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グレース
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目次

グレースの作品紹介

グレースのあらすじ

第76回カンヌ国際映画祭「監督週間 」正式出品 ロシア南⻄部の辺境、乾いた風が吹きつけるコーカサスの険しい山道。無愛想な目をした16歳の娘と寡黙な父親。二人は移動映画館で野外上映をし、ポルノ映画の海賊版DVDを若者に密売しながら、錆びた赤いバンで北に向かって旅をしている。母親の不在が二人の緊張した関係に影を落とし、車内には重苦しい沈黙が漂っている。延々と続く荒涼とした風景と、そこで生きる人々との束の間の出会い。やがて辿り着くのは世界の果てのような荒廃した海辺の町。娘は先の見えない放浪生活から抜け出すためにある行動に出るが…。

原題
Блажь/Grace/Blazh
公式サイト
https://grace.twentyfirstcity.com/
製作年
2023年
製作国
ロシア
上映時間
119分
ジャンル
ドラマ
配給会社
TWENTY FIRST CITY

『グレース』に投稿された感想・評価

4.2
 冒頭の小川で下着を洗う少女の背中は、気怠さと生きることの困難さに満ちる。この荒涼とした土地は身体に纏った服をこの上なく汚す。やがて年上の男が彼女の隣に座るが、冬でも臭いを放つのか彼女は臭いという。「海に行きたい」とだけ呟き、彼女は赤いキャンピングカーの助手席に乗り込む。2人の間にはほぼ会話らしい会話などどこにもなく、気怠い時間だけが流れ続ける。ロシア映画で今作ほどコーカサスの風を感じ取れる映画は近年では稀だった。そう感じるほどの岩山のテクスチャーと乾いた空気感はジョージアとの国境辺りだろうか?具体的な明示はないが、どうやらこの2人は父娘らしい。名前すら明らかにされない父娘の道程は、日本製のポルノDVDを違法に売り捌き、インターネットも繋がらない不毛の地で細やかながら生計を立てている。その上映会は権利関係で言えば違法行為なのは明らかだ。ロリコン・ポルノに出た日本人女優にも1円の金銭も落ちることはない。

 然しながらイリーガルなビジネスに手を染める2人のロード・ムービーはどこか愛おしくも苦しい。ジョージアとの国境沿いからただひたすら北上し、バレンツ海へ。こんな険しい風景はあまり観たことは無いし、実際に行くこともないのだろうが、16mmフィルムの映し出す質感そのものが、風景が我々観客に雄弁に語り掛ける。土地のテクスチャーと肌触りを感じさせる。土地がある所には必ず誰かが住んでいる。荒涼とした土地にも若芽は宿るが、インターネット環境は整備されない。AIが人類の仕事を奪う云々の話もあるが、ネット環境が整備されればたちまち父娘は路頭に迷う。それは明日にでも起こる出来事なのかもしれないし、来年かもしれない。今作の背景には、旧ソ連邦崩やウクライナへの軍事侵攻があるのは明らかだが、政治的な配慮も批判も今作のどこにも描かれない。順撮りで42日間かけて撮影された今作は、映画初出演となるマリア・ルキャノヴァの少女としての幾許かの時間が奇跡的に収められる。そのボロボロの身体から僅かながら発せられる細やかな希望が、シャッターを切る刹那に凝縮されている。
「日本のはモザイクだらけだ」

ロシアの西側、南から北へと赤いポンコツのワゴンで父と娘がひたすら旅をするロードムービー
彼らがどこに向かっているのか、なぜ旅をしているのか、理由は全く明かされない
2人の関係性は仲が良い、と言うよりは冷めた感じ、ほとんど会話はありません
途中から分かってくるのは、母親は既に亡くなっていること、もう15年もこの生活を続けていることです

娘は16歳、生まれて間もなくこの放浪の旅に出たということになります
学校はどうしているんだろう?
はじめ、「グレース」というのが彼女の名前なのかと思ったら、違うみたい
彼らの名前は明かされない
エンドクレジットでは娘(マリア・ルキャノヴァさん)、父(ゲラ・チタヴァさん)と流れるだけです

