ルージュの作品情報・感想・評価

ルージュ1984年製作の映画)

製作国:

上映時間:95分

4.0

「ルージュ」に投稿された感想・評価

daiyuuki

daiyuukiの感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

女性週刊誌「ツイン」の編集部でカメラマンの勉と記者の引田が「ルージュ」と題された裏ビデオを見ている。コピーにコピーを重ねた不鮮明な画像を通しても、そこに映された女は美しかった。何者かが、この女を知っている、情報を買わないかとタレ込んで来たのだ。編集部はこの女を取材することを決め、彼女の住む横浜のマンションを訪ねた。前野陽子(新藤恵美)と表札のある部屋の女は、勉たちの意図を知るとにべもなくドアを閉めた。数日後、女から取材に応じると電話が入った。女の話によると、彼女は大手広告代理店の制作局長夫人であったが、夫が目をかけるディレクター村木(火野正平)がサラ金地獄のカタにビデオを撮ったのだという。勉は女に惚れ、デートを重ね編集部に写真の提出を拒んだ。見かねた引田は勉を横浜にある場末のバー「サガ」に連れていくと、そこには女と、彼女を騙した村木がいた。女の名は土屋名美という。数日後、どしゃぶりの雨の中で勉は店から出て来る名美を待っており、彼女にジッポのライターをプンゼントするのだった。名美は勉の好意を受け入れ、二人は唇を重ねる。村木には名美の他に明香という愛人がおり、クラブのママをしている彼女も村木との希望のない愛に疲れきっていた。明香は、村木と名美の部屋で「ルージュ」のビデオを見ると、そこに映っているのは、名美の恥態ではなくて、村木が撮った名美の美しいCFと、彼女が犯されるところをかばい、指を切られる村木の姿があった。これを見た明香は名美から村木を奪うことをあきらめた。名美のバーに夫の土屋が現れ、離婚届と金を投げ出すと、激しく彼女をののしる。村木も客たちをたきつけ、名美をからかう。夫や村木に絶望した名美は勉を探し、ホテルで食事をする。酔った勉が眠ってしまうと、名美はホテルを抜け出し、バーにいる村木を包丁で刺した。名美は血に濡れたライターを取り上げる。勉が目覚めたとき、名美はホテルに戻っていた。テレビのニュースで村木の死を知った勉は彼女をオートバイに乗せて海に向かった。名美の泳ぐ姿を見ていた勉は、側にあったライターを手に取ると、まだ固りきらない血が付着していた。あわてた勉は海に向って名美の名を叫んだ。うしろから「どうしたの」と言う笑顔の名美がいた。
石井隆の原作を映画化した切ないラブストーリー映画。火野正平が演じる村木は、ねじれたやり方でしか名美を愛することが出来ないのが、後の石井隆監督作品「ヌードの夜」で根津甚八演じた行方のような色悪的な村木なのが、石井隆ファンにはニヤリとさせられます。クライマックスで明かされる村木と名美の切ないすれ違いは、切ない。
失意のどん底まで落とされた元恋人(火野正平)の報復行為により、強姦の様子をビデオ撮影させられた女性(新藤恵美)が、被害者への突撃取材を企画している記者(北詰友樹)に癒やしを求めていく。社会的底辺へと堕ちた男女の、引いては返すの機微を描いているロマンポルノ。

石井隆脚本・原作なので、メインの男女が村木と名美になっている。村木は名美の裏ビデオをダビングして売り捌く、極悪非道な男。その合間に入った記者の青年が、名美の境遇に絆されていくのだが、やがて村木と名美には「堕ちた者同士」の深い繋がりがあることに気付かされる。

村木のゲス野郎ぶりに苛立ちを覚えながらの鑑賞を強いられるが、「石井隆の、村木と名美の物語だから、一筋縄では行かないはず」と思いながら鑑賞を続けると、やはりネタバレ厳禁の展開が終局で待ち構えている。

