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MIND GAME マインド・ゲームのRenのレビュー・感想・評価

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
4.0
今年度アカデミー賞を受賞したダニエルズが「エブエブ」のインスピレーションになった作品として挙げており、それと関係無く前から観たかった作品でもあったので初鑑賞した。天才はデビュー作から天才だったことがよく分かった。宮崎駿の後、日本のアニメ業界を背負って立つのは間違い無く湯浅政明だ。

発明しかない103分。アクの強さ100%なので観る人は選びそうだけど、「新しいものを見た」という感覚は全員一致であるはず。
カオスというよりはファンシーの極地。今後何百年かかっても実写では到達し得ないアニメーション快楽の濁流に気圧され、気づけば鳥肌が立つような興奮に包まれている。天才が天才たる所以は、脳内イメージと具象の一致率の高さにあるのだろうと思う。

冒頭、『宮本から君へ』ばりの胸糞だがやはりリアリティを極力排除した作画のおかげで見ていられる。逆に言えば、「これほどファンシーだけど、性も暴力も死も存在する世界」なのだという説明になっている。そうして土台を固めたら後は好き放題に暴れ始める。

○ 物理法則完全無視のアクション
○ テクスチャの異なる人・モノの共存(何の説明もなくキャラの顔が実写風になる)
○ 世界がぐにゃぐにゃと歪む
○ 実写ではダサくなるテロップ演出

自らがアニメーションであることを自覚した上で、その自由度と可能性を押し広げ続ける。応援したくならない訳がない。

目の前でヤクザにかつての想い人が犯され、自分は肛門から脳天を撃ち抜かれて死に、気合いで生還し、カーチェイスの末クジラに飲み込まれる。意味不明だが、混沌を混沌として楽しむだけというわけでもなく、しっかりストーリーに筋は通っている(通っていない)。

狂乱の辿り着く先で今作は「それでも生きていくんだ!」と叫ぶ。理解を超えたファンシーな世界で、性も暴力も死も存在する世界で、生/人生が文字通りぶわっと広がる瞬間の興奮には心踊らずにいられない。そこに行き着く「走る」ことの快楽。疾走感は映像作品の持つ最高の快楽の一つだ。

そこに生きた/生きる人へのこれ以上ない讃歌。『夜は短し歩けよ乙女』『きみと、波にのれたら』『犬王』などもそういう話だった。
物心がつく前、初めて『ふしぎの国のアリス』を観たときのような体験を20年以上ぶりにできて光栄だった。何度でも観返したい。

【余談】その他ダニエルズは「エブエブ」の製作に『千年女優』『パプリカ』を参考にしたと公言している。どちらも素晴らしい作品。Japanimationのカオスサイドの作品のエッセンスを含んだ映画がアカデミー作品賞を獲る時代。
2件
  • 10円様

    湯浅政明だったんですね!この頃から世界に影響を与える作品を作るなんてさすがですね〜今年のアカデミー賞は犬王はノミネートから外れちゃいましたが、一緒に獲っていればどんなドラマが生まれたのか😊

  • Ren

    10円様さん デビュー作から作家性の塊でさすがの一言でした! 自分も犬王には少し期待していたのですが残念でしたね🥲湯浅監督とダニエルズの絡み見たかったです。笑

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