夜の終りの作品情報・感想・評価

「夜の終り」に投稿された感想・評価

まこー

まこーの感想・評価

5.0
超絶大傑作。顔がヤバい。あとライティングヤバし。娼婦の吸うタバコはやはりピースだった。
恋人と所帯を持つ事を夢見て、コツコツ働く青年。
ある日、酔っ払った保険金集金人の懐に大金が覗いているのを発見して、盗ろうとしたら騒がれて、はずみで殺してしまう。

今は犯罪者や被害者の人権に考慮した報道になってるけど、当時は全然皆無だから、新聞の見出しとか、「恋人は泣いている」な記事にビックリ。

ラストの、夜明けのシーンは、主人公のホッとしたのが良く伝わってくる。
面白い!
あらすじに惹かれての突撃鑑賞だったけど大成功。いい作品でした。

主人公は発作的に犯してしまった罪を認めることが出来ず、かと言って根が小心者なので開き直って悪に転ずる事も出来ず、自縄自縛状態で苛まれていきます。
追ってから逃げたいのか捕まりたいのかもハッキリ出来ず、フラフラと街を行き来するばかり。だから逃走中もいちいちツメが甘いし、行動に合理性はありません。でもだからといってツマラナイかというと、これがすごく面白い。自分も同じ状況に置かれたら、同じような行動を取り、同じように追い詰められていくだろうなと思わせる迫真性がありました。

終盤にかけては、作為を強く匂わせて(「清貧」推しが過ぎる)主人公を導くキャラクターが次々登場することで、少し興ざめします。
とはいえ、そう用意立てしてあげないと、この主人公はきっと、自分の力で再び道徳を取り戻すことは出来なかったでしょう。同脚本家による「天国と地獄」の犯人・山崎努は、この主人公のように他人の優しさに触れることができなかったがゆえ、心が捻れ切ってしまった成れの果てなのかもしれません……などとぼんやり考えてしまうほどにのめり込んで観ていました。

物語のことばかり言っていますが、テンポは良く、構図や照明への意識も高く、総じて面白かったです。タイトルをズバッと象徴するラストショットにも痺れます!
路上で酔い潰れていた保険の外交員から出来心で金を強奪。夢中で逃げて気づいたら血塗れの石を握りしめていた…。

そんな池部良の逃亡劇なんだけど、彼が何を考えているのかが分からないし、素人とはいえ金を恋人が勤めるバーに置き忘れたりと犯行後の行動がマヌケ過ぎてモヤモヤしながらの序盤。本当は良い人なんだか、自分のことしか考えていない本当に悪いヤツなんだか。。

しかしそれが改善されることなく、しつこく続いていくうちに何だか幻想的な物語に思えてきて、さらにはこれは傑作かも?という思いまでも。

農村不況から脱して普通の生活を送ろうと上京するも数十の職を転々として今は下水工の池部良。彼が本当に世の中に必要にされたのは戦時中の玉砕用員としてだけだったのかも、というような容赦のないナレーションに震えた。

恋人・岡田茉莉子と待ち合わせのミルクバーに警察官たちが同行していたのを目撃して逃亡。あとで電話で岡田茉莉子にそのことを問いただすけど、口ぶりからして彼女を全く疑っていないのが面白かった。ちょっと頭が弱いんじゃないかと。

自首しようと仕事の同僚・志村喬と警察署の前までやってくるも、逮捕されて暴れる他の犯罪者を見て、逃げ出してしまうのが何考えているのか分からなくて面白かった。今さら怖くなったとは到底思えないし。

そしてクライマックスは子持ちのババア娼婦・三益愛子との出会い。
クズ人間同士何でも話そうよとの優しい言葉にコロッといった池部良が強盗殺人のことを話すと三益愛子の態度がコロッと豹変。クズはクズでもあんたみたいな犯罪者じゃないんだよ!と罵られて池部良は絶望……これまた容赦のない最高のシーン。

しかし、絶望して部屋を飛び出す池部良の背中に向かって「(自殺とか)短気おこすんじゃないよ!」とまた優しい言葉を投げかける三益愛子もまた何を考えているのかが分からなくて素晴らしい。

「(出来心で罪を犯した池部良よりも)3年も共働きしても四畳半の部屋を借りることさえ出来ない世の中が悪いのよ!」と警察署で生意気な演説をぶつけど、二十歳の岡田茉莉子はまだ女優さんという感じではなくアイドルっぽい。そのことによって岡田茉莉子にも何考えているの?感があった。

ベタな藤原釜足の人情オチもこんな救いのない話に咲いた一輪の花のようで最高でした!