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『SFバイオワールド/女帝国の謎』に投稿された感想・評価

[SFハーレムから考える全体主義と男性優位社会] 99点

ド傑作。1980年代にブロックバスター系映画を色々撮っていたジュリアス・マチュルスキの監督二作目。エセ科学的な人体実験でコールドスリープ状態にされた二人のおじさんが起こされた未来の世界には女しかおらず、男は眠っていた二人だけになっていた、というSFハーレムもの。取り敢えずポーランド美女たちが無意味に脱ぎ散らかすという典型的な東欧映画であることは確か。無意味なおっぱいですよ皆さん、最高じゃないっすか。SF的な生物の剥製がどう見てもぬいぐるみだったり、警備隊の車がゴリッゴリのおもちゃだったりチープなB級映画と思いきや、自由の弾圧や統制社会の大いなる欺瞞への痛烈な批判を展開する超面白い映画だった。また、男性優位社会への痛烈な皮肉も展開しているが、結局は男女の役割を逆転させたに過ぎない女性優位社会も間違っているという理論をもろに表現しているのだ。先進的すぎるだろ!

確かに状況を把握する前半は退屈なんだが、脱走した男たちが別の地下世界的な場所でパーリーナイトしてるお姉様方に遭遇して、追ってきた女たちとパーリーしてる女たちがパイ投げ大戦争を起こすシーンは馬鹿らしさを通り越して大爆笑。男たちが脱走して垣間見る地下世界の生活は『トータル・リコール』など後のSF映画を思わせる作りになっていて、セットの作りとしては同時代のハリウッド映画やそれ以降の西欧ブロックバスター系SF映画のそれに匹敵するほど。思えば『不思議惑星キン・ザ・ザ』の地下世界セットにも似ていたな。

主演の男二人に対するラミア(Bozena Stryjkówna)とエマ(Boguslawa Pawelec)という名前の女の子が可愛いのなんの。後者は後にキェシロフスキの『偶然』で第一部の彼女を演じることになる。相変わらず好きな女優の出演作品がほとんどないのには泣けてくるが、彼女たちが泡風呂でキャッキャやってるとこは幸せでした。どうもありがとうございました。

共産主義社会で自分を偽って生きる→女性と偽って生きるに変換するのとか天才的すぎるんだよな。アンジェイ・ワイダみたいな頭の固いアレゴリーとは完全に一線を画している。馬鹿にするなかれ、馬鹿げた設定の中に奥深い世界が広がっているのだ。

追記
そうか、戦後の男性不在社会も皮肉っているのか。
シナリオの良さが際立つ、カットなどは‘80年代映像の下位TVドラマレベルだが、投げ方と構造が群を抜いている。

本質は当時のポーランド体制を揶揄したものらしいが、生や性への本末的部分も描いていて、コメディを絡めたサイエンスにも思えた、他ユーザーのかたも参照に。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.5
【転生したらハーレムでした】
転生したらハーレムでした系ポーランドSF映画。男女立場入れ替えた点から男性の優位性を分析していくアプローチが取られており、荒唐無稽ながら鋭い映画となっている。冷却カプセルが閉まる挙動が雑過ぎて笑った。