奪命金の作品情報・感想・評価

「奪命金」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

2011年香港。英題"Life without Principle"。金融サスペンス。香港の金融事情とマンション価格高騰を扱ったスプラッタ映画『ドリーム・ホーム』の影響を感じた。時間軸をずらし、銀行員、ヤクザ、警官とその妻がお金に翻弄される長い一日を描く。リスクの高い投資話を売りこむ銀行員、金儲けの期待に目を輝かせる素人、生活保護金目当てで老人が老人を襲う事件、労働者からかすめ取るヤクザ、保釈金目当てでヤクザの逮捕・釈放を繰り返す警察などの中で、ラウ・チンワン演じる義理に篤い極道者が一服の清涼剤のよう。
netfilms

netfilmsの感想・評価

3.7
 金融都市、香港。妻から新しいマンションの購入をしつこく相談されている香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)は仕事を口実にいつも話を逸らす。銀行に勤める成績下位の金融商品営業担当テレサ(デニス・ホー)はノルマ達成のため、中年の女性顧客チェン(ソン・ハンシェン)に、躊躇いながらもリスクの高い投資信託商品を売り付ける。気がよくて人望の厚いヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は、逮捕された兄貴分のために保釈金を作ろうと同郷の投資会社社長ドラゴンに相談する。3人それぞれが金銭の悩みを抱えていたところにギリシャ債務危機が発生し、金融資産が突然の下落。投資家たちは大騒ぎになる。21世紀に入り、トーは香港の様変わりする現状を闊達に描写した。香港のイギリスから中国への返還、SARSによるパニック、リーマン・ショックに揺れるビジネス業界。そこに描かれるのは何の変哲も無い市井の人々であり、香港経済の末端を生きる裏社会の人物たちや、香港経済を牛耳っている人々を階級関係なく描写してきた。今作では登場人物たちは普段はまるで関わり合いのない世界に生きていながら、ギリシャの債務危機により、それぞれの環境が交錯していく。その様子を時系列シャッフルとアンサンブル・プレイで描写する様は、さながらタランティーノの『パルプ・フィクション』のようである。

 金融商品営業担当テレサ(デニス・ホー)は営業成績が悪く、上司に無視され、何とかノルマを達成しようと必死である。そこへ運悪く、年金暮らしの中年女性(ソン・ハンシェン)が現れると、テレサはあの手この手で熱心に売り込む。金融商品の投資話は、後々売った売らないで話が揉めるため、契約書の他に、会話の内容まで録音している。お金に差し迫られた中年女性と、ノルマに追い詰められたテレサの間柄では、どんどん話が進んでいくのは止むを得ない。中年女性はあまり内容を把握しないままに、契約書にサインをしてしまう。それが後々、不幸を巻き起こすことになる。ヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は昔ながらの仁義を重んじるヤクザであり、最近流行りの経済ヤクザや情のないチンピラとは一線を画す。当初は逮捕された兄貴分のために保釈金を懸命に作ろうとかつての仲間を頼るも、警察のヤクザ一掃作戦により、すぐに資金繰りに困窮する。最後の頼みの綱として、同郷の投資会社社長ドラゴンに相談するが、最初は気のいい返事だったドラゴンも、ギリシャ債務危機の発生により、万策が尽きる。もともとパンサーには2人の舎弟がいたが、彼らは金の工面に困るパンサーの姿を見て、すぐに足を洗ってしまう。ここにも21世紀のジョニー・トーのヤクザへの思いがしっかりと顔を出す。イギリスから中国への香港返還を経て、ヤクザのあり方が180度変わってしまったことを示す象徴的な場面である。
G行為

G行為の感想・評価

3.0
ジョニー・トー版ウシジマくんのような金融サスペンス群像劇。
殺傷沙汰が絡んだりするけど、とはいえ単純な幸・不幸なオチにしないところが、ジョニー・トー節でしょうか。

明らかに了解できていない婆さんに「了解しました」と言わせる投資商品マニュアル。
「だってお金が欲しいんだもの」と、お婆さん。
そんなシーンに象徴されるように、香港では老人もヤクザも銀行員も金貸しも、誰もが金儲けへの執着心を標準装備してそうなイメージが確かにありますね。
旅行に行っただけでは分からない、これも香港の風土なんでしょうか。

しかしフィリップ・キョンに刺さってたアレって普通に貫通してたでしょ。それでよく車を運転したもんだ。
というか、あの状況でなんでチンワンが運転しないんだ?w
LEE

LEEの感想・評価

4.2
なんというかレビューが書きにくい作品
見終わった後あ〜面白かった!という愉快な作品では無い
まぁ冷静に見ると幸運が重なってハッピーエンドっぽくなるわけだけど後味はスッキリ!というわけではない
でも絶対に嫌いにはなれ無いというか好きな作品(ジョニートー映画はそんなのが個人的には多い気がするけど

香港人と関係の深い金の話を香港を愛す彼が描くのは必然だと思うし実際お話の展開にも惹きつけられるものがある
時間系列を入れ替えることによって殺人に隠された真実が明らかになっていくシーンはゾクゾクせざるを得無いしキャラもどれも魅力的でよかった
でもこの映画は義理を重んじるラウチンワンが金にまみれたこの世でうまく生き延びる話かと思ったら違う
事の顛末を知っている観客からみたら詐欺をしているようにも見えてしまう銀行員や棚から牡丹餅でお金が入ったリッチーレンの奥さんなどもラストはハッピーエンドを迎えていてこれが僕の中のモヤモヤになっているんだと思う
しかしこれは金融の世界は善悪も関係なくあるのは勝者と敗者だけというテーマを物語っているんだと思う(個人的にはそこが中々受け入れられなくてモヤモヤしてるんだけども…確かになぁとは思う

リッチーレンはもっとストーリーに絡んで欲しいなぁとは思ったがいい作品だと思う
ジョニートーはやっぱりすごい!

