ラビッドの作品情報・感想・評価

『ラビッド』に投稿された感想・評価

バイク事故で体に傷を負った女性が、皮膚の移植手術を受けると、脇の下にペニス状の突起が出現。その突起で人を刺して生き血を吸う怪物と化してしまう話。『シーバース』に次ぐ初期のクローネンバーグ作品。

ハードコア・ポルノ出身のマリリン・チェンバースが主演とのことで、やたら脱ぎっぷりが良く、美女の裸体で注意を引きつけるなんて即物的だなあと思いつつも、よく考えたらこの観客、『ザフライ』でも即物の極致みたいなグロ特殊メイクで魅せてましたね。それに脇の下から明らかにペニスを模した突起が出てきて、その吸血器官で人を襲うというのは、あの手この手で人間の肉体を新次元に導くクローネンバーグ独特の作風と矛盾しないし、なんなら古典的なヴァンパイア映画の吸血行為自体が性交のアナロジーな気も、、

性的な接触を媒介に感染が広がっていくのは、シーバース以来一貫したクローネンバーグ印の描かれ方で、彼自身がインタビューでも「愛と醜さの混在をテーマにしている」と語っていたので、本作で、裸体の見事な美女が吸血鬼として、男たちを快楽の虜にし、甘美なアチラ側の世界に誘い込むのは、わりあい前作から地続きともいえるシナリオだと思う(その意味では、作中で禿げてるか太ってる男ばかりが犠牲になるのは偶然じゃないはず)。ポルノ女優を出したからといって、安易でも商業路線でもないと私は信じておるよ。

丁寧なシナリオが売りのクローネンバーグは本作でも潔癖なほど演出がしっかりしていて、吸血に目覚めた美女が、その事実を戸惑いつつも受け入れていく描写がとても上手い。たとえばサンドイッチを食べてみたり牛にかぶりついたりするも吐いてしまい、やっぱり人間の血じゃなきゃ、、と葛藤の末に人を襲うことを決心するまでの展開を、過度に説明することなく、けれども行き届いた描写で見せていく手法は腕ですね。

また彼自身、科学的知識のバックボーンがあるから、形成外科手術の失敗(いやむしろ成功?)によって患者が吸血鬼と化してしまうという無理めな設定にも、余計な疑問など持たず、すんなり納得できた。また混乱と無秩序を嫌う映画作家らしく、登場人物の行動や物語の進み方が首尾一貫していて、とてもリアルに感じられる。たとえば感染が疑われた街に警戒態勢が敷かれ、そこから戒厳令、ロックダウンと進んでいく流れに非常に現実味があるのです。感染系の映画が今ほど氾濫していない、しかもロメロの『ゾンビ』よりも前の映画ということを考えると尚更凄いことと思う。

またバイク事故後、昏睡状態の中おこなわれた形成外科手術の結果、吸血鬼の感染源になってしまうというストーリーの広げ方がとても良くて、人間を殺して生き血を吸うモンスターと化すヒロインですが、彼女自身には実はなんの罪もないという見せ方になっていて、ドラマだな、、と思う。直接の原因は医者の変テコな処置にあるし、何なら元を辿れば、ハンドルを握っていたボーイフレンドの責任でもあるという、そういうわかりやすく悪者を規定しないシナリオ、、好き。

それからカナダの寒々しい風景を淡々と切り取った映像は、この人の映画でなければなかかかお目にかかれないお見事なもの。潔癖性のクローネンバーグらしい完璧に統制された近未来的な無表情の建造物が、その寒々しさをさらに煽り、クローネンバーグの映画を見ているなあ!という充実感で満たされる、、『シーバース』も『スキャナーズ』『ザ・ブルード』も、彼の初期の作品は、この物理的に文明から隔絶された中で進行してるような独特の世界観がとても好きなのです。

なお、本作をゾンビ映画と見る向きもあるみたいですが、私的にはゾンビ映画とは一線を画してると思う。ゾンビは噛み付いた相手が感染するだけでなく、その感染者が無限に生み出されていく「集団化」の要素にこそ文法があると思うのだけど、本作の感染者は、菌を次の人に渡しバトンタッチしたところで死亡(『スペース・バンパイア』と同じですね)してしまい、保菌者であり続けるのは結局ヒロインただ1人だけなので、仮にこれが吸血鬼でなかったとしても、女王蜂以外は針を刺した後に死んでしまう蜂や、作中で言われてる狂犬病に近いもので、これをゾンビ映画の系譜の上に置いて語るのは誤った評価に繋がるモトだと思う。
takistar

takistarの感想・評価

3.9
感染拡大、ワクチン証明書、隔離…感染拡大のスタート元は…?
と形態は違えど、まさに今のパンデミック、コロナを予期してるような作品で、さすがのクローネンバーグパパさんです…。

泡吹くシーンや変貌する様子は本当に気持ち悪い…
脇にあんなのできたらたまったもんじゃない…
セクシーで気持ち悪い…
コロナを予知してる様な作品だった!

