よしおスタンダード

アルバート氏の人生のよしおスタンダードのレビュー・感想・評価

アルバート氏の人生(2011年製作の映画)
4.0
No.2553
【"表情筋"で演技する、無冠の名優グレン・クローズ】

あ、どうも、「グレン・クローズにオスカー像を!」”自称”推進委員会委員長のよしおです。

なぜクローズはオスカーを受賞できないのか、これはアカデミー賞7不思議の一つなわけですが、

これまで、実に7度候補になっていながら、いまだにアカデミー賞は無冠である(主演候補に4回、助演候補に3回)。

もちろん、賞レースがすべてではない。それはわかっている。しかし、昨今、「実在の人物を演じればオスカーが獲れる”ものまね大会”」とまで揶揄されるようになったアカデミー賞で、本作のような「明確なモデルのいない、創作された人物」を演じきったクローズのような超絶技巧の女優を、もっと評価してもいいのではないか、と思っているのだ。

さて、1988年の「危険な関係」以来、実に23年ぶりのノミネートとなったのが本作。

まさに「表情筋」で演技している!!
表情筋で喜怒哀楽を表現し、表情筋で生き様を見せてくれる。超絶である!!

それなのに、この年は「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のメリル・ストリープにオスカーを「獲られてしまった」。同世代でライバルともいえるストリープにオスカー像をさらわれたことは本当に悔しかったと思う。

そして本作から7年後の2018年、今度は「天才作家の妻 -40年目の真実-」で7度目のオスカー候補になる。

この演技もすごい。この映画では表情筋よりも更に演技の幅を狭めて、もはや「眼球」で演技していると言っても過言ではないような、凄みがあった。

この「天才作家の妻」の時はゴールデン・グローブ賞も獲っていたし、「アルバート氏の人生」と合わせ技一本でさすがに受賞すると思ったが、またしても、まさかの受賞ならず・・(受賞は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン)。

クローズさん、諦めたら試合終了ですよ!!

内容に触れますと、

アルバートが、ヒューバート・ペイジ(ジャネット・マクティア)に出会ってからの「生き急ぎ感」が凄く伝わってきて切ない。ホテルでの仕事っぷりは有能なのに、恋愛も含めた「生き方」は可哀そうなくらい不器用なんですね。

ラストも、次々といろんなものを一瞬で失っていくアルバート。月並みな言い方で申し訳ないですが、「自分らしく生きる」って、何なんだろう、って考えさせられました。

監督のロドリゴ・ガルシアは、ノーベル文学賞受賞の世界的作家、ガブリエル・ガルシア・マルケスの息子。

ガルシア・マルケスといえば、かつて私も『百年の孤独』というぶっ飛んだ小説を夢中で読んだ記憶があります。

ロドリゴ・ガルシア監督はせっかくだから、父の小説を映画化するくらい挑戦的であってほしいなぁ、とは思っています。まぁ、難しいとは思いますが。