創作の苦しみみたいな話かと思いきや、もっと普遍的な「こうとしか生きられなかった人」の話だった。安易に共感性を喚起するような描写を入れず、観る人によってはただ“不快な社会不適合者”という烙印をつけられる>>続きを読む
豪華キャストで売っていたシリーズで、しかも前作から9年ぶりの4作目ともなると、普通だったらシリーズの「格」みたいなものを意識しそうだが、全くその気がない! その軽さ自体は自分はむしろ好意的に見た。“い>>続きを読む
破局寸前の妻にも夫にもちゃんと腹立つし嫌だなと思えるのだが、この最悪な関係の行き先をついつい見守ってしまう。だらしなさ情けなさに人間味を感じるからだ。
夫の顔がちゃんと映らない時間がかなり続いたり、>>続きを読む
とんでもない奴が来たぞと言わんばかりのタイトルバックからアガる。実際、以降は本当に主人公がどうしようもないことしかしない。冒頭で妻が彼を目にしたときのリアクションが物語るように、彼が身内にいたら碌なこ>>続きを読む
劇場公開しなくて圧倒的に正解だと思ってしまった。本国予告の段階で「別に日本公開されないならされないでいいかな」と思った程度には惹かれなかったが、実際観てみたら「うわぁこれスクリーンで観たかった」と思う>>続きを読む
ファーストショットで本作との相性がわかる。牛と主人公らが出会うまで1時間。開拓時代の集落に成功を夢見る二人が流れ着くまでの前半では、自然のなかで芽生える友情の滋味が強調され、後半でそこに現代まで連綿と>>続きを読む
東京という、文化と無関心に溢れる街のなかで、ほどほどだが丁寧な暮らしをし続けることに充足を見出す主人公は、東京で、ひいては斜陽のこの国で生きることを肯定してくれる存在だろう。それ故に甘美だし、危険だと>>続きを読む
子どもの想像力の賜物であるイマジナリーフレンドの視点で冒険ファンタジーを描くという試みは面白いし、2Dでも3Dでもない、絵本の世界が立体感を伴って動くようなアニメーションは素晴らしかった。しかし、マジ>>続きを読む
「願いとは?」「夢とは?」というテーマではあるのだが、どちらかというと「それをお届けする我々ディズニーとは?」の方を強く感じてしまった。なのでディズニーファンにはいいかもしれない。ただ、その点でも同時>>続きを読む
しみじみ良かった。人がシステマチックに利用され、「廃棄」される時代における、市井のささやかな抵抗としての愛。めちゃくちゃ淡々としている登場人物たちを、正面切り返しと省略された編集で捉えることで、なんと>>続きを読む
取り返しのつかない所から始まる話であり、ではそこで何があったのかという真実に何とか近づこうとする試みを、役を演じようとすることに見出すという濱口作品の系譜。しかし本作は虚構になりきらない虚構の反復によ>>続きを読む
ハイテンポで音楽も愛も手に入れてゆくモノクロの前半は楽しめたが、夫婦仲に亀裂が入ってゆく後半になると凡庸に。それでも長回しの言い合いと完コピ指揮は見所で、それぞれ「音楽か愛か」の破綻と、破綻したまま前>>続きを読む
つまらなくはないが、「親しい人が実は訳アリだった」系のミステリーの型で観れたというだけで、モチーフとなっている肝心の社会問題についてはあまり真に迫った感じがしなかった。早い段階でだいたい予想のつくよう>>続きを読む
これは傑作なのでは。本作のアプローチは『この世界の片隅に』や『マイマイ新子と千年の魔法』を思い出す。緻密な時代考証のなかで、アニメーションによってこそ描かれる、子どもの活き活きしたいのちと逞しい想像力>>続きを読む
ああこれは『パディントン』の監督の作品だわと納得。本作も美術に童話的な作り物感があるのだが、これが職人が作るチョコレートの温かみを表現し(劇中で食べられているものは実際に全て手作りらしい)、そこに今だ>>続きを読む
サイコスリラーかと思わせておいてヒューマンドラマ! をやりたかったのは分かるが、そもそも本作におけるサイコパスというのが何なのか不明瞭で、結果的にミステリーとしてもヒューマンドラマとしてもよく分からな>>続きを読む
ナポレオンを愛に翻弄された男として滑稽に描く突き放し方は良かったし、じゃあそんな彼に翻弄された兵士たちは……というラストのテロップ含めこの監督らしい味わいではある。ただ、個人的にはもうちょっと滑稽さに>>続きを読む
バランスが変というか、型通りな作りではないので、その点において戸惑う人はいると思う。コントみたいなシーンもあるが基本線はシリアスで悲哀があったり、暴力描写は容赦ないけどポップに描いていたり。自分はこれ>>続きを読む