ワクチン証明書や、隔離…免疫…

形態は違えどコロナ禍と重なった。

泡吹く姿や人の体に棲みつき、侵食する腋に生息する得体の知れない生き物は気持ち悪くて、
さすがクローネンバーグパパさんです…。

面白かった!
クローネンバーグの初期作。
他のクローンバーグ作品に比べれば随分と大人しくグロさも控えめだけど、監督のフェチというか「ああこういうの好きそうだな」という要素がちらほら垣間見えて面白い。

間違ってリメイク版から観てしまったけどこっちもやっぱり良かった。いやでもリメイク版も健闘してると思う。

あのめちゃくちゃドライな終わり方好きだわー
CocaCorgi

CocaCorgiの感想・評価

3.0
パンデミックはワキの下から。
彼女の存在はどこか両性具有を思わせる節がある。それは神の象徴でもあるし、性役割からの解放を想起させる。
神が既存の世界を破壊する。
新しい役話を持つ存在が誕生する。
ならばこれクローネンバーグ流の革命映画なのではないだろか。世界のリセットを説いている。男性性、女性性の今までの常識を破壊しようとしている。
だけど、この世界は新しい価値観をそう簡単には受け入れない、凝り固まった既成概念はしぶとく折れない。
世界を変えうる存在は、ゴミとして片付けられてしまう。そして世界は変わらない。
この時代になんて斬新なことをやっているんだろう、御大は。すごいな。
2022年鑑賞42作目

オーソドックスな物語ではあるけど、ゾンビ映画の雰囲気のあるウイルスパニック映画って感じ?

ウイルスパニックとなると今はコロナを重ねてしまう。

コロナ禍での生活に慣れたといえば慣れたけど、客観的に見るとえらいパニックの中過ごしてるんだなと。

ラストシーンの無慈悲な感じがすごく印象的。

美人なローズに「寒いから抱いて」なんて言われると「喜んで!」となっちゃうだろうけど、そうするともう終わりだね(笑)
予備知識なしで観たらクローネンバーグ版ゾンビだった(製作は本家の前年1977年)。

・低予算なんだろうけど、後半の街がパニック状態になってる様は生々しくてなかなか良かった。
・マリリン・チェンバースがエロくて素敵(『スピーシーズ』っぽい展開になっていきますね)。あと、演技も巧い!

ゾンビ系、っぽい作品はたくさんありますが、監督の色が出ておもしろいですね。スピルバーグがゾンビもの撮ったらどんなの作るんだろ?
BulltaRock

BulltaRockの感想・評価

4.0
恋人とツーリング中に交通事故に合い
近くの病院で緊急手術し、一命を取り留めるが…


一言で言うと
クローネンバーグ!

めちゃくちゃ悪趣味だけどそれでいいんだよな。

アレとアレが合体した意味のわからないナニカが脇に生えてきてしまった可哀想な女性の物語
McQ

McQの感想・評価

3.4
『Rabid(1977年)デヴィッド・クローネンバーグ』

同名作品他にもあるけど、デヴィクロ氏の方。

初期作品ってこともあり変態度高かった印象。。はあるものの。

観た人が口揃えて◯◯◯、◯◯◯言うてますが、私にはそんな記憶ないんだが。。

もはや観てないのと同じやん、、
(モザイクかかってたとか??)
mzk

mzkの感想・評価

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主人公の女性は皮膚移植の副作用で、腋に吸血器官が生まれる。なぜ。噛まれた人間は凶暴化、感染が広まる。なぜだ。難儀なあらすじだが、パンデミックを描いた物語の定番だ。皮膚移植の設定は不要にも思えるが、クローネンバーグの味がこれなので、抜けない。後味は非情だったが、クールだった。
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