価

reb
3.2
1992年、ソ連崩壊後のロシアから独立を果たして間もないリトアニア。
両親の離婚をきっかけに、初めて母の故郷リトアニアにアメリカからやって来た12歳の少年コヴァスは‥。

リトアニアは1940年にソ連から侵攻され、翌年にはナチスドイツの占領下に置かれ、第二次世界大戦末期の1944年には再びソ連に占領されるという過去を持つ。

母ヴィクトリアは幼い頃、ソ連占領下で両親を亡くし、家と土地を失ってアメリカへと逃れた過去を持つ。

ヴィクトリアは、20年ぶりに故郷へと帰ってきて、昔の友人ロマスの助けを借りて土地や家を取り戻し、新たな生活を始めようとするが、家にはロシア人一家が住みついていて、彼女の親戚を巻き込んだ泥沼の争いとなってしまう。

一方内気なコヴァスは、アメリカからいっぱい持ってきたガムをばら撒いて友達作りをするが、うまくいかない。
皆のガムへの食いつきは良かったけど。
おまけにまだまだ美しい母の、女としての一面を見てしまい動揺するコヴァス。
こっそりとアメリカの父親に電話するのが切ない。

コヴァスを演じたのは、アメリカ生まれでありながら、家族のルーツであるリトアニアを身近に感じて育ったというマータス•メトレフスキ。少年と少女の中間のような佇まいは危うく、アメリカから来たという優越意識からの邪悪さも持ちながら、揺れる感情を少ないセリフの中でよく表していたと思う。

美しい国でありながら侵略され続けた悲しい過去を持つリトアニア。
そして傷つけられた悲しい過去を持つ美しい母。
そんな母をこの国で知ることで、少年はまたひとつ大人の階段を登っていく。

「子どもの頃、両親の故郷は神秘的な土地だと聞かされて育った」と語るトーマス•ヴェングリス監督は、ワシントンD.C.でリトアニア移民の息子として育ち、本作が長編デビュー作。
監督が初めてリトアニアを訪れた時、複雑な問題を抱えた小さな国の、荒廃した建物や見知らぬ人の怒りに戸惑ったという。
それはそのままコヴァスの不安や戸惑いと重なる。
3.7
【リトアニア、失われた土地と渇望】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=vLYdM4rbKCM&t=66s

2026年7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてリトアニア映画『MOTHERLAND』が公開される。本作はテレンス・マリックやケリー・ライカートの編集助手を務めたトーマス・ヴェングリスの長編デビュー作

配給会社の太秦さんのご厚意で一足早く観させていただいたのでレビューする。

本作はリトアニアにおける侵略の歴史をミクロなレベル、そして歴史が薄ぼんやりと周囲にある子どもの視点から描かれた作品である。リトアニアは第二次世界大戦中に、ソ連やナチス・ドイツの侵攻を受け、戦後はソ連に編入された。1991年1月にリトアニア独立を目指す国民とソ連との間で衝突が生じる血の日曜日事件を経て9月に独立。そして12月にソ連は崩壊した。映画は翌年の1992年を舞台にしている。アメリカから親子がリトアニアへやってくる。母ヴィクトリアはソ連占領下のリトアニアで土地を奪われた。ソ連から解放されたのをきっかけに土地を取り戻そうとするのだが、その地には既にロシア人一家がおり揉めている。

息子のコヴァスは、リトアニアはもちろん母親の辿ってきた轍を明確に知らない。彼の瞳に映る世界はバカンス映画のように柔らかい緑と青に包まれており、自然が織りなす空気感はチルである。しかし、そんな彼の眼差しの遠くでは大人たちが揉めている。母親には翳りがあり、油断すると暴力の片鱗を目撃する。だが、大人の世界、巨大な歴史に立ち入ることのできないもどかしさがある。映画は、アンドリュー・ワイエスの絵画のような空間の距離感。距離を持たせた自己と世界の関係性を通じて独立しても失われたものは戻ってこない感覚、歴史を変えることの困難さを詩的に描いたといえよう。

ちなみに、トーマス・ヴェングリス監督は2023年に長編2作目の『Five and a Half Love Stories in an Apartment in Vilnius, Lithuania』を発表している。こちらはアイルランド人女性、イスラエル人夫婦、ハンガリー人男性の恋愛を描いているのだが、どうやらヨーロッパにおける国家間の政治問題を個人レベルに落とし込んで描く小説っぽいアプローチに関心あるように思える。

日本公開は2026年7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて。
Juzo
4.7
開かれた国境の先で、母は理想の故郷を追い、息子は異郷の孤独を知る。ソ連崩壊直後のバルト三国を舞台に、奪われた過去にしがみつく人間の脆さを静かに見つめた秀作。
これほどまでに淡々と、登場人物たちの心の輪郭が変わっていくプロセスを捉えた映画も珍しい。トーマス・ヴェングリス監督が、自身のルーツであるリトアニアの激動の時代背景を借りながら、一組の母子の精神的な放浪を描き出したデビュー作。
20年ぶりに亡命先のアメリカから戻った母親が、先祖の土地を取り戻そうと執着する姿が切ない。彼女の目に映る「美しい祖国」というノスタルジーが、近代化の混乱に喘ぐ現地の生々しい利害関係によって、徐々に腐食していく展開の重ね方が非常にリアル。一方で、マクドナルドのカルチャーで育ち、英語しか話せない12歳の息子が、言葉の通じない霧深い大地でひたすら所在なさそうに佇む姿。その、何にも属せない子供の肉体が放つ静かな孤独が、白夜のような冷たい光の中に美しく定着されている。
過去を奪い返そうとする大人のエゴと、今この瞬間を生きるしかない子供の冷めた眼差し。二人の間に流れる埋めがたい距離が、過剰なBGMを排した環境音と、じっと耐えるようなカメラワークによって、セリフ以上に雄弁に語られる。
ラスト、思い描いていた故郷の幻影が完全に瓦解したとき、母と子がようやく「今、自分が立っている足元」を見つめ直す。土地という虚構の記号を失って初めて、生身の人間同士の確かなつながりが静かに浮かび上がってくる幕切れの処理が素晴らしい。
歴史の傷跡と、アイデンティティという名の迷路を彷徨う人間の実存を、真摯に凝視し続けた作品。

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