喜劇 にっぽんのお婆あちゃんの作品情報・感想・評価

「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」に投稿された感想・評価

今井正監督の鋭い喜劇

冒頭、浅草・仲見世の風景は、昔も今もあまり変わらない。そこで、お婆ちゃん二人(北林谷栄とミヤコ蝶々)が出会う。

場面変わって、老人ホームでは、大勢の爺さん&婆さんが暮らしているが、「今井正監督、よくこれだけの名優を集めましたね」というほどの名優だらけ。

老人たちの愚痴が面白い。特に、渡辺篤の「あいつは昔コジキだったんだ。そのコジキと俺が枕並べているなんて…」には爆笑。その他の話題や風景も、老人独特の場面で歳より臭さが笑える。

小沢昭一や市原悦子、田村高廣、木村功などは、やたら若く見える。
渥美清は、交番のお巡りさん役。
十朱幸代も若い。しかもふっくら系。人情味ある店員役。

今井正監督の映像で良かったのが、北林谷栄の「回想シーンの導入部と終了部を反転映像にした」あたり。なかなか斬新。

(たかがドラ焼き一個なくなっただけの)「ドラ焼き事件」にも爆笑だが、『どうせ、みんな先が長くないんだから助け合って生きなくちゃ』の結論的発言も飛躍していて爆笑。

ただ、こうした爆笑場面を描きながらも、「老いとは」・「家族とのあり方とは」などの老人問題にメスを入れた監督の鋭い視点&描写は見事であった。
ほのぼのとしたタイトルながら、老人のうつなども扱った結構な重喜劇。老け専役者が総出演して、その重い話を語り口だけは優しく描く。タイトルに「喜劇」の文字がなかったようだけど、公開時に急遽つけたのかな。

主演の二人、ミヤコ蝶々は劇中65歳で実際42歳、北林谷栄は劇中72歳で実際51歳と20歳以上の逆サバがハンパなくて後で驚く。

二人がふらつく浅草ロケも見事。

うつな二人が自殺を試みようと相談するシーンで「鉄道は鉄やから固くて痛いやろ。タイヤはゴムやから自動車の方が当たりが柔らかいんとちゃうか」(←うる覚え)みたいな面白いんだけど半笑いしか出来ないような会話があって、その感じが大好きだった。通してそんなジョークが多め。

老人ホームの給食の話で「量を増やせば質が下がる。質を上げれば量が減る。どっちが大事か」と職員が言い合いしている横で爺さんが「質を上げてなおかつ量も増やすのはどうして良くないのか!」と怒鳴るというような社会派ギャグも多い。書いても面白さがまったく伝わらないけど。

「なんで昔は乞食同然だった奴と、立派に働いてきた私が一緒に暮らさないといけないのか!」という不平や、ホーム入園以前の暮らしを見栄張って盛るところなどは教科書どおりの描写だけど、やはり面白い。死ぬ前はみんな似たようなもんになるんだなと。

あと血の繋がらない女性達がひとつ屋根の下で共同生活をするのは、それだけでトラブルの元だというのが映画からすごく伝わった、なんて書いたら女性差別かな。
渡辺文雄の家なんてまさにそう。ミヤコ蝶々(姑)と嫁の間に具体的な諍いの元なんてなさそうだもの。

とにかく60年代の日本映画界には老け専役者が充実し過ぎているなあに尽きる。。
神

神の感想・評価

4.5
養老院メンバーが男女ともに最強。若手側の役者も今や養老院メンバー年齢で何となく気持ちが沈む(明日は我が身)。浅草の風景と鮒忠。
この時代にここまで高齢者を描けるのがすごい。皮肉喜劇の名作!!
高齢化社会を徹底的に風刺した映画。可笑しいけれど、笑ってもいられない、けれど笑ってしまう、一方で侘しい。
北林谷栄をはじめ名女優たちの演技がすばらしい。