許されざるものの作品情報・感想・評価

許されざるもの2005年製作の映画)

THE UNFORGIVEN

製作国:

上映時間:121分

ジャンル:

3.4

「許されざるもの」に投稿された感想・評価

カナイ

カナイの感想・評価

3.5
先に兵役を終えた主人公の元に、休暇中の友人が会いにくるところから始まる。2人が共に兵役中だった過去と交互に見せてゆく。
ワンシーンワンカットで進むので、どこかドキュメンタリーのよう。自分にとって兵役は身近ではないけれど、集団における独特の空気や圧力にヒリヒリした。
タイトルの「許されざるもの」は、自分自身を「許せるか許せないか」なのだと、観た後に思った。
韓国国防部には軍隊のいい面だけを撮影すると言って許可をとり、韓国軍隊の最もリアルでくらい一面を全面的に映画化して話題になった作品。

上に述べた通り、あまりにもリアルすぎてまるで私の話のような錯覚を呼び起こせるくらい。
ハジョンウの若かりし頃の作品。軍隊の中での設定だが、普通の会社の中間管理職にはちょっと胸が痛い。能力が劣る部下の教育を全部責任追及されると辛い。理不尽という単語がぴったり。
F3A

F3Aの感想・評価

3.8
「悪いやつら」のユン・ジョンビン監督の初期作(在籍していた映画学科の卒業制作らしい)にして、本人出演作。まるで刑務所のような軍隊生活を通して韓国の若者の生きにくさを肌で感じられる青春映画になっている。そしてジョンビン監督らしく、例によって男だらけの男の社会。同年代の若者達の中で孤立し、屈折し、挫折する三人の青年の姿に焦点を当てている。

韓国の徴兵制では、国民の男子は19歳で徴兵検査を受け、29歳までに軍隊に入り、二年間を軍人として過ごさなければならない。国連で人権として認められている良心的兵役拒否も許されず、入隊を拒めば懲役が課せられる。それでなくとも兵役を終えてこそ男として一人前、国防は国民の義務と言う通念があり、よほどの事情と覚悟があったのだとしても、兵役を逃れたと言うだけで韓国社会では謗りを受ける羽目になる。
兵役中は家族や恋人から離れて、社会から隔離された兵舎で生活するのが規則だ。外出が許される休暇は二年間のうちたった三十日程度で、娯楽は共用のテレビと読書のみ、訓練や軍務は過酷で辛い。そして入隊時期によって決まる上下関係が非常に厳しく、新兵のうちは理不尽な命令や体罰にも反抗せずに耐え忍ばなければならない。年齢も学歴も生まれも、人格すら関係なく、実家がいくら金持ちでも外でどんなに女にモテても、軍隊に入れば上官の草履取りの下っ端から始める事になる。
群れの中で序列を示すと言う事は、立場の弱い者を踏みにじるのが黙認されると言う事でもある。それが教育に留まっているうちはいいのだが、往々にして行きすぎる。上官によるシゴキの最中の死亡事故や下級兵が精神を病んだ末の自殺は度々起こっているらしいし、集団暴行致死、いじめを苦にした兵士が起こした銃乱射事件と言う形で、日常的に続けられていた陰湿な虐待が明るみに出る事もある。2014年に12人が殺傷された江原道高城銃乱射事件が有名だが、この映画が公開された2005年にも、上官の命令で隊員が排泄物を食べさせられた事件、古参兵と折り合いの悪かった兵士が手榴弾とサブマシンガンで上官8人を殺害した事件が起きている。そうして表沙汰になるのは氷山の一角で、日々同じストレスに耐えていた兵士はその陰に数えきれない程いた事だろう。たとえいじめの標的にならなくたって、とてもじゃないが進んで行きたい所じゃない。

