何度も観たくなる野心作だとも思います。
カンヌ国際映画祭(1979)では、未完成の状態で出品されたにも関わらずパルム・ドールを受賞したそう。
私が鑑賞したのは再編集された特別完全版(2001)ですが、ひょっとしたらいまだに未完なのかしら?とも思えちゃう。
実は、素直に満足することができない作品でもあります。
作品としては「戦争映画」というよりも「ロードムービー」といったほうがしっくりきます。
つまり私の中では『プライベート・ライアン』('98)とか『デッドマン』('95)などと同じカテゴリ。『スタンド・バイ・ミー』('86)、『A.I』('01)なんかもそうかもしれません。
これらに共通して言えるのは、①遠く離れた目的地へ向かうということ。②途中でいくつか立ち寄りがあるということ…といったところでしょうか。ここに③明確なミッションが加わるとなお好き。
そして私にとってロードムービーの醍醐味は、その道中での出来事(ハプニング)と、目的にたどり着いた後の終わらせ方にあるような気がします。
本作は前者が素晴らしい出来栄えにもかかわらず、後者がなんだか長々として哲学的セリフが続き、ついていくのがしんどい…
ベトナム戦争が舞台で主人公はアメリカ陸軍のウィラード大尉(マーチン・シーン)。軍上層部からカーツ大佐の暗殺という極秘ミッションを命じられ、4人の部下とともに哨戒艇で川をさかのぼってカンボジアのジャングルを奥へ奥へと向かう話。
同胞であるはずカーツ大佐(マーロン・ブランド)はカンボジアのジャングル奥地で自らの王国を築きあげ、軍から制御不能な危険人物とみなされていたんです。
前半、目的地への道中はウィラード大尉の独白のような、心つぶやきようなナレーションによって、会ったことのないカーツ大佐に対する思いが語られます。
『いったい何がカーツ大佐を狂わせたのか?』
カーツ大佐にまつわる数々の写真や手紙、報告などがスクリーンに映され、観ている方もカーツ大佐の人物像について想像だけがどんどん膨らんでいきます。
そして奥へ奥へと向かうにつれて映し出されていく戦争がもたらしたカオスの世界。
このカオスっぷりが素晴らしいのですが、次第に同行する部下達がおかしくなってゆき、ウィラード大尉も変わり始めてゆく。
カーツ大佐も同じように辿った道なのでしょうね。きっとこの説明が容易でないカオスがカーツ大佐を狂わせたに違いないと思います。
やがて、カンボジアのジャングルを奥へ奥へと向かった先にカーツ大佐の王国が登場しロードムービーはクライマックスを迎えるんですね。
2019年にファイナル・カットが公開されましたが未だ観れていません。ひょっとしたら未完と感じる本作も、これでもって完成と感じるかもしれませんね。期待を膨らませてのぞみたいと思います。
しかしマーチン・シーンは息子チャーリー・シーンに似てますねー。