怪談累が渕(かさねがふち)の作品情報・感想・評価

怪談累が渕(かさねがふち)1960年製作の映画)

製作国:

上映時間:90分

3.8

「怪談累が渕(かさねがふち)」に投稿された感想・評価

勝五郎

勝五郎の感想・評価

3.5
2016.09.27
三遊亭圓朝作怪談話と言えば牡丹灯籠とこちらの真景累ヶ淵。

金貸しで鍼灸師の宗悦家と深見家のげに恐ろしき因縁の物語である。

話そのものは六代目圓生師匠や八代目正蔵師匠、志ん朝師匠あたりで何度聴いたことか…もちろん音源で、ですけど。

昭和の怪談映画はかくあるべしと言った作りで大変楽しい…まぁ怪談ですから楽しいってのも変ですがね。

私ゃホラーの類は大の苦手なのですが、この時期の日本の怪談映画は観ることができます!
でも、なにも夜中に観なくても良かったかな(苦笑)。

家元からいただいたビデオの中の一本、私の生まれた翌年に大映で撮られた作品。
豊志賀の怖いメイクは抑えめに、むしろ美しさが際立つ形。
この安田公義という監督は怪談映画がお得意だった様です。
大好きな妖怪百物語も彼の作品!

まぁ落語好き、昭和好き、江戸好きにゃあ避けては通れない映画ですね。
有名な三遊亭圓朝の怪談噺・累ヶ淵の何度目かの映画化。
元々「累ヶ淵」の物語は江戸時代からあるし、鶴屋南北も書いてるから、古典怪談の名作の1本だね。
とはいえ原作がかなり長いので、ピックアップした内容になってる。
基本となる累ヶ淵の「親の因果が子に報う」ことは物語の真としてある。

先ずあん摩の宗悦のエピソードから。宗悦に中村鴈治郎!玉緒パピィ怖過ぎです。
座頭で金貸し。江戸時代に幕府公認の高利貸しだった故、実際に恨みも買ってたのかねぇ。
蚊喰鳥でも座頭の金貸しだし、四谷怪談の卓越や有馬猫の龍造寺など、盲目が怖さのアイコンなのが興味深いね。

宗悦の話はプロローグ的に進むので展開が早い。テンポ良く刃傷沙汰になる。旗本の深見新左衛門に催促に行ったら逆ギレされて斬られちゃう。まぁお約束ですな。
斬られても執念深く食い下がる宗悦。『ワシが死んだら娘たちがぁ』って言うけど、明らかに『ワシの金を返せぇ』の方が本音なんだ。金のガメつさが滲み出てて同情の余地も無い。
その業の深い座頭の成れの果て、ただの霊じゃ無いタチの悪い悪霊。それを鴈治郎のあのキャラで発揮される。
新左衛門と女房のお熊が呪い殺されて成仏すりゃ良いのに、そこから話が始まる。

宗悦の娘は、姉の豊志賀が長唄の師匠になり、妹のお園は芸妓になる。
そこに新左衛門の息子新五郎が縁あって豊志賀と恋仲になるっていう因果。

豊志賀が中田康子。蚊食鳥に次ぎあん摩に翻弄される長唄の師匠で、色っぽい熟女。
師匠として凛とした豊志賀が、新五郎に惹かれてだんだん甘えキャラになるのは、本当に堪らん。色っぽ過ぎ。

でも死んだ父ちゃんが許さないんだな。ワシを殺した息子と付き合うのは許さん。 なんと理不尽な。
宗悦が斬られた箇所と同じ様に顔に傷がつき病に倒れる豊志賀。嫉妬深くもなり精神的にも病的になる。
鴈治郎だけじゃなく、中田康子の怪演も良いんだよ。
父の悪意が子にまで遺伝的に受け継がれているかのような禍々しい感じ。
単純なお化けの怖さだけじゃ無い。悪意のビジュアル化。コレが累ヶ淵の怖さの本質だよなぁ。

累ヶ淵の落語自体が数多くの名人に語られ、映画かもされ、コレだけで語れるネタが豊富すぎる。
青二歳

青二歳の感想・評価

4.2

このレビューはネタバレを含みます

続けて中村鴈治郎…ご覧の通り超こわい。1.中村鴈治郎が、2.盲の鍼師(しかも金貸し)で、3.殺された恨みから化けて出る…これだけでこの映画の魅力の半分超。本当えらい役者がいたもんです。原作は明治の名人三遊亭圓朝、創作落語"真景累ヶ淵"より上段。
映画の中核は鍼師の娘世代なので、若手勢もロマンスパートしっかり魅せてくれます。とはいえ記憶に残るのは登場シーンのわずかな中村鴈治郎の恨み顔。だいたいですね、中村鴈治郎ですよ、殺しても死ななそうな爺さんですよ。そら貸したカネを取りっぱぐれたら化けて出ますよ。
脚本がよく長い落語をうまくまとめてます。90分。現代にない脚本と編集といいますか。これを120分とかにしないからこその旨味といいましょうか、コンテクストの味わいが増すものです。