いい続編だ。今回はより広範囲を風刺劇に巻き込み、差別偏見まみれのディスり合いがより馬鹿馬鹿しくなった。そこへのアンチテーゼとして埼玉(概念)の強かさが対置される。前作ラストでナショナリズムっぽくなった>>続きを読む
人間の醜悪さが「エグい展開」のつるべ打ちにより詰め込まれていく様が安直な気もしつつ、それが高品質なアニメーションにより完璧に制御されるのでもはや恍惚。そしてその醜悪を急に小っ恥ずかしくなるような「熱い>>続きを読む
そもそもFBIの尋問録音を一言一句コピーして演技する試みが実験的で鮮烈だし、これによって「うわこんなくだり創作だったら絶対書かないだろうな」というリアルさが垣間見えたり、逆に「うわこういうこと現実のF>>続きを読む
小林賢太郎氏のクリエイティブが好きなので堪能した。タイトルが示すように、繰り返しとニセモノをゆるくテーマにしているが、これは言ってしまえば「小林賢太郎の脳内の開示そのものを天丼ネタにする」ということな>>続きを読む
何から何まで酷くて本当に酷かった。酷い以外の語彙を失う酷さ。坂元裕二どうしたんだ。ヤケクソ脚本にもほどがある。
まず豪華客船という舞台が映像的にも物語的にも全く活きておらず、むしろ安っぽく見えてしま>>続きを読む
「マルチバースサーガがうまくいってたらこうなってたかも……」の片鱗が見えるのがなんだか切なくなる、そんな面白さ。もしMCU全体がちゃんと「軽いMCU」に移行できていて、ちゃんとドラマ作品がキャラクター>>続きを読む
「映画館で不特定多数の人と一緒にスクリーンを見ることで感じる共感性羞恥」をめちゃくちゃ効果的に利用するシーンがあって感心してしまった。これだけでも映画化の意味があったのではと思う。
朝井リョウは挑発>>続きを読む
隣人トラブルものスリラーだが、対立している登場人物全員の気持ちがここまで分かってしまうのは新鮮だった。スリラーとはいえジャンプスケア的な演出ではなく、「向こうからアイツがやおら近づいてきて……あれなん>>続きを読む
映画すみっコ初のガッツリアクションやサスペンスで楽しめるのはもちろん、1作目の脚本家が復帰したのもあり、油断してるとグッとくる語り口が復活。「資本主義という名の成長主義がもたらしたもの」が端的に示され>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
『シン・ゴジラ』より色んな意味で「人にすすめやすいゴジラ」だった。神木隆之介×浜辺美波の『らんまん』コンビもキャッチーでありつつ、その上でちゃんと「今」のゴジラ映画になっているので、そこそこヒットはし>>続きを読む
百貨店という場所のワンダー性を、とにかく動き回る主人公のアニメーションにのせて体感させるというだけで結構面白い。場所や接する動物の大きさ、目線によって様々な表情を見せる百貨店のビジュアルだけでも満足感>>続きを読む
スマートな殺し屋がスマートにスマートさを逸脱していく過程を淡々と捉える変な映画。フィンチャーらしいリアリズムは堪能できるが、基本はかなり抑制されている。ただ思うにこれは、まさに「物の溢れかえる資本主義>>続きを読む
このAI観は真に受けない方がいい気がするが、一方でこれくらい割り切らないと描けないものもあるよなと思う。AIと人間の境界は……などと真剣に哲学する作品なんてたくさんあるわけだから。その点本作は「境界な>>続きを読む
スコセッシの変わらぬ若さと円熟を同時に感じる一作だった。おなじみギャング映画の構造で、相変わらずディカプリオはどうしようもない役だが、今回は栄枯盛衰の話ではない。ナアナアのまま突き進む愚かさを、「いつ>>続きを読む
「生産性」の有無で他人の価値を判断しようとする思想はどこからくるのか、実は極めて卑近な所にその端緒はあるのではないか……という視点を描いたのは賞賛したい。ただ、『茜色に焼かれる』に続き、相変わらず社会>>続きを読む
出た! 危うい話に美しく浸らせる名手。畳み方は全く感心しないが、異なる時系列をあえてシームレスに繋ぎ、常に音楽を鳴らし、お家芸の“見た目が同じ登場人物”を配置。つまり岩井的演出大集合の3時間で、「もう>>続きを読む
原作のある今泉作品の中では比較的上位だと思う。対面の2人を真横から映し続ける特徴的な演出が、今回は「一見静かな日常のやりとりでも水面下にはそこに表出しない情動がある」という演出として、時たま効果的に踏>>続きを読む
二重スパイを見つけ出すポリティカルサスペンスだが、それが「独裁者の手先」の視点でノンストップで進むのが特徴。これにより、ジャンル映画的な二転三転の展開よりも「暴力を終わらせたいのに暴力を行使せざるを得>>続きを読む