充たされた生活の作品情報・感想・評価

「充たされた生活」に投稿された感想・評価

Marrison

Marrisonの感想・評価

3.9
有馬稲子ファンか羽仁進監督のリスペクターじゃなければ、この重っ苦しい映画はキツイだろうなと思った。私は有馬物なら全部イケる口だ。
どんなカビ臭い凡作でも彼女がスカーフ巻けばその映画観た私(たち?)の目的は二、三割果たせちゃう。ましてや、これは(“新々安保体制“ともいえる自発的対米隷従の全体主義まっしぐら政権の今となれば)歴史的意義ありすぎの、羽仁さんお得意のドキュメンタリー風味挿入60s渾身社会派作品。
スカーフサービスはまあおいて、あの時代の「曇天気分」「詰めの甘さ」「翻弄されつつも泳ぎきろうとする気高さ」を人形としてじゃなく流動的な一人間・一女性としてヌメヌメと表現しきった有馬さんの、皮膚呼吸が常にスクリーンから迫ってくる感じ。期待通りに、心配通りに、覚悟した通りに、重い。
別れる夫(アイ・ジョージさん)との微妙なやりとりは、リアルじゃないけど“ファンタジックなリアリティー“があってちょっと安心できた。
落ち着き先となる劇作家役の原田甲子郎さんは、今に至る邦画の軟派オトナ男優の典型といえる風貌。私的には△。
一瞬か二瞬登場したデップリな猫は、イイ人(田村高廣さん)よりもスター的美人(大場ゆかりさん)よりもさらに甘い目薬。
音楽は、もうちょっと意欲的にかぶせられなかったか? 本家ヌーヴェルバーグの諸作品みたくモダンジャズがひっきりなしにタンタンタンタン打って吼えたりしていれば、退屈度が減ると思うんだけど。
主演女優か監督で選んだ人以外にとってはやっぱり……屈(かが)んだままの映画かもね。

岸政権下の安保騒乱の評価については、孫崎享ぐらいは当然のタシナミとして読んでる人とじゃないとまともには語り合えないので、ここには長々書かないけど、一言だけ。────全学連の人の「今後10年間の日本を左右する重大局面」というセリフは、悲しい見当違いだったね。100年後まで続く禍根(密約つきで属国扱い完全固定)が残ってる。
役者の切実さが、その強さゆえに風雪に耐え、むしろノイズになってしまうという。
tjr

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3.5
とにかく有馬稲子がタイプすぎて困った。
室外の音を強調したりゲリラ撮影してみたりで自然体な演出を狙ってるようだが、逆にそれが作為的に見えあまり成功してるとは思えない。
アイ・ジョージのウジウジさには好感が持てる。
菩薩

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4.2
煌びやかに飾られたショーウィンドウに映る、結婚3年目、4日間夫が家を空けている妻の疲れきった顔。充たされない生活から、充たされた生活へ、1人になっても続く虚無、その欲求不満の矛先として向けられる安保闘争、これは現代の己の人生が一つもままならないことを全て「アベノセイ」との呪文で片付けようとする成果なき自称意識高い系の心情と共通する部分がある気がする。どこまで行っても己の人生が充たされる事は無いと心の奥では悟りながら、それでも少しながらの冒険と確固たる安心感を求め葛藤する人間の姿。にしたって有馬稲子の存在感がおっそろしい、序盤のアイ・ジョージに抱かれ9割方お乳がポロリしちゃってる感じやら、砂浜・水着着用時の前屈みによって零れ落ちそうになる推定Dカップ、とりあえず一発ヤリたいだけのアイ・ジョージをすんでのところでかわす艶めかしさ、エロい、エロすぎるぞ稲子、度重なるクローズアップにも余裕で耐えうるどころか全てがサービスカット。結局己1人では国が変わらぬ様に生活も変わらぬし、もし変わるのであれば内的より外的要因の方が大きい、それでも晴れやかな笑顔の先に稲子の充たされた生活は待っているのだろうか、人生は手に入るものより入らず諦める物の方が多く、手に入れても失う物の方が多い。
有馬稲子ってこんなに綺麗な女優さんだったのか…。安保が絡んでくる後半が怠いけど、それ以外は結構好き。カメラが「そこにある」ことが意識された撮影が羽仁進っぽい。石黒先生が早朝歩くショットとか高架下のわずかな隙間から光が漏れ出ているショットとか所々ハッとさせられるショットがあるのにビビった。ラスト、有馬稲子が生き生きした顔しててなんか自分も頑張ろうと思えた。
mingo

