支那の夜 蘇州夜曲 後篇の作品情報・感想・評価

「支那の夜 蘇州夜曲 後篇」に投稿された感想・評価

青二歳

青二歳の感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

支那の夜後編。国策映画の代表作に挙げる批評家がいるけど、情報局や軍の後援や監修ないので国策映画タグはつけません。
ますます戦争は悲しいなっていう共感のドラマツルギーが、反戦メッセージが散らばっとる…もちろん日本側の理屈だけだろうと言われたらそらそうですけど、それは両陣営ともに世界中で当たり前のことだし。
後半は抗日組織に利用される李香蘭の苦悩がつらい。戦争の只中にあってこういう悲劇を描いちゃうところにはただ関心。だって戦争中においてスパイって敵以上の最悪の存在ですよね。そのスパイにも悲しい事情があり苦悩を抱えていると描いちゃう当時の邦画界。

ただ長谷川一夫の甘ったるい声でメロドラマが加速するのでやや疲れてくる。長谷川一夫は、前半では香蘭へ世話を焼きながら葛藤を抱える役所で、中々見応えあるんですが後半は例の甘い声ばかりでちょっとキャラが薄くなります。
長谷川一夫のスーツ姿や制服姿が戦中ならではで楽しい。

一応山口淑子の著作にあるから例のビンタシーンもメモ代わりに…
日本人からすると愛情のあるビンタですけど、中国にはそうした概念がそもそも無いらしい。殴るということは暴力・支配しかないんだろう。李香蘭はビンタを受けて長谷川一夫の愛情を知り、やがて恋心へ発展するのだが、それが被支配者への屈辱と映ったらしい。価値観が違いすぎる。
だってあんなに人に心配かけて迷惑かけて、挙句葛湯という好意を受けてもあんな風にはたくんだよ…そら怒るよ…しかも長谷川一夫は抗日の憎悪に対して分かり合えると信じているから、李香蘭の罵倒や暴言に耐えようと努めていた。だからビンタの後、日本を憎む人間に対ししかも女相手に手をあげたことを悔やんでツラツラ悔恨の弁を述べています。長谷川一夫の葛藤を無視しちゃう批判ばかり目につくと本当虚しくなる…
当時の中国人からしたらビンタは屈辱だったかもしれないから、戦後の今の私たちが配慮するのは分かるけども、なぜ当時の日本人の苦しみや葛藤や愛情を無視した批評しか存在しないのだろうか。日中どっちの理屈も配慮すべきじゃないの?中国だけを配慮するのは素直に変じゃない…か?戦後世代でもはや当事者でなく痛みのない立場で批評するのであればこそ、双方の立場を丁寧に追うべきだと思うし、そうしたいと思う。