強虫女と弱虫男の作品情報・感想・評価

「強虫女と弱虫男」に投稿された感想・評価

神

神の感想・評価

3.5
凄まじい勢いの乙羽信子&ヌボーン感溢れまくり殿山泰司の対極夫婦がよかった。
buccimane

buccimaneの感想・評価

4.5
気軽に見に来たら乙羽さんの気迫に圧倒されまくった。
こんなヘビーでコメディと言えるかなと思ったけど「それでも大学でインド哲学を専攻したのかよ!」ていうのウケたのと京都来たときの脳天気なフロウがツボにはまりまくってゲラゲラ笑った。
殿山さんのとてもシラフとは思えない気の抜け方も凄まじい。
地主ボンと一度結婚させても良かったと思うけど。
shibamike

shibamikeの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

想像の斜め上を行く凄みが映画の中にあった。
乙羽信子って上品な母親のイメージだったが、こんな激情型の演技もしていた女優なのかと驚いた。

飼い主に捨てられたり、虐待されたり、ひどい裏切りを受けた犬や猫はその心に受けた傷の深手から、人間不信になり、一生心を開かない場合があると聞く。
本作におけるフミ子(乙羽信子)もまさに家族以外には心を閉ざした女性である。誰が彼女を傷つけたのか。日本である。国に見捨てられた彼女は国が用意した法律ではなく、自分の法律(プライド)を信じ、野良の生き物として生きていくことを決意する。



九州のある炭鉱が閉鎖した。炭鉱夫の失業は家族を貧乏のどん底に突き落とす。母親フミ子と長女キミ子は無表情・無言でバスに乗り込み、京都へ向かう。たどり着いたのは「ネグリジェサロン水車 1セット650円」の看板。家計を救うため、母娘は水商売をしに京都へ出稼ぎに来たのであった。
この店では女性が透け透けのネグリジェを身にまとい、客の接客をする。
ジャーマネが目を丸くする。
「母娘一緒にサロンで働くのか?!」
前代未聞であろう。39歳3か月と19歳の生娘。
店のジャーマネが仕事の説明をする。
ジャーマネ「パンツは5~7枚重ね履きしていい。公安委員会にそのように届け出してある。」
フミ子「よかよか。」
フミ子はジャーマネの説明すべてを気が触れたかのように「よかよか。」の一言のみで受け入れる(かつてこんなにパンツを重ね履きする人達がいたというのに自分は感動した。ヒッキー北風には元ネタがあった!!)。
観ている自分は「たくましくて頼りがいあるお母さんやけど、色気出せるんやろか?」と勝手に不安に。

「水車」という店名は伊達ではなく、店内は海軍式の装飾、衣装で統一されている。ボーイ達は水兵ルック。ジャーマネの経営思想は結構しっかりしており「サロンは夜の社交場だ。客が高いビールを飲むのはしっとりした潤いが欲しいからだ。客を喜ばせることが第一だ。客のために化粧をしろ。」といった風にサービスの心得は現代と変わりなさそうであった。

出勤初日、田舎者丸出しで重ね履きしたパンツでパンパンに膨れ上がったフミ子とキミ子はビールの洗礼を受ける。ゲーゲーおう吐。「わたしらの商売はこれが飲めんと話しにならん。」下宿先に帰ってからも二人は丼ぶりにビールを注ぎ、ビールの練習をする。つくづく凄い時代である。映画ながら、よく死なないなと感心した(映画だからだよ)。

効率よく稼ぐために母娘は作戦を練る。ここらへん母と娘のコンビの良さが小気味良い。連日連夜の出勤。浴びるほどのビール。お涙頂戴のトーク。ハンカチ作戦。イモ丸出しだった2人がすっかり夜の蝶々になる。

そんな中、キミ子の客にカモが見つかる。気の弱そうな優男 大山田。身辺調査の結果、36歳独身バツ2とわかる。大山田家は田舎ながら11代続く由緒正しき家系らしく、現在は土地を観光道路に売却とかで左うちわで暮らしているらしい。バツ2の理由は過保護母親の嫁イビリ。フミ子とキミ子は大山田からたんまり絞り取ることを決める。