しかし「郷に入っては郷に従え」だ。そこがどんなに汚く濁った環境でも、二年間は住み続けなければならないのだから、穏便に兵役を終えたいのなら自ら汚れた水に慣れるしかない。
空気を読み、秩序に従っていれば、上官の機嫌を損ねずに過ごす事は大して難しくはない。それが出来る要領の良い男がこの映画の主人公の一人であるテジョンであり、汚れた水に最後まで慣れる事が出来なかったのが、もう一人の主人公のスンヨンだった。
名門大学を休学して入隊して来たインテリのスンヨンは、入隊早々に鬼の兵長ユ・テジョンに呼び出しを食らう。ユ兵長と言えば規律に厳しい事で有名で、ついさっきも部下デソクを便所に呼び出してヤキを入れていたような男だ。しかし、顔を合わせてみれば二人は久しぶりに会う中学の同級生同士で、テジョンは懐かしい旧友との再会に驚き、そしていつになく親切に接した。
入隊して来たばかりで馴染めずにいるスンヨンに対して、テジョンは軍隊で生活するコツを色々と教えてやった。何を言われても理不尽だと思わず、黙って上官に従っていればいいとテジョンは言う。自分もそうして来たし、今となっては昇進して、自分が部下に命令する側になった。皆我慢しているんだからお前も我慢しろ、と。しかしスンヨンは、テジョンが言う軍隊の規律にどうしても我慢が出来なかった。理不尽な事が多すぎる。上官は立場を嵩に着て女を紹介しろとしつこく迫って来るし、下着を勝手に横取りする。スンヨンはその度に断ったり抗議しては上官の不興を買いながら、そもそも部下に対してどんな理不尽な仕打ちをしても許されるなどと言う事があっていいはずがないと鬱屈を募らせていた。けれど、そんなスンヨンの態度が反抗的とされ、不適応兵士として上官達から目を付けられてしまう。
それでも何とかひどく殴られもせずにやって行けていたのは、上級兵のテジョンが何かとスンヨンを庇ってやっていたからだった。だが、その事が後々、スンヨンとテジョン自身の立場を悪くして行く事になる。
一方、スンヨンの後に入隊して来て部下となったジフンは、根は良い奴だがとぼけたところがあって、いかにも軍隊で弱いものいじめに遭いそうなタイプだった。そんなジフンが理不尽な目に遭わないようにスンヨンは目をかけてやり、二人はまるで親しい先輩後輩のような良い関係になる。しかし、ある事件をきっかけに、テジョンとスンヨン、スンヨンとジフン、それぞれの友情に亀裂が入ってしまうのだった。

観ている時にチラッと感じた事でもあるんだけど、こう書き出しているとやっぱりこの映画、韓国版の「戦場のメリークリスマス」なんじゃないかなあと思う。
己の良心を信じる若者と、歪んだ秩序に疑いを持たない男、スンヨンとテジョンの立ち位置はロレンスとハラ、ジャックとヨノイの関係に重なる。だが、その行き着く先は終戦と言う断罪ではなくて、ハラがメリークリスマスと言い残して満悦したまま日本軍が戦争に勝ったかのように、テジョンはスンヨンよりも先に無事除隊して軍隊生活からすっかり遠のき、一般社会に適応していた。
そして、軍隊からわざわざ会いに来て助けを求めるスンヨンを煩わしくさえ思うようになっていた。
除隊からしばらく経ったある日、「どうしても話したい事がある」と呼び出されたテジョンは、相変わらず空気を読まないスンヨンにしつこく引き留められ、場末のモーテルの一室で長い会話に付き合わされる事になる。そして本題をなかなか切り出さないスンヨンと喋り続けるうちに、軍隊にいた時はさらけ出す事のなかった二人の性格が浮き彫りになってくる。
自らの良心ではなく、その場その場の秩序に従う事が正しいと考えてきたテジョン。体罰も進んでやりたかった訳じゃないが、必要な事だからやって来た。そんなテジョンから見れば、スンヨンはいけすかない理想論を吐く偽善者でしかない。力のない者がいくら正論を言っても何も変えられはしないし、秩序を乱すのは我儘と言うものだ。だが、隊にいる間だけでもそんなスンヨンを庇ってやっていたのは、テジョンなりのなけなしの良心だったんだろう。
「軍隊なんだから仕方なかった」と、テジョンは言う。しかしスンヨンはその言い訳をずっと嫌って来た。軍隊だろうと教育を逸脱した命令に従うのはおかしいし、部下を傷付けるのは許される事じゃない。だが、そんなスンヨンもテジョンの除隊以降、自分の部下に対してテジョン達と同じ罪を犯してしまい、良心の呵責に苦しんでいた。

社会はこんなものだと割り切って不合理を受け入れ、不合理に荷担できてしまう青年がいる。そうはなれずに考えすぎて落伍する青年がいる。能力に劣るばかりに人として扱ってもらえず、 這い上がれもしない青年がいる。
軍隊生活でなくても、韓国社会でなくても、今この時をスンヨンやテジョン、あるいはジフンのように感じながら生きている若者が、韓国にも日本にもきっといるはずだ。彼らにしてみれば今いる場所がどこであれ、毎日狭く息苦しい兵舎で抑圧されながら暮らしているようなものだろう。
そんな苦悩を、当時26歳のジョンビン監督は同世代の視点で、等身大のスケールで描いている。あまりカットを割らず、音楽も使わず、自然な風景と緊張の漂う会話をフレームの中に捉え続けるスタイルは、一人一人の心情をじっくり追わせてくれる。そして時間軸はテジョン除隊後の現在と、除隊前の過去の回想を行き来しながら、取り返しの付かない結果へとそれぞれ向かって行く。
過去の自分の決断がもたらした結果を現在に抱えてきたスンヨンは、まるで兵役を終えて全て忘れようとしていたテジョンに時限爆弾を運んできて、その起爆をじっと待っていたかのようだった。予想外な結末にビックリと言う話ではないけれど、それぞれがこうなるしかなかったと言う説得力が重くのしかかるラストが待ち受けている。

