四谷怪談 お岩の亡霊の作品情報・感想・評価

「四谷怪談 お岩の亡霊」に投稿された感想・評価

再見。
四谷怪談の映画化には中川信夫版という世界映画史上の決定打があるわけだが、または加藤泰のバージョンなんかも悪くはなかったりするのだが、この森一生の四谷怪談も相当の傑作だ。
早撮りと言われる映画監督は国内外に数多いけれど、それがもはや伝説化した最速の男、だからといって大味ということにはならない、完璧に心得た演出ができるベテラン中のベテラン、森一生。
大映末期の作とは思えない極めて正調の画面、美術、衣装、撮影、ロケーション。
眠狂四郎シリーズ末期や安田道代の女左膳のような色物的時代劇とは全く違うし、かといって深刻さや重厚さといった余計なものもない。
出演者がどう考えてもこの時期の俳優(名脇役にして怪優、佐藤慶が堂々の主演という珍しさでファン必見であろう)という以外は大映全盛期の佇まいの映画といってよい。
四谷怪談映画の中で最もリアルな江戸時代の風景、空気を画面に捉えた作品。
しかしこれは原作に忠実な四谷怪談とはいえない。
第一に赤穂浪士の設定をやめ、遠州相良藩の取り潰しと絡めた物語としたこと、まあこれは問題ではないとしても。
ストーリー的には中川信夫版が宅悦と小平のキャラクターを合体させてプロットを省略していたこと等に対し忠実ではあるが、重要なのは他の四谷怪談と全然違っていわゆる心霊描写というものを、伊右衛門による主観的体験のように、つまりは『エクソシスト』や『シャイニング』のようなモダンホラー、オカルト映画、サイコホラーと同じ手法で演出されていること(お化け屋敷みたいなヒトダマだけがなんともチープで残念ではあるが)。
これは脚本がまず近代的合理主義に則ったふうで書かれていて、登場人物の心理に対して理由が用意されている。
それを受けての森一生の演出であろうと思われる。
元の鶴屋南北の東海道四谷怪談というものが、というか日本の怪談話の常というものが、人間同士の間で絡み合う業を描くことの背筋ゾクゾクというようなものであるのを、この映画では伊右衛門の底抜けのニヒリズムとその個人の狂気がこそ怖い、またはお岩という存在の放った個人的な怨念が怖い、そういう性質の話になっていて、業という感じではない。
思えばこの森一生という人、三隅研次から引き継いだ大映版『大菩薩峠 完結編』でも、ジャンプカットを使った恐怖演出のテクニックが現在でも十分通用する一級のものだった。
音楽も完全にモダンホラーのそれになっている。
一定のゆっくりしたリズムを刻む低音の、ズーン、ズーンという、あるいはビーン、ビーンという感じの、琵琶なのか何なのか詳しくないのでよくわからないが後のジョン・カーペンター映画の音楽みたいだ。
そう、この映画、『ハロウィン』『シャイニング』はもちろん、オカルトブームの嚆矢『エクソシスト』よりも数年早い。
menoki

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3.4
「仮面ライダー」でお馴染みのおやっさん(立花藤兵衛)がお岩さんの妹を強姦しようとした所、返り討ちにあって斬り殺された話。

あらすじ

遠州相楽藩士四谷左門の娘、お岩とお袖は藩の相楽藩の没藩後、不幸の極みに。
婚約者と生き別れたお袖は、老父を支えるため体を売り、お岩は同藩の民谷伊右衛門と所帯を持ったものの、江戸で惨めな浪人生活を送っていた。

「仮面ライダー」でお馴染みのおやっさんが「四谷怪談」でゴミを演じているとの情報を得たので鑑賞した。
あの人の良さが滲み出てるおやっさんがどんなゴミを演じるか楽しみにしていたが、人の良さを殺し、殺人・強姦未遂・殺人未遂とかなりのゴミを演じ切っていた。

ただ、確かにゴミを演じてはいたものの、日本語が話せる生ゴミこと伊右衛門の方が比較にならない程の鬼畜外道だったので、おやっさんが犯した罪がそこまで大した事のないように錯覚してしまう。

一応、本作で伊右衛門が犯した罪を列挙すると、

・10人以上を殺人(その中に妻、赤ちゃん、お義父さん、親想いの青年などがいる)
・死体遺棄(妻と親想いの青年を川に投げ捨てる。赤ちゃんは池の近くに埋める)
・恐喝(人の弱みにつけ込み、妻を襲えと命令)
・暴行、傷害(妻を蹴り飛ばしたり、生爪を剥いたり、毒物を飲ませるなど)
・暴言(自分の妻に水商売を強要)
・名誉毀損(主に妻と親想いの青年)
・不法侵入、器物破損(勝手に神社に忍び込み、障子や扉などを破壊する)
・不貞