「緊張と弛緩」の連続性がドラマに訴求力を持たせるというのは、落語家・桂枝雀の弁だが、石井隆作品では「暴力とセックス」が、それに相当する役割を担っている。ネオンの灯りと全裸と雨。若かりし頃の那須監督の大仕事を堪能することができる。
那須監督というと一般的にはヘボ監督として扱われている。
まあ実際ヘボだとは思うが、この映画は好きだ。

暴力と性の地獄にまみれながら、堕ちた世界で生きていく名美。
芸能の世界で栄光を手に入れられずに落ちぶれた男。地獄を彷徨う2人。
新藤恵美のムチムチ名美は、『フリーズ・ミー』の井上晴美と一緒で「名美」の中でもたくましいグループに見える。
だからこそ楽しげな若者達を観て「いーなー…あっち」と呟くシーンの切なさや、ラストの惨劇が引き立ってくる。
ちなみに、名美の元夫役を土屋嘉男が演じている。この人は一体どんだけ嫁を寝取られているのだろう…

ところで、火野正平と新藤恵美がバックでセックスするシーンはもしかして本番をしてらっしゃるのだろうか。
AKIRA

AKIRAの感想・評価

4.3
日活ロマンポルノという枠で括られちゃうのもったいないよな〜男と女の切ないメロドラマが秀逸過ぎる。

このレビューはネタバレを含みます

映画『デビルマン』により散々叩かれた挙げ句、病により鬼籍に入られた那須監督。だが初期の監督作『ルージュ』は、柳下毅一郎先生がオールタイムベストに選出しているように、傑作多きロマンポルノの作品群の中でも傑出して輝いていると思う。原作は石井隆先生の「奈美シリーズ」であるが、石井原作の映像化の中でも群を抜いて魅力的に思えた。
 物語自体は裏町が舞台のメロドラマであり、夜の世界、性や水商売を生業とするものたちの「哀愁」や「愛の葛藤」が丹念に描かれている。
 冒頭の掴みも素晴らしくカッコいい。『ヨコハマBJブルース』のメインテーマ、松田優作の歌う「YOKOHMA HONKYTONK BLUES」がかかるのである。
 主人公は風俗雑誌でカメラマン記者をする若い男。素人ものの元AV女優をインタビューする企画に携わるのだが、彼の直属の上司役が関東の漫才ブームを牽引した「セントルイス」の星ルイスであり、「こういう人いそう」と思わせるなかなかの乱暴な編集者ではまり役だ。
 「ルージュ」といういわく付きのアダルトビデオ(作中レイプは現実に起こったものであった)に出演している年上のバーのママ、奈美を密着取材することになった主人公は、あろうことか彼女に懸想してしまう。
 だが、主人公は既婚者(彼を引き留める童顔貧乳のロリータ的新妻が可愛い)。しかも、奈美は奈美で、村木という元CMディレクターのゲス男に利用されている。こいつが奈美を食い物にするとんでもない癖者で、いわゆる「ヒモ」のクズ野郎だが、奈美はどこか憎めない浮ついたダメ人間のなけなしの愛を絶ちきれないでいるのだ。
 やがて、引かれ合う主人公と奈美は選択を迫られる……。
 ちなみに、奈美役を演じる新藤恵美は村木役の希代のプレイボーイ俳優・火野正平と元恋人という間柄であり、現実とリンクしている点でキャスティングも挑戦的と思える。
 だが、なんといっても、魅力的なのは火野正平だ。全盛期から落ちぶれ、裏切られ堕落していった者の哀愁を滲ませている。曽根中生監督の『天使のはらわた 赤い教室』における蟹江敬三の悲哀とはまた違った灰汁の強いものであるが、まさに怪演と言っても良いほどの凄まじい迫力である。
 また、セックスの臨場感のある音など、濡れ場がきっちりと濡れているところが、かなりリアルだ。
 ともかくVHSでしか出てないのが、もったいない。個人的には相米監督の『ラブホテル』より断然こっちの方が素晴らしい。