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4.0
都民900万人をエキストラに撮る!と意気込んだヌーベルバーグ色強しノーメイク水着姿の有馬稲子が拝めるアイドル映画の傑作。
1960年の安保闘争時代の日本人の思想や行動が描かれている作品でもあり、まだ自分たち自身で国の進路を変えられると信じていた時代の日本人が活写されているのに胸が熱くなる。おれは今の日本に何か出来ているのか。

羽仁進の変わらずのドキュメンタリータッチの自然体の演出と、アップが続くヒロインの視点で軽やかに動き回る長野重一のキャメラが等身大の共感覚を生み出していて、武満徹の音楽も登場人物の心の動きをフォーカス!染み渡る。

有馬稲子本人めちゃめちゃ元気で、先日の司葉子といい、往年の女優さんはしゃべりが「粋」だ。もうほんと最高。撮影1日目にラブシーンだったらしく、その恥じらいさえ感じさせない意志の強さが印象的。そして本来はもっと色んなシーンがあったらしく、あまりにもカットされててショックで舞台挨拶後帰ったという逸話も聞けて良かった。アイジョージのダメ男さも見どころ。
羽仁進の演出に負けない、全身全霊を注ぎ込んだ有馬稲子の存在感に5点。アイジョージ、田村高廣、あと演劇の先生、3人とも全員喰えないオトコなのが最高だし、最後選ぶ相手が結局先生なのも、まるで喰えないオンナな有馬稲子。人生は続く。
tokio

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3.8
Rec.
❶17.07.15,シネマヴェーラ渋谷/羽仁進レトロスペクティブ(有馬稲子トークショー付き上映)
tk33220

tk33220の感想・評価

2.0
ヌーヴェルヴァーグ気取りの窮屈なクローズアップが連続する画面がつまらない。
3104

3104の感想・評価

3.9
原作ありのフィクションだが、そこかしこに伺えるドキュメンタリータッチの演出が独特の質感を醸し出している。

一見〝充たされた生活〟に見えるが、拭いようのない虚しさを抱える主人公・朝倉じゅん子を演じるは自ら映画化権を獲得した有馬稲子。
前半は彼女の〝充たされない生活〟が描かれる。ここでのじゅん子(自らを名前で呼ぶ口調が妙になまめかしい)の彷徨、焦燥のようなものがとてもいい。有馬稲子は不幸な表情のほうが魅力的だ。スタイリッシュな服装やなぜか水着姿と、様々な彼女が観られるのもいい。

後半は60年安保闘争という「時代の風」が大きく採り入れられ、物語の質感や方向性も変化していく。これについては賛否両論かもしれない。それにつれ劇団内での描写が増え、ついにはじゅん子はそこで〝充たされた生活〟を手に入れる。彼女にとっては望んだ道だが、映画的にはどこか盛り上がりに欠ける帰着の仕方である。

聞けばこの映画、少なくとも30分はカットされたらしい。それを聞いたからそう思うのかもしれないが、明らかに説明不足、描写不足の部分があるように感じた。102分という上映時間は適切なのかもしれないが、少し残念なところでもある。


余談:劇中の60年安保の自然成立日が6月19日。この映画を劇場で観たのがその55年後の6月19日。たまたまである。