国境の町の作品情報・感想・評価

「国境の町」に投稿された感想・評価

Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

4.0
‪「国境の町」‬

冒頭、帝政ロシアの片田舎。
第一次世界大戦、ロシア革命の波、資本家、軍靴の製造、前線、捕虜、ドイツ軍の兵士。汽笛の音、合図。今、ドイツを敵視する父親と2人で暮らしている純粋で心の優しいロシア娘との許されざる愛の物語が始まる…

本作はボリス・バルネットが「雪どけ」の次に監督したエレーナ・クジミナ主演による喜劇ドラマで、次回作の「青い青い海」でもヒロイン役に彼女を抜擢していた。

この映画冒頭から引き込まれる。
まずオープニングのベーラヤトロイツァ(教会)が水面に反射して真っ逆さまに表現される。

映画を見終わると微かに宗教体制を反対するような演出なんだろうと感じるが、所々に聳え立つ教会がバックに写し出されると、そんなことも無い様に感じてしまう、その部分はよくわからないが物語としては重いテーマにコミカルな演出もあって可愛らしい。

特にアヒルや子犬が登場する場面は誰が見ても印象に残る。

1番ウケたのは冒頭の馬が喋る場面だ。
この点はソ連文化なのか、凡ゆる文学にも言葉を発する馬が現れるのは珍しく無い。

本作にはウーリッツァーオルガンの音が使われており、更に言うと民謡チュバリキやドイツ軍の軍歌や賛美歌までも使用され、フランス革命時の革命歌で現フランス国家でもある曲までもが使用されているのには驚かされる。

この監督の作品には様々な音楽が使われており、中でも塹壕の中で兵士たちが歌う"兵士の歌"は印象的だ。

音楽とともに本作のサウンドには様々な特徴と想像力に富んだ音作りがある。

静寂の中にミシン、ブーツの音、その他の環境音が音として仕掛けられる。それはフレーム内とフレーム外に分けられ、観客はその音で次の物語への展開を確認する。

ストライキとデモのような激しい場面もある中、小さな街での夜を映し出した風景が心の底から好きで、ギターの音色が奏でる中、家族の団欒を窓際から映すショットや家の明かりが外に漏れた温かみのある演出はとても好きだ。

今では中々撮影されない田舎町の古き良き遭遇だと感じたし、胸が締め付けられる様な切なさを超えた深い感動は正に叙情性がある。

このような似たような作品でまだ未見の映画が沢山ある、それは「チャパーエフ」「黄金の山」「マクシムの青春」等だ。

あの悪劣な塹壕の中の若い兵士たちの生きるか死ぬかの表情と煙や厭世的な気分にさせる表現や演出はすごい。モノクロの分、資料映像を見ているかの様で正直かなり精神的にきつい…。

敵国であるドイツ人だからと言って同じ靴職人をみんな集ってボコボコにするシーンでヒロインの女性が号泣したりする場面はなんとも悲しいし、ロシア人の男性が途中、止めに入って、“ドイツ人だからなんだ、同じ靴職人じゃないか"と連中を追っ払ってドイツ兵をベッドに運ぶ場面、取り分けクジミナの泣き顔にすげえ胸が痛くなる。

今でこそ大量に生産されている敵国の男女の愛の物語はあるも、それらは大体全てカラーフィルムで見ている分、モノクロ映画で見るとまた一味違う。

特にトーキー映画なんて、今の若者は中々見たりしないだろうし、驚いた事に物語の終盤で“皇帝がくたばればいいのに"と言う発言があるのだが、よくもまぁこの台詞が通ったな。

この映画ラストを見て戦争って無意味なんだなと思わされて、正直かなりこの歳になっても衝撃を受ける。

それと物語の終盤に差し掛かる時に流れる革命歌"ワルシャワ労働歌"が使われるのはなんとも素晴らしい大団円だ。

細かなディティールのリアリティー溢れるシークエンスが心から笑える。

ワシーリー・ヴェレシチャーギンの描いた2つの絵があるのだが「戦争の結末」と「致命傷」と言う作品の画像を本作を見る前に少し見て欲しい。‬

‪本作をまだ未見の方はお勧めする。B.バルネット作品は楽しいよ。‬
knkne

knkneの感想・評価

4.0
違うのは国だけ。歴史に翻弄されゆく彼ら。
ロシア革命と第一次世界大戦の避けられぬ時代のうねり。
国が違えど人に愛を持って接すること。
どんな時代でも大切なことであるしバルネットは今作においてその革命や戦争の無意味さを問いた。
砂は兵士の体を打ち付ける。塹壕に飛び込む兵士はまるで蟻地獄に自ら飛び入る蟻のよう。誰も闘いたくないと言う思いは同じであるのにも関わらず夥しい死体の山は戦場に築かれてゆく。
ラストのニコライの僅かな、生命と意志の灯火はキリストのように復活を意味するか、また死を意味するか。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.3
戦争が引き裂く友情、生まれる細やかな愛情、敵・味方を超えた労働者の団結、反戦、そして革命への過程。国境の町、夢を見る青年達は次々と戦場に送り込まれる中、資本家は軍靴の出荷で大儲けを企む。膠着する塹壕戦、降り注ぐ砲弾と砂の雨、戦地の現実は青年の幻想を容易く打ち砕き、工場に靴の山が築かれる一方、戦地には死体の山が築かれる。町に送られたドイツ人捕虜、収容所から外出許可が出され職探しを始める。彼もまた靴職人、冷たく当たる者もいれば優しき良心を持つ者もおり、そんな人物に拾われなんとか職を得るものの、愛国者集団からはリンチを受ける。二月革命勃発、前線の兵士は戦争終結を期待するが、(ブルジョワ)臨時政府の出した答えは徹底抗戦、碁とは違い勝敗はきっちり付けねばならぬのが戦争である。白旗を振って敵兵との友好を企む兵士を上官のライフルが狙う。そして十月革命、ついに権力はソヴェエトへと集結する、その隊列にはあのドイツ人捕虜の姿も。あくまで喜劇然としていながら、根底には確固たる反戦及び革命賛歌、射ち放たれる機関銃と稼働を続ける工場の機械の先のプロレタリアの勝利、「すげぇ事になった…」、そう呟く兵士の命は、今燃え尽きようとしている。
atushi

atushiの感想・評価

5.0
高校のころ映像センターでこれ見たあと変なおっさんが「意味、わかった?」と話しかけてきた思い出
クリ

クリの感想・評価

4.0
ロシア映画と思って観ていたら面食らった。
ロシアとドイツの戦争の中で、国の違いだけで認められない関係に苦しむ男女の姿をバルネットらしいギャグを交えつつ描いている。
リンチを受けるドイツ人捕虜を庇う女性の姿がカタルシスとなった、何とも形容しがたい胸を撃つ作品。

「すけぇことになった」
Catvery

Catveryの感想・評価

2.6
映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選
pamphlet 未