陸軍残虐物語の作品情報・感想・評価

「陸軍残虐物語」に投稿された感想・評価

ゆん

ゆんの感想・評価

5.0
物語が進むにつれて、一つひとつ希望が崩されていき、最後には真っ黒の絶望に覆われる様には圧倒される。傑作
主人公の三國連太郎が何か意思をもって話を動かしたり、特別な発言をするわけではないのだが、演技の凄みなのか何なのかとてもただ者ではない雰囲気や言語化できないヤバさを漂わせていて目が離せない。そんな隠しきれない大物感の漂う三國連太郎を上官として徹底的に苛めまくるのが黄門さま、西村晃なのだから、めちゃくちゃ濃い。面白い!
軍隊におけるいじめや村社会を描いた作品だが、主人公のメンタルが「苛められてつらい、悔しい、なんとかしたい」というよりは「苛められるのはしょうがないし諦めるので自分のささやかな幸せを守る」という方向に行くのが泣かせるし人生の指針にしたい。そういった様々なきもちが主人公の顔にいつも表れていて、情けなさや悲しさや諦めやしんどさで、最終的に無になっている。
ぼっとん便所に潜るシーンも良かった。良い映画をありがとう
軍隊とは、星の数が一つ違うだけで天と地ほどの差があり、下のものは上が命じたことに絶対服従の世界だ。この作品のような事件が戦時中の軍隊のなかで起きた事実があるのか、あくまでフィクションなのかは分からないが、このような残虐物語と言うべき事件が日常茶飯事ならば、やはり、まともな人間は理性を保つことが厳しく、帝国陸軍という組織はかなり酷い環境下にあったのだと推測される。
新兵ものとして、『兵隊やくざ』のようなエンターテイメントとしての派手さ痛快さはないので、とりたてて際立ったところはないのだが、初年兵の目線を通して、人間のせせこましさや、狭量さ、意地汚さをこれでもかと見せつけられるヘビーな100分間だ。
三國連太郎が何をやらせても上手くできない初年兵の役を演じており、ドジでグズだが憎めないこの男に同情して味方をする同期の好青年役を中村賀津雄が演じる。このふたりに焦点が当てられる。
対して、主人公をいじめる嫌味な班長を西田晃がこれでもかと憎々しげに演じており、これがまた主人公と同時にみている人の怒りの対象となって、悪役として観客の憎悪を一手に引き受ける素晴らしい役まわりを担っていた。
上官に何を言われても耐え続ける主人公だが、耐えがたい仕打ちを受けて、ついに頭に血がのぼり、上官を殺害し脱走を決行し家に逃げ帰るのだけど、そこでさらに救いの無い悲劇を知らされて、そのままクライマックスとなってしまう。
そんな状況に到るまでの過程が実に丹念に積み上げられていて、すべての登場人物の行動にそうせざるを得なかった道理があるのだということが描かれるため、どうしようもない無情感がやるせなさとして押し寄せてくる。
みている間ずっと「人が人の上にたつ」という当たり前のシステムの在り方それ事態に疑問を投げ掛けられているようで、登場人物の怒りや疲弊が伝わってくるような作品だった。
戦争末期、召集された中年初年兵。上官にいじめられ、先輩と友情を結び、妻を愛した故にその身に起こった切ない悲劇。

超面白かった。
男が墜ちていくのってドラマがあってよく映画のテーマになる。
僕の好きな映画で言えば「仁義なき戦い広島死闘編」やら「リチャードニクソン暗殺を企てた男」「フォーリングダウン」などなど。
この手の話ってなんでこんなに魅力的なのか。
結局全部自殺や自殺に近い死に方で死んでいく彼らの生き方になぜこんなに引かれるのか。
一線を越えた彼らに。
多分誰の身にもストレスってあって、それでも全うな方向へと生きようとしている。
でも破滅願望もあって、ああ、もう、いっそ、くそっ、そんな時に一線を越えてしまうこと、そしてそこから発生する破滅を彼らが演じてくれることへのカタルシスがあるんだろうと思う。

この話もその手のカタルシスがある。
でもそのカタルシスに至る重層的な構成が素晴らしい。
悲劇の連鎖は愛や仁義から発していたり、軍という特殊性が加味されたり、悪が悪たるのに同情すべき理由があったり。
全てが過不足無く伏線になって破滅的な悲劇へと収束していく。

