いま ここにある風景の作品情報・感想・評価

いま ここにある風景2006年製作の映画)

EDWARD BURTYNSKY: MANUFACTURED LANDSCAPES

製作国:

上映時間:87分

3.6

「いま ここにある風景」に投稿された感想・評価

☆☆☆

2008年8月2日 シアターイメージフォーラム/シアター1
JunOtsuka

JunOtsukaの感想・評価

3.9
映画というより、写真展を見に行った気持ちです。その位の軽さで見に行って良いと思う。
難しく考えるというより、へぇそうなんだぁで、十分意味がある。

ドキュメンタリーの良い所は、当たり前なんだけど、それが現実だという事。
実際に起こっているという事だけで、それはとても感慨深いものになる。

簡単に言えば、中国にある工場や石炭採掘場、造船所などの写真・映像が
次々と紹介されます。ただそれだけなのにその衝撃たるや。
良いとか悪いとかいう話ではないんですね。中国だからという話でもない。
今一番大げさな形になっているのが中国なだけで、
これはどの国の現実でもあるわけです。

産業の発展が、既に地球や気候を深刻に変質させる段階に来ているという
環境に対する視点、
もしくは産業という巨大なうねりの中で、人の自由や個性が完全に埋没し
システムに生かされているという人格や尊厳に対する視点、
もちろん、いろんな見方はあると思うのですが。

難しい話を抜きにして、そのスケールにただ驚くのもありです。
余りに大きすぎる工場やそこで働く人々の量、
また建造期間16年、半分完成しただけで世界一という三峡ダムは、
その建造の為に230万人を移住させ、工事の為に地震が起こるというスケール。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%B3%A1%E3%83%80%E3%83%A0

日本語題名がイマイチセンスに欠けるのですが、
原題の「Manufactured Landscape」は、含みのある良い言葉を選んだなぁと思います。
「人為的」と言いたいのであれば、Artificialを使えば良いのですが、
ここは工場で生産する事を意味するManufactureでひっかけつつ、
「こんな景色は世界中のあちこちで「大量生産」されている」という点、
また工場のベルトコンベアや流れ作業の様に、
「もはや人がコントロールしているのかされているのか分からない」
個人の意思では(もしくは例え組織がそう望んだとしても)この景色を「生産」していく事は
もう止められないのかもしれないという怖さも示唆しているように思えます。

この作品のもう一つ好きな所は、答えを出さない所ですね。
特にTVのドキュメンタリーや質の悪い映画は
問題提起から考え方、視点、答え、全部作った人のものをそのまま与えてしまう。
それはとても狭いし、見るほうの楽しみを奪ってしまうけども、
こういう、きっかけしか与えてくれないものは、人を考えさせるには素晴らしい題材なのではないでしょうか。
気になる人は、見てみましょう。スクリーンで見たほうが、その途方もない巨大さを、より味わえます。
IkuoKawai

IkuoKawaiの感想・評価

4.0
生活習慣、性格、ある人を構成するあらゆる要素はその人の住む環境、働く環境に大きく左右される。
主に中国を舞台に、急激な産業化が自然環境をどう破壊し、景色を変え、そこに住む人間の生活をどう変えたのか。
扱う内容はシリアスだけど、とにかく映像、写真のインパクトが凄くて見入ってしまう。
巨大な工場、巨大な廃棄物の山、汚れて赤く染まった川・・・
物を作り流通させて人間は発展してきた、そういう営みがある一方で、地球を傷つけ汚してきたという歴史があるという事を見せつけます。
より便利でより豊かな生活は、このような事の上にあると思うと痛みにも似た複雑な気持ちが湧き上がりました。

バーティンスキーの撮った写真は、人間が作ったものや壊したものの風景が写されています。
どれもスケールが大きく哀しいのに美しさがありました。