国や時代性の違いを問わずにうじうじ悩める若者達への共感と同情が強く感じられる、不朽の良作って言うのはきっとこう言うものだろうと思う。
監督がジフン役として自ら出演。役作りが素晴らしかった!
うーむ。

韓国人ならものすごーく感情移入できるんだろうなあ。

兵役のない日本人だから今ひとつ難しかったけれど、それでも、この兵役の間の苦しみは察してもあまりあると思うわ。

経験になるとか成長できる点よりも、あまりにも過酷なイジメや理不尽なことが多くて、バカな上司をもつと死に追いやられてしまいかねない非常に危険なものだわ。

軍隊とかの組織は、バカな上司を裁くシステムはないのかね⁉️

情けないわ。
貴重な命や才能がすりへらされる。


忘れることが出来ない人間は弱いのか。忘れることができた人間だけが生き残れるものなのか。

人間にぞっとする。
でも目をそらしてはいけない主題がここにある。

人間は元々残酷なんじゃない。
弱いから残酷になるんだ。
忘れちゃいけない。
学生の卒業自主制作映画。賞を取ったらしい作品。内容は韓国の徴兵制及び軍隊のあり方への問題定義なのだろうが、あの国の内情を実感出来ない日本人には単純な内容に感じてしまう。ただ、徴兵制があるという国情はあらゆるひずみを生じさせているのは間違いないのだろう。
OASIS

OASISの感想・評価

3.3
兵役終了間近のテジョンの元へ同級生だったスンヨンが新兵として入隊してきた。
テジョンは軍隊生活に慣れないスンヨンに目をかけてやるが、トラブルばかり起こす。
そんなスンヨンにもやがてジフンという後輩が出来て今度は指導する立場になるが・・・。

ハ・ジョンウ主演のドラマ。
軍隊の内部を描いた内容だけど、厳しい訓練をしたり戦地に赴いたりという戦場描写が一切無い変わった映画だった。

厳しい指導で知られるテジョン(ハ・ジョンウ)は、同級生が現れた事に嬉しくなり、当初は他隊員よりも贔屓目でスンヨンに接する。
結果的に彼を甘やかしてしまう事になり、上官への態度や口の聞き方も分からぬまま成長して行き、スンヨンは後輩にまで同じ様に接してしまう。

軍隊の中に居ながらも環境に適応出来ずプレッシャーに悩み脱落して行く人は数多くいるだろうが、それでも耐え抜くのは守るべき存在があるからだろう。
テジョンはもちろんジフンにすら愛する彼女が居たが、スンヨンにはそのような存在は居なくて。
あんな阿呆に見えて顔も普通な奴にも彼女がいるというのに、なぜスンヨンにはいなかったのか・・・。
国への忠誠心だけでは心を支えるのは到底無理な話。

いつまでも甘やかす訳にはいかず、テジョンは他隊員の居る前で激烈な怒りを見せつける事でその考えが変わって欲しいと願うが、思えばその瞬間からスンヨンは覚悟を決めていたのかもしれない。

そう思うと、二人だけの会話を背中のみで映し出すラストシーンでは、やはりスンヨンの背に哀しみが乗りかかっているように感じた。
派手さは全く無いですが、兵士達の苛立ちややるせなさが募って行く過程は胸に迫るものがありました。
sachixxx

sachixxxの感想・評価

3.7
この映画の主な登場人物は三人。兵役生活を送る中で、理不尽な暴力や、非合理的な規律、不条理な組織に疑問を感じ、上官たちに非適応者の烙印を押されたスンヨン。スンヨンとは対象的に、軍隊生活に上手に適応し、模範的な兵長としてまもなく除隊を控えているテジョン。のろまで、何をやっても上手く行かず、いじめられっぱなしのジフン。

韓国人の男性に生まれた以上、避けては通ることが出来ない「兵役」という義務。19歳〜29歳までの間におよそ二年間の兵役が義務付けられている。出来れば軍隊になんか行きたくないっていうのが本音だと思う。自分に置き換えて考えてみても19歳ぐらいの時って一番楽しかった時期だし、これからの自分の人生設計をしていく大事な時期。そんな時期に軍隊行けって言われても…って思っちゃう。一方、韓国では、軍隊に行ってこそ一人前の男だ!って考え方が浸透している現実があるみたい。その一方、芸能人やスポーツ選手などの兵役逃れが社会問題化している側面もあるようだ。何はともあれ、兵役が韓国社会を形成している部分は多分にあると思う。そしてこの映画の主要登場人物たちは幸せにはなれない。この映画で描かれている軍隊=韓国社会の縮図なのかな。韓国社会への監督の痛烈な社会批判に思えて仕方ない。