など、精神に異常があるとしか思えない程のゴミっぷりを見せている。
良くもまあ90分の間にこれだけの罪を犯せたものだ。

昔、友達が「スクールデイズ」を鑑賞後、息を吐く様に、

友達「誠死ね( *`ω´)」

と連呼してたが、本作の伊右衛門の方が比べ物にならないくらい最低だと思うのだが・・・。

終始、伊右衛門のゴミっぷりが目に付くのだが、作品の質としてはなかなかに良質であり、脚本は多少アレンジしてはいるもののオリジナルに近い。
また、アレンジ部分もオリジナルを上手く活かしている。

他にも、演出、ライティング、フレーミング、メイクが非常に良い。
特にメイクは本当にレベルが高く、鳥肌が立つほど恐ろしいものとなっている。
何年か前に「喰女-クイメ-」という「四谷怪談」もどきが上映されたが、それとは比較にならない程良い。
(因みに一番好きなお岩さんのメイクは「日本怪談劇場」)
ただ、亡霊のメイクは完璧に近いものの、刀で切れた部分が血のりを付けただけだったりと少々適当に感じる部分も見受けられる。
傷口を上手く表現出来ないのであれば、演技やカメラアングルで幾らでも誤魔化せるのに勿体ない・・・。

演技も基本的には上手いのだが、壁に刀が刺さっている所にワザとらしく刺されに行ったりと色々不自然としか思えない部分が多く見られた。

少々残念に思う部分はあるものの、全体的にレベルの高い作品に仕上がっているので、最近のJホラーに飽きてる人や「四谷怪談」を観たことがないホラー好きにはオススメ出来る作品である。
hideharu

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2.7
2017.12.14 DVDで鑑賞。

初見と思って見てましたがもしかしたら子供の頃にテレビ放送で見ていたかも。

小林昭二が悪役をやっているのを初めて見た。我々の年代ならば「ウルトラマン」や「仮面ライダー」の頼れるオッさんの印象が強かったので。

お話はあまりにも有名な「四谷怪談」、歌舞伎や舞台、映像化は数限りないほどあると思います。

佐藤慶が伊右衛門をクールに演じていますが本当に人でなしのクソ野郎という感じがしてなかなか良かったの好演だと思います。
お岩さんを演じている女優さんはよく知りませんが薄幸な感じでこれまた良かった。

お岩さんに妹がいたとは知りませんでした。そう考えるといつもの「四谷怪談」に比べると登場人物は多く、その割にはサクサクと話が進むのですがクライマックス後がチョッと長いので怖さが半減したと思います。その辺を上手くまとめられなかったのかと残念です。
子供の頃、夏の夜になると日本古典のホラーがテレビでよく放送されてました。
現在の動画を垂れ流してる心霊番組より恐怖のトラウマ感がハンパなかったです。
正統派四谷怪談

原作に最も寄っている(らしい)からね。そりゃあもう、お岩メイクに化け出るシーン、全てが正統派に感じる。
特にゆるり幽々とした話し方がとても印象的。

映画四谷怪談処女・童貞にはぴったりかもしれない。
かす

かすの感想・評価

2.0
ホラーなので物語の無茶が目立つ
照明やカメラの美しさはすごい
痺れる描写が散見される。
三隅も森一生もほれぼれするほど上手い。
森一生の版は『四谷怪談』の登場人物たちが、何故このように行動するかについての説明が多かった。観ていて神話的に進んで欲しいという欲求があった。
mitakosama

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3.3
大映・森一生監督版、四谷怪談。
主役の伊右衛門に佐藤慶。お岩さんは稲野和子さんだって、この人はよく知らないな。
そして直助にキャップでおやっさんな人、小林昭二。

四谷怪談としては極めてオーソドックス。オリジナルに近い四谷怪談としては決定版と言って良いかも。
もちろん討入りのクダリが無いので、多少のアレンジはある。

割と序盤から独自の雰囲気があって、浪人に身をやつす貧しさと卑しさが上手に表現されてる。
岩の妹お袖が、地獄宿(売春宿)に身を落とそうとするなんてシーンもある。原案では実際に身を売ってるが、映画では未遂)
この辺は映画では端折られる事の多い設定なのに、こういうのもちゃんとストーリーに採用されてる。

なんと言っても、俳優の地味さ加減。
伊右衛門も岩もあまり美形な俳優さんじゃない。佐藤慶は声は良いんだけど全然イケメンじゃない。でもニヒリズムに溢れた悪役なんだな。
逆に直助の方が狡くて感情的な激情型悪役である種人間味ある。
岩も死んで、あん摩の宅悦や小仏小平が殺さる辺りから、伊右衛門が悪い悪い。悪すぎて格好良くなってくる。

岩の呪いで、梅や伊藤喜兵衛を切り殺したあと、釣りをしながらの伊右衛門と直助のシーン。(有名な“本所砂村御亡堀”)
ココでの伊右衛門のセリフがカッチョエェ!
『出世と金の欲の為の悪と、死んで呪う女の業。悪と業となら、仏門などに降らずオレは一人でも戦う』(うろ覚えだが)
このセリフでこの映画での伊右衛門が頂点を極めた。
そこで戸板返しで畳み掛けるんですよ!素晴らしいね。

一番四谷怪談らしい、四谷怪談映画と評します。