監督のイリヤ・ポヴォロツキーさんは今までドキュメンタリーを中心に撮ってきた作家さんで、長編映画はこれがデビュー作だそうです
映画が全体的にドキュメンタリータッチなのはそのせいか

彼らは違法ポルノDVDをトラックドライバーなどに販売したり、DVD映画をスクリーンに投影した青空映画を開催したり、そこでドリンクやスナックを販売したりして生計を立てています
だけど娘はもっとネットが普及すれば、今の生活が成り立たなくなるだろうと言います
閉塞感が漂います

冒頭のシーン、娘が山腹の湧水の元にしゃがみ込んでまどろんでいる
その後車の横に座っていると、女が降りてくる
「血が出た」と言うと女が何かを娘に渡す
女は去り、続いて父親が車から降りてくる

何の説明もないので想像すると、娘は初潮で汚れた下着と下腹部を湧水で洗い、車に戻ると父が現地の女と情事に耽っていたので外で待機し、やがて出てきた女に生理用品をもらい、父親が続いて降りて来た、という感じかな
娘は父親に軽蔑の眼差しを向けます
そして「海に行きたい」と言います

行く先々で出会う人たちとの交流
ロシアは多民族国家なので、使われる言語もその地域でによって、バルカル語、カバルダ語、ジョージア語など多種多様です

トイレは道端で済ませ、シャワーは車の上のタンクから水を流して車の横で済ませます

荒涼とした大地が寒々しい
風力発電の巨大な風車、近代的なショッピングセンター、荒れた海、疫病で死んだ魚を回収する防護服を着た人々、その後ろに立ち並ぶ朽ちかけた建物、それはソ連時代の遺物でもありました

その日泊まったのは気象観測用の施設です
鬱な表情をした女がその魚を使った料理でもてなしてくれます

娘は常に感情を押し殺したように無表情、16歳にして何もかも諦めたような気だるさを身にまとっています
彼女はいつかこの生活から抜け出したいと考えています
彼女の成長の物語りでもありました

出演者やスタッフは実際にロシア西部を2ヶ月間かけて5,000キロ縦走するロケを敢行しています
なので、リアル・ロードムービーです
主演の2人以外、登場人物はほぼ現地人を使用しているそうです
低予算、16ミリカメラ、ロングテイクや手持ちショットなど、工夫が感じられます

本作が撮影されたのはロシアがウクライナに軍事侵攻するちょっと前、2021年秋とのことで、どことなく緊張感が漂ってます

全体的に暗くて鬱で、劇伴もなし、人によっては退屈と感じるかもしれません
でも、私には相性が良くて2時間あっという間に感じました
ラストも良き
ずっと余韻が残る素敵な映画でした
Omizu
3.6
【第76回カンヌ映画祭 監督週間出品】
カンヌ映画祭監督作品特集上映にて。サンセバスチャン映画祭に出品、ストックホルム映画祭では撮影賞を受賞している。

なんとも言えない。出来としてはいいのだが、テーマが分かりづらく、もったいぶった感じがある。

冒頭からの長回しのカメラワーク、全体の撮影は特筆すべきものがある。フレームインする主人公たちの車、割れたフロントガラス…象徴的で美しい。

ただ、何を言いたい作品なのか、というのが終盤までよく分からない。ラストで少女の決意、区切りをつけたいという気持ちが分かるのだが、そこをもう少し詳しく描いてほしかった。

流しのドライブインシアターのようなことをやっている父、多感な時期を迎えた娘、その関係性の描き方はすごく丁寧で良かったとは思う。些細な言動で伝わるその人の意思が垣間見える。

それは十分伝わっているから、母親に関することにもう少し時間を割いてフィーチャーしてもよかったのではないだろうか。とはいえこれが一作目だという監督の力量は十分だと感じたし、決して悪い映画ではない。普遍性を持った美しい作品だ。

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