キミ子はヴァージンを大山田にあっさり捧ぐ。大山田の感激たるやスクリーン越しに強烈な振動をもって自分に伝わってきた。しかし、大山田に一言だけ自分は言いたい。「寿司を食いに行き過ぎだ!」

一度あっさり寝て、その後はつれない態度をとるという母と娘の作戦が功を奏し(何ちゅう母親や)、大山田は泥沼に。息子の浪費に気付いた母親が登場し、物語は険悪な雰囲気に。

結局、大山田がフミ子をハサミで刺して事件になってしまう。示談で大金を手に入れるフミ子かと思ったが、そうはならない。徹底的に裁判で争うと言って鬼の形相。「悪いのはあっちやのに、何でこっちが泣き寝入りせなアカン!」ここらへんで自分はフミ子の野良ルール(プライド)を垣間見る。自身のプライドが懸かった局面では、てこでも動かない。

裁判に勝つも、サロンでは働けなくなり、一時帰郷。故郷ではとんでもない事件が起こっていた。無職の夫および仲間2人の計3人が土地の実力者の娘に暴行してしまったのである。フミ子が夫に問い詰めると「・・・スマン、やった。」と犯行を認める。そばで事実を聞いたナマポ職員は「ここは人間のスクラップ工場だ!」と絶望。しかし、フミ子は絶望しない。土地の実力者に「うちの男どもは無罪です!」と頑として退かない。

また、出稼ぎに行くフミ子とキミ子。家の神棚に手を合わせるキミ子を外に引っ張り出しながらフミ子が言う。「神も仏ももういらん。」フミ子の決意が語られる。「私たち家族は死んでもこのハゲ炭鉱から動かへん。ここで生きてここで死ぬ。」
2人は汽車の中、京都再挑戦を誓い、大声で笑いながら駅弁をぱくつく。



母親と長女が水商売に身を沈めるという重たい内容であるが、フミ子とキミ子のたくましいキャラクターが悲壮感をぶっ殺している。他人から可哀想と憐れまれるのを心底嫌がっているのが伝わってきた。同情するなら金をくれ!リュウ!最初は苦くて飲めなかったビールよりも現実の方が何倍も苦く、終盤にはとりあえずビールをバンバン喉に流し込むまでに。

大山田のとっつぁん坊や感は素晴らしく、めちゃくちゃ笑えた。裁判シーンでの「僕が悪いんですぅ~!!(泣)」は最高だった。

殿山泰司演じる夫や無職仲間の男達のしょぼくれ感は観ていて痛ましかった。男というのはここまでアカンようになるのか、とインパクト大。酷暑の中、何もすることがなく(全員ナマポ)、無表情に一点を見つめ続ける。娘への暴行というのは彼らの男としてのギリギリのところだったのかも(レイプ、ダメ絶対!)。炭鉱って濃い物語多いんだろうなぁ。

フミ子のたくましさから、ビートたけしの母親さきを思い出した。さき氏が言っていたという「貧乏だと教育が受けられない、教育が受けられないと収入の低い会社に勤めることになる。収入の低い会社に勤めるとせがれに教育を受けさせれない・・・以下繰り返し」の「貧乏は輪廻する」理論もついでに思い出した。この時代、世の母親は少なからずこういった危機感を持っていたのであろう。劇中フミ子も長男は大学に行かせると断言していた。

自分はこういったお水の女性に男性が入れ込む話を聞くと、2012年にあった、メーカーの元経理部係長(33才、独身)が会社から横領した金6億円をキャバ嬢につぎ込んでいた事件を思い出す。モテない男性の心の隙間につけ入るプロ女性。つぎ込む金額に差があるにせよ、プロの女性にお金を貢いでしまうというのは古今東西男の本能なのかもしれない。貢ぐ理由はひとえに男性が弱虫だからであろう。女性が貢がせるのは強虫だからということであろう。