全部がとても素晴らしい映画なんだけど、書きたい部分だけ。
演技、悪役の西村晃、ちょっとあり得ないくらい素晴らしい演技。この役無茶苦茶難しいと思う。同情に足る理由がある悪役なんだけど、ラストのカタルシスを全く邪魔しないような徹底的な小悪党ぶり。彼の最期は残酷で美しいカタルシスを生む。しかし見終わった後に考えるのはやはり彼に降りかかった悲劇だ。彼が生きなければならなかった悲劇について考えてしまう。これを演技で成しているんだからスゴい腕だ。最近大好きだな、西村晃。
三国連太郎はデカ物のバカ。墜ちていくフォレストガンプって感じ。終始愚鈍なんだけど、ラストの絶叫は涙が出る。愚鈍な演技をして鼻につかないってことは結構大変なことなんだと思うけど、上手にやっているんだと思う。山芋食うシーンとか最高。汚い。

撮影もいい。変なズームとか。気持ちいい。
便所のシーンは白黒で本当に良かった。

この映画では発狂が数多く描かれるけど、恐ろしいことにその発狂の全てが納得が行く。発狂を連ねて映画にしているようなものだ。
軍隊が生み出す発狂。恐ろしい。
WINSRIVER

WINSRIVERの感想・評価

4.5
三國連太郎が愛しい。話は残虐で悲しすぎるけど、映像が感覚的に新しいから意外にもさらっと観れる。面白すぎた。
ゆ

ゆの感想・評価

4.5
新文芸坐の戦争映画特集にて。

三國蓮太郎可愛さ爆発。
うんこまみれの中生まれるアツイ友情シーンが大好き過ぎる。
首吊り死体が最初に出てくるショットの不気味な感触には感心した。
t

tの感想・評価

4.4
すごい。困ったことにすべての瞬間が面白かった。軍隊にあって浮き上がる人間のみみっちさと、大便小便の中で生まれる友情。ラストも文句なし。
西村晃と江原真二郎最高だ。ぎこちないズームと意味深なクレーン撮影も問題なく愛せる。
一

一の感想・評価

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西村晃やっぱり悪い顔してるよな~饅頭泥棒も中村嘉葎雄もいい顔している。
三國連太郎演じる犬丸は、『白雉』とか『グリーンマイル』とか『二十日鼠と人間』みたいな「聖なる白痴」系のキャラで、どんなに虐められても何をされても怒らない、病的なまでのお人好しだ。
それに対して中村賀津雄演じる鈴木は、利発で群の中でも上位に位置し、暴力と処世をある程度使い分ける事が出来る一般的な兵隊だ。
そんな2人をいびるのが、西村晃演じる班長だ。
反抗する部下は肥溜めに落とし、精神の弱い物を見抜いて手下にし、内気な部下の妻は犯してしまう小心者の鬼畜だ。
こいつの苛烈さ・陰険さに比べたら、ハートマン軍曹などヌルイ部類に入るだろう。

中村賀津雄が三國連太郎の無実を証明するためにスパイを拷問するシーンでは、凄惨な画面に似合わない感動的なメロディが流れる。
一見選曲ミス以外の何物でも無く、「やっぱりヘボ監督なのか」と思ってしまいそうになるが、これが効果的なのだ。
ここは暴力シーンでありながらも、犬丸の意思を汲んだ男泣きシーンでもある。
既に2人は「同じ釜の飯」ならぬ「同じ肥溜めの糞」を食った仲だから。
怒らない三國に代わり、激怒して反発し、泣いてくれる鈴木の行動は血肉の友情だ。
『兵隊やくざ』の大宮&有田の様なキャッチ―さは無いまでも、胸をうつ男のコンビだ。

妻を犯された犬丸が暴走するシーンではカタルシスと凄惨さを両立させているし、残された鈴木の表情は何とも言えない無常感が漂い、観た後にもしばらく余韻を残す。
何もわかっちゃもらえない本当に国家も人間も腐りきった世界。妻を寝取ったクズを殺し、追われ、妻も自殺。親からは非国民、親不孝者と蔑まれ、こんなにも辛く報われない人生があるだろうか。陸軍を題材にしたこういう映画が世に多くあるという事は少なからずこれが戦時中の陸軍のリアルだったんだろう。
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