あとラウチンワンの兄弟分はラジオ聞いてないで病院行けよ(笑)
daiyuuki

daiyuukiの感想・評価

4.2
金融都市、香港。妻から新しいマンションの購入をしつこく相談されている香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)は仕事を口実にいつも話をそらしていた。銀行に勤める成績下位の金融商品営業担当テレサ(デニス・ホー)は、ノルマ達成のため、中年の女性顧客チェン(ソン・ハンシェン)に、躊躇いながらもリスクの高い投資信託商品を売り付ける。気がよくて人望の厚いヤクザのパウ(ラウ・チンワン)は、逮捕された兄貴分のために保釈金を作ろうと同郷の投資会社社長ロンに相談する。3人それぞれが金銭の悩みを抱えていたところにギリシャ債務危機が発生し、金融資産が突然の下落。投資家たちは大騒ぎになる。大陸マフィアの金を流用した投資に失敗したロンは、その穴埋めのために高利貸しのチャンから金の強奪を計画。パウはその計画を手伝う羽目になる。内緒でマンションの仮契約をしていたチョン警部補の妻は、返済に不安を感じていたところ、テレビニュースで夫が犯人と一緒にエレベーターに閉じ込められていることを知る。顧客からのクレームが殺到するテレサの元に1000万香港ドルを下ろしにやってきた高利貸しのチャンは、顧客の担保が足りないことに気付き、書類にサインをしないまま半分の金を残して帰ってしまう。チャンが携帯を置き忘れたことに気付いたテレサは後を追うが、駐車場の車の中で血まみれになっているチャンの姿を発見。デスクに残されたチャンの500万香港ドルをとっさにキャビネットに隠す。金融パニックに巻き込まれた彼らに、いかなる運命が降りかかるのか……?
ギリシャ債務危機により起こった金融危機により天国と地獄を味わう3組の人々のドラマ。
マイホームやローンに追われる警察官、巨額のノルマをこなすために年寄りの貯金や年金を高リスク高配当の投資信託に投資させる金融商品担当銀行員、兄貴分の保釈金を稼ぐために危険な投資仲介するヤクザ、それぞれが物価高や福祉の貧弱さ経済の冷え込みが原因の先の見えない今から脱出するために危険でルールや義のないマネーゲームに踏み込み天国と地獄を味わう3組の群像劇は、自分たち一般人の誇張した姿そのもの。
香港に蔓延るルールも義もないマネーゲームとそれに狂奔する人々に対する批判と風刺を込めたジョニー・トー監督の異色作で、ジョニー・トー監督が銃撃戦がない映画を作ってもスリリングであることを証明した作品。
aaaaa

aaaaaの感想・評価

4.1
ジョニー・トーが描く金融サスペンス。
ラウ・チンワン主演。

正直金融商品とか資産運用とかあまり詳しくなかったけど、強欲と金の魔力に取り憑かれた香港人が、どんどんドツボにハマっていく様はなかなか凄かった。

銀行員もリスクの高い金融商品を、軽く詐欺まがいの様に老人に売りつけていて、本当に簡単に手を出すもんじゃないなと、非常に勉強になりました。

香港と言えば何と言っても金融都市。
結構若い人でも株やってたりするそうです。日本だとあまり大っぴらにする雰囲気じゃないですね。てめえで働いて稼げ!って国なので。

それにしても、一年に何本映画に出ているんだ? フィリップ・キョン! 心臓になんかぶっ刺さってるのに、カーチェイスする所は笑いました。笑

デニス・ホーが、アイス食べるラストはなかなか清々しくて良かった。何故かクセになる映画。
こういう3つの話が交差するの大好物だけど警察官のエピソードがつまらない。老後の貯金を賭ける婆さんの「了解しました」が印象に残る。
面白かった!ハラハラしつつ、笑えるシーン有り。ラウ・チンワンの小悪党いいな。瞬きの数異常に多い。
みんなが損するときは、儲けるチャンスなり。「国が生まれる時よりも、滅びるときの方が儲けるチャンスだ」ってレッド・バトラーが言ってた…、確か。
bow

bowの感想・評価

3.8
お金にまつわるあれこれの話でした。小さな話しが絡み合うような展開で面白かったです。
jnk

jnkの感想・評価

3.8
群像劇だしドンパチないしジョニートーっぽさないけどその分のステータスをブラックな笑いと皮肉に振ってて緊張感もある。
三者三様のラストはどれも胸を打たれるし後から考えたら意地悪な話だなと思える。
金の呪縛から逃げられない人間の極致をそれぞれの視点で見せて群像劇の効果が何倍にもなってるし謎のカタルシスもあった。
社会の欠陥とそこで生きていくしかない個人の弱さ、冷笑するだけじゃなくて可笑しみを込めてるあたりに優しさを感じる。