一粒の麦の作品情報・感想・評価

「一粒の麦」に投稿された感想・評価

「上野に着くのは朝6時だから皆ぐっすり眠るように!」って、そんな列車の90度の椅子でどうやってぐっすり眠れようか

金の卵。冒頭、動員される様子はさながら学徒出陣のよう。東京から故郷に届く手紙も戦地から届く文面に似ている。みんな工場のラインに送り込まれるのかと思いきや、蕎麦屋やら家政婦やら自動車修理工やらもいたりして。そして「月1500円しかくれねーだす!夜学にも通わせてくれねーし、約束が違いすぎるだす!」と訴える卵

実際のところ逃走卵があとを立たず、上野駅には逃亡防止の監視員が立っていたという話を聞いたことがある。高度成長期ってのはこんな状況に支えられてたのね。逆に言うとここまでブラックしないと成長なんて難しいんだろうな、しみじみ。

卵たちも大変だが、その働き口の斡旋と、就職後=卒業後のアフターケアまでする菅原謙二先生も大変。需要と供給で袖の下まで飛び交う光景を見て「就職係なんかやってらんねー」感

タイトル「一粒の麦」とは、イエス様が過越祭の直前に話したたとえ話。つまりもうすぐ処刑される時のお言葉。ひと粒の麦は地に落ちなければひと粒の麦のままだが、地面に落ちることで(犠牲になることで)そこから豊かな実をつけるようになる、とかなんとか。

言わずもがな、卵たちもそれを支える菅原先生も立派な一粒の麦。しかし誰かの犠牲の上に成り立つ社会ってなんなんだ。

若尾文子「真の教育者になって欲しいわ」
菅原先生「進学組だけが生徒じゃない!」

いつ見ても若尾文子の包丁さばきはうまいなーと思う。本作でも台所で大根トントンやってた。当時の女性からは当たり前のレベルなのかもしれんが。

オバケ煙突モクモクの東京の空と、福島の雪景色
留

留の感想・評価

4.0
開巻「一粒の麦もし死なずば」というフレーズを繰り返す、オルフじみた合唱にどうなることかと心配したが日本映画の良心と呼びたい立派な作品だった。
福島県からの集団就職がテーマだが「三丁目の夕日」などとは志が違うし、1958年の東京の風俗、街の風景(皇居周辺、銀座、国鉄)等すごく興味深い。
貧富の差による教育格差、格差社会の到来、中小企業の苦しさ、政治屋、マスコミの醜さ等をさりげなく描く。
そんなに見せ場はない若尾文子がとてつもなく美しく、本当に輝いている。特に菅原謙次と川岸を歩くシーン、空の青、山の緑、川の清冽!菅原の「福島の町でも一つデパートが出来ると小売店がバタバタつぶれる。」というセリフは3/11を経験した身には原発のことさえも思い起こさせる。
人間は経済や効率だけ考えていていいのか?
特筆大書せねばならないのは上京した中学生達。今どきのタレントには絶対に出せないものをみんな持っている。自動車修理工になった少年の妹役など美形とは対極の容姿。
結局、主人公は菅原謙次や若尾文子といった美男美女の演技経験豊富な俳優ではなく彼ら10代の若者たちである。就職組の技術の実習がうるさいという進学組の数学教師に菅原が「進学する子だけが生徒じゃない!」と怒鳴るとこで涙滂沱。
ラスト、就職担当をずっと辞めたがっていた菅原が校長の東野英治郎に「今年も就職担当させて下さい」と訴えるシーンでは号泣。若尾が願っていた本当の教育者の誕生。
菅原謙次&若尾文子では「青空娘」の100倍素晴らしい。
Jimmy09

Jimmy09の感想・評価

3.5
2014年9月13日、神保町シアターにて鑑賞。 
若尾文子出演の未ソフト化映画だったから観に行った。 
冒頭の出演者リストでは主演扱いで、確かに物語の面でも主役っぽいが、実際の主役は農村から集団就職した子供たちだった気がする。

若尾文子の魅力も充分にフィルムに焼き付けられていたかというと疑問である。

音楽:池野成の特集ということで、確かに「冒頭の麦穂アップにかぶさる音楽…♪多くの実を結ぶべし~~♪」などは印象的であった。 

珍しいタイプのオート三輪、(他の映画でも良く登場する)オバケ煙突などなど、昭和の風景をカラーで見られる。
Jumblesoul

Jumblesoulの感想・評価

2.0
中卒集団就職残酷物語。専用臨時列車に乗って上京したが、一年後には殆どが転職等で苦境にという何ともせつない話。若尾文子は中学校の教師役で出番は多くはない。フィルムの保存状態が悪かったせいか、音声が劣悪なのが残念。
Kumonohate

Kumonohateの感想・評価

4.0
福島から集団就職で上京し懸命に生きる中学卒の若者(金の卵)たちと、ことあるごとに上京しては彼らを支える中学教師の話。

登場する若者達は、15歳そこそこで右も左も分からない異境の地に夜汽車でやって来て、低賃金で重労働の町工場で働き、将来の不安を抱えながらその日その日を生きている。一方、夢だの希望だのを堂々と口にして、(結果はともかく)堂々とその道を歩いて行ける現在の我々のなんと幸福なことか。

…と、素直に思える良作。そして若尾文子がやはり美しい。
notitle

notitleの感想・評価

3.8
50年代、
大きな夢と希望を抱き、
集団就職で上京する、
少年少女のお話。

決して、あまくはない。
現実の壁にぶつかり、
時には潰れ、
試行錯誤しながら、
強く成長してゆく姿が印象的。

軽薄になった、現代とは異なる、
力強さと、優しさを感じた。
強く生きようと思ふ。

若尾文子美し。
青二歳

青二歳の感想・評価

3.9
集団就職をテーマにした映画!from 福島!タイトルは聖書。新共同からとると、ヨハネ福音書「はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ。」イエスが死ぬことを受容している宣言というか、自分の死が意味あるものであり、のちに実を結ぶことを知っていて、犠牲を恐れていないかのような一節。エルサレム入りした時の言葉、ゴルゴダ行きのフラグが立ちまくってる時の発言です。強がり発言にしか聞こえませんが、まぁそんな言葉です"一粒の麦"。

閑話休題。この映画は若尾文子可愛い盛り!ってことが見所…というばかりでなくもうひとつ意味がある。1958年で新藤兼人脚本なんですね。のちに永山則夫事件で再び集団就職に焦点をあてる訳ですが、新藤兼人はこの映画に出てくる福島の中学生たちと永山少年(49年生まれ)を重ねることはあっただろうかなと考えます。

1958年当時の15歳となれば、戦中43年生まれ。その少年少女が臨時集団就職列車に乗って東京に向かう。映画はその就職先でのドラマが各様に展開。やや感傷的な演出が目立つものの…よく出来た映画です。
例えば初っ端の臨時集団就職列車の異様さ。そして国鉄ホームで流れる福島県知事(?)かなにかの激励がオープンリールのテープで繰り返されているシュールさといい、その後も随所にゾッとするセリフや小物が散らばってるんですよ。

果たして経済成長を支えた彼等は一粒の麦だったのでしょうか。現代の日本のこの生活水準を享受する度に先人に感謝を送ることは無論忘れられない。けれど犠牲なのか。このタイトルはなんの意味をもつのか。