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大統領のケーキの作品紹介

大統領のケーキのあらすじ

祖母と二人で暮らす 9 歳のラミアは、学校のくじ引きで「大統領のケーキ係」に選ばれてしまう。フセイン大統領の誕生日に、お祝いのケーキを準備する係だ。翌朝、ラミアは祖母に連れられて、父の形見の時計と、“友達”の雄鶏ヒンディとともに町へ出かける。だが、日々の食卓も満足に揃えられない祖母の目的はケーキではなく、ラミアを養子に出すことだった。思わず逃げ出したラミアは、自らの手でケーキの材料を集めれば、祖母との暮らしを続けられると信じて、クラスメイトのサイードと協力して町を駆け回る。十分なお金も時間もなく、あるのは知恵と想像力だけ── はたして、“名誉あるケーキ作り”の行方は?

大統領のケーキの監督

ハサン・ハーディ

原題
The President's Cake
公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/presidentscake/
製作年
2025年
製作国・地域
イラクアメリカカタール
上映時間
105分
ジャンル
ドラマ
配給会社
松竹

『大統領のケーキ』に投稿された感想・評価

kuu
3.8
『大統領のケーキ』
原題または英題 The President's Cake
製作年 2025年。上映時間 105分
映倫区分 PG12
製作国 イラク・アメリカ・カタール合作

独裁政権下のイラクを舞台に、小学校で大統領の誕生日ケーキをつくる係に任命された少女の奮闘を描いたドラマ。

1990年代初頭、国連の経済制裁で物資が激減していたイラクの田舎町。
この閉塞感あふれる時代を舞台にした今作は、国家という理不尽な力と、ささやかな日々を送る人々の営みが交わる心揺さぶる作品でした。

画面からあふれ出ているのは政治的な主義主張じゃなく、過酷な状況でも今日という一日を力強く生き抜こうとする人々の温もり。
現地で選ばれた素人キャストたちの飾らない姿が、物語にリアリティと深い味わいを与えていました。
学校のくじ引きで、なんと大統領の誕生日ケーキを用意する役に選ばれてしまった9歳の少女。
卵や小麦粉すら手に入らない困窮した状況で、知恵を絞って必死に駆け回る少女や、彼女を支える人々の表情はどこまでも素直です。
演技の経験がないからこそ出せるその無垢な空気感は直球で、小生の心に響いたし、政治の権威からは遠く離れた場所にある本当の暮らしを生き生きと映し出していました。

自身の幼少期の体験をもとに描いた監督は、インタビューとかでは単に権力を批判するための映画ではないとはっきりと語っています。
政権叩きを目的とするんじゃなく、理不尽のどん底に落とされたとき、人間はいかにして優しさや自分らしさを保ち続けられるのかという点に光を当てているところに、今作の深い凄みがある。
国家のシステムがどんなに理不尽な課題を突きつけても、お互いを思いやり日常を守ろうとする人々の繋がりこそが、この物語の真ん中にあります。

今作を観て強く思い起こされたのは、作家アルベール・カミュが考え抜いた不条理という視点でした。
自分の力ではどうにもならへん理不尽な現実に直面したとき、絶望して諦めるんではなく、その過酷さを受け止めた上で目の前の今を精一杯生き抜くことにこそ人間の本当の気高さがあるのだと彼は云いました。
神からの罰として終わりのない岩運びを続ける男(シーシュポス)の姿は、手に入らないケーキの材料を求めて街を走り回る少女の健気な姿にそのまま重なります。

大統領のケーキ作りという不条理な試練は、個人の力では抗えない社会の壁や構造的な理不尽さを象徴している。
しかし、一見すると徒労にも思える奔走のなかで何よりも眩しく輝くのは、少女を包み込む家族や友人たちの無償の愛やユーモア。
どれほど過酷な世界にあっても、目の前の生を慈しみ、誰かと温もりを分かち合う瞬間の中にこそ、人間としての本当の尊厳と確かな救いがあるのだと今作品は深く伝えてくれました。


1990年代、イラク。国民が戦争と食糧不足に苦しむなか、フセイン大統領は自身の誕生日を祝うケーキをつくるよう、国内の各学校に命じていた。祖母と2人で暮らす9歳の少女ラミアは、小学校で行われたくじ引きで“名誉ある”ケーキ係に選ばれてしまう。ケーキを用意できなければ、重い罰が待っているという。翌朝、ラミアは祖母に連れられ、父の形見の時計と、彼女にとって友だちの雄鶏ヒンディと一緒に町へ出かける。しかし、日々の食材すら満足にそろえられない祖母の目的はケーキではなく、ラミアを養子に出すことだった。とっさに逃げ出したラミアは、自らの手でケーキの材料を集めれば祖母との暮らしを続けられると信じ、クラスメイトのサイードと協力して町を駆け巡るが……。

