鰯雲の作品情報・感想・評価

「鰯雲」に投稿された感想・評価

戦後の農地改革、本家分家、嫁入り、戦争未亡人、二号、今時の若者。盛りだくさんな要素をまとめあげる橋本忍の恐ろしさよ。これを成瀬が見事に描ききる。一流にはかなわない。俳優陣も一流。超豪華。
成瀬のよろめきシーンはお見事!
からみがないのにエロすぎる。

淡島千景の好演がひかる。

あまりにも複雑な人間関係についていけない自分が悲しい…。
cinemaQ

cinemaQの感想・評価

4.5
中村鴈治郎の田舎オヤジがたまらん。子どものためにと色々動いても子どもはどこ吹く風で自分の人生を生きようとする。
淡島千景と木村功のメロドラマも最高。赤と青の照明!
エドワード・ヤンの危険信号ネオンカラーライティングまで成瀬巳喜男からの引用だったとは。かと思えばここでもまた突然のアンパン差し入れがあり、小津を見る。
初めて結ばれる不倫関係は省略され、次に部屋へ招かれた時に漸く暗闇へ落ちたキスが描かれる(しかもそれがあたかもファーストキスであるかのように)。普通ならこの順序を逆にしてしまうところを、却ってこの手順を踏むことにより、彼らの関係が最早引き返せないエモーションに到達してることを目の当たりにさせられる。
彼等の関係は同時にタバコの火をつけてあげていた関係から自らタバコの火をつけることへの変化としても語られている。結ばれあう理由をなくした2人がこれから積極的に自ら会合することを口では語っているのに、タバコの受渡しは最早存在せず、記者だけがその儚い時間の終わりを宣告しているようにしか見えない。
モダンなカップルの交際も見事。指切りをしたその動作で相手の手を自分の胸元へと引き寄せるなんてキザすぎるぜ!!
たくさんの雲が風によって揺れ動くおはなし。

きれいな八重さん(淡島千景)と老けてる甥・初治(小林桂樹)のせいで、年上年下メーターが早々に故障。

また、登場人物が多くて関係が複雑である事と、それらの説明をしてくれる存在がそれらの"中"にいる人であった事で、始めは人物相関図をまったく描けなかった。



物語の主軸でもある、古い思想と新しい思想の争いは、大抵古い側が新しい側を弾圧することで、古い側を憎むようつくられやすい。
今回も始めはいつもの構図だけど、ある辺りから当たり前に新しい側が勝つもんだから古側が不憫に思えた。

他にも様々な人間模様が見られる。
それら全てがまるでハブ空港のように一つの家族に繋がっていて、始めの方にも書いた通り、人の絡み具合が複雑すぎるのだが、これが面白かった。


楽しく切なくめでたい群像劇、鰯雲。
ラストシーンがじわりと胸に沁みた。
女優が豪華。小林桂樹は百姓のなりが板についてる。
「家を出て一緒に暮らすなんて二人で相談したのか?」「他人がしてくれるかい」というやりとりにはっとさせられる。中村鴈治郎の顔つきはなんとなく村上春樹に似てる。話としては、没落地主という面でフォークナーの描く南部的でもあり、時代の変わり目で引き裂かれるという面でヴィスコンティの映画っぽくもある。
3sk

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4.2
季節の移り変わり、時代のうつろい、時間経過の表現が素晴らしい。それは各時間における場所の特徴を、人の姿形を丁寧に拾い上げているからだろう。ドラマにもうドキドキしながら見ちゃって、あーもうダメーーってなった。群像劇なのに全てが繋がっていて、広い世界の小さな環のまとめ方が巧みだった。胸キュンがとまらな〜い
うちの近所一帯は農地改革の流れで区画整理事業のハシリが実施された地域らしいんですが、いまだに地主一族が何をするにも本家に話を通さなきゃ、分家がこんなことしてるなどと騒いでて60年後でも大して変わってないみたいだなと思った。もう畑はほとんどないけど。
どう見ても日本、というか昔の厚木なんだけど、各世代の恋愛・婚姻関係が絡み合い、ストーリーと関係性だけでいえばヨーロッパ風に感じた。男女の潮目、赤と青の点滅がやらしくてうわーと身をすくめる。それぞれのストーリーがよくて、まだ到達してない境遇でいえばいつか年取ってあんなふうに元彼とお燗つけたら楽しそう。
長い目で見れば、厚木は農地に向いてる土地なんだし環境インフラとしても田畑残しておけば良かったのにと未来人としたら思うばかりだが、そんなの当時の人たちは知らんよね。と縁側に佇むガンジローの姿みて切なく悔し泣き。
h

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3.0
なかなか観られない後期成瀬の一本 。
関東郊外の、かつての地主だった農家の一族の没落と、彼らが土地に縛られて時代に取り残された感じがよく出てる。デコちゃんは出てないものの、オールスターキャストで埋もれてるのがもったいないし、増村の『美貌に罪あり』なんかより、安定感がある。
doi

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4.5
新婚夫婦に初夜の床を提供するのがものすごく手の込んだ遠回しなイヤミに見える新珠三千代、あの村界隈でいちばん洗練されているように見えた人が…という下世話なショックがあって良い。横浜や湘南出身の人間が内陸部を指差してゲラゲラ笑いながら見るための因襲の映画。淡島千景の新しい耕運機を見た小林桂樹の感想は「痩せ牛の尻叩くこたねえなあ」。
AS

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4.0
新時代の幕開けとも言うべき過渡期において、順応に苦しむ鴈治郎の佇まいが何とも寂しげではあるが、それでも風上に立ち家族を牽引するのはこの親父なのだからカッチョイイ。酒と聞いた時のあの表情!

没後50年  成瀬巳喜男の世界@神保町シアター