主人公ラミア役のバニーン・アハマド・ナーイフをはじめ、キャストには演技未経験者を起用。イラク出身のハサン・ハーディが自らの体験をもとに長編初監督・脚本を手がけ、2025年・第78回カンヌ国際映画祭にて、監督週間観客賞とカメラドール(新人監督賞)を受賞した。製作総指揮には「フォレスト・ガンプ 一期一会」などの脚本家エリック・ロスと「幸せへのまわり道」の監督マリエル・ヘラーが名を連ねる。
ぶみ
4.0
名誉ある「宿題」は、甘いケーキを作ること。

ハサン・ハーディ監督、脚本、バニーン・アハマド・ナーイフ主演によるイラク、アメリカ、カタール製作の実話をベースとしたドラマ。
フセイン大統領のケーキ係に任命された少女が材料探しに出かける姿を描く。
主人公となる9歳のラミアをナーイフ、友達のサイードをサッジャード・モハンマド・カーセムが演じているほか、ワヒーダ・サーベト、ラヒーム・アルハジ等が登場。
物語は、1990年代、イラクでは人々が貧困に喘ぐ中、フセイン大統領は自身の誕生日にケーキを作らせる施策が実施されていた旨のキャプションが表示、すると誕生日である4月26日まであと2日となり、給水車に群がる人々が映し出され、国民の困窮具合が窺えることに。
そんな中に、主人公となる少女のラミアと祖母のビビも漏れなく入っていて、水を貰うと、川を手漕ぎのカヌーで進んで行き、河岸では火事も起きているという日本では考えられない光景を見ることができるオープニングとなっている。
その後も、朝になると水上生活をするラミアが、一人カヌーを漕いで通学、すると、彼女の朝食のリンゴを平然と盗み取る教師に、フセインを讃える言葉を連呼させられる学校と、これまた当時のカオスぶりが伝わってきた次第。
以降、学校のくじ引きで大統領のケーキ係を任命されたラミアが、祖母に連れられ、友達とする雄鶏のヒンディと一緒に町へ繰り出し、ケーキの材料を集める様を中心として展開、実は祖母の思惑は、自分では育てられないとしてラミアを養子に出すことであったため、それに気づいたラミアが途中で逃走、祖母のラミア捜しと、ラミアの食材探しが同時並行で描かれていったのは面白かったところ。
しかし、ラミアを捜そうとしない警察に、ラミアと行動をともにする盗み癖のあるサイード、そしてラミアが出会う大人にまともな奴がいないと、当時のイラクの情勢が如実に反映されており、ラミアを思わず応援したくなること必至。
クルマ好きの視点からすると、ラミアが町に行く際に乗せてもらったのが、70年代中盤に登場した5代目のトヨタ・クラウンのバンモデル、かつ、コラムシフトのマニュアルトランスミッション車というレアな仕様であったことに加え、他に町中で走っていたのも、6代目の同じくクラウンや、5代目トヨタ・コロナ、5代目トヨタ・ハイラックスにバスはトヨタ・コースター等、トヨタ車率がかなり高かったのは見逃せないポイント。
ケーキの食材探しというホンワカおつかいムービーかと思いきや、その実態は、監督自らの体験をもとにした、子どもたちが政治に振り回される姿を描く社会派ドラマであったとともに、実際にイラクで撮影されたこと、そして、キャスト全員が演技未経験者であることに驚かざるを得ない良作。

カラスが1羽ならウソを、2羽なら真実を。
symax
3.8
1990年代、フセイン大統領の独裁政権下のイラク…国連の制裁を受け、食糧や医療品が不足し、国民の生活は疲弊していた…

大統領の誕生日まであと2日…祖母と二人暮らしの9歳の少女ラミアがくじで"名誉ある"大統領のケーキ係に選ばれることに…

ケーキの準備が出来ないと酷い罰が待ち受けているのだ…

貧しい暮らしの中、なんとかケーキ作りの材料を集めようと、祖母と町へ向かうが…祖母の目的はケーキ作りでは無かったのだ…

イメージ的に…

"幼い少女のハートフルな冒険譚"

そう思っていました…確かにそういった一面もあるのですが…フセインの独裁政権下で暮らす人々の綱渡りのような日常が丁寧に描かれていて、"ほんわか"というより"ヒリヒリ"とした緊張感と閉塞感が伝わる画作り…外からでは絶対に見えてこない世界観がそこにはありました。

感動作と思って鑑賞すると、思わぬ火傷をしちゃうかも…

登場人物のほとんどが自分勝手…しかも騙し合い、盗み合いが日常茶飯で一瞬も気が抜けない…

雄鶏を小脇に抱え、必死になってケーキの材料を集めまわるラミアの困ったような、悲しいようなその表情は、演技の素人とは思えません。

本作の出演者のほとんどが演技経験のない素人さんばかりだそうですが、そんな事を一切感じさせないくらいリアルで自然な演技で、あっという間に画面に引き付けられていました。

イラク=砂漠とのイメージを持っていましたが、ラミアが住んでいたのは、美しい大湿原地帯…この風景を観るだけでも価値があるかと…

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