ニキフォル 知られざる天才画家の肖像の作品情報・感想・評価

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像2004年製作の映画)

MOJ NIKIFOR

製作国:

上映時間:100分

ジャンル:

3.5

「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」に投稿された感想・評価

ニキフォルは生涯4万枚もの絵を描いた、ポーランドの素朴派の巨匠(1895ー1968)。美術教育はいっさい受けておらず、言語障害を持ち文盲である。1920〜30年代の作品が最も価値があるとされ、生前にも十数回個展が開かれている。

…という前知識なしに観てもすばらしいと思ったけれど知識を得てもう一度観たら微妙なニュアンスまで感じとれ、より感銘を受けた。逆にいうとそれを全く説明しない監督は少々不親切かも。
話が始まる1960年は、彼はすでに画家としての地位を確立していた、しかしながら絶頂期は過ぎていた晩年なのだ。何も知らずにみると彼はちょっと頭のおかしい浮浪者まがいの老画家に見えてしまうけれど、彼はずっと自分の絵を観光客に売って暮らしていた変わり者。画廊に絵を売ればもっと楽な生活ができたのに。

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ということで見どころです!

⑴雪の描写の美しさ。いくつかのエピソードの合間に雪景色がミルフィーユのようにはさみ込まれ、まるで素朴派の描く景色のよう。

⑵ニキフォルの絵の魅力。ピカソは子供のような絵を描きたいと生涯望んでいたといわれるが、彼の絵はまさに、描きたいという欲求に駆られるままに絵筆を紙に落としていったプリミティブな、子供のような絵。私は体のバランスがいびつな彼の人物画がとても好きだ。

⑶ニキフォルとマリアン(男)の友情。美術大学を出たにもかかわらず大成せず、スターリン体制下のプロパガンダのポスターなどを描いていたマリアンと、美術教育を受けずにその才能を開花させ、しかしながらボロい暮らしをしているニキフォル。はじめは彼を厄介者にしていたマリアンは彼の才能に嫉妬しながらもその虚栄のない人柄や自分の絵に対する確固たる自信に次第に惹かれていく。ふたりが歩み寄る繊細な描写がすばらしかった。

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⑶に関係することだけれど原題は『私のニキフォル』。つまり本作はふたりの友情の物語なんですね。派手ではないけど静かであたたかなものが心に満ちてくる、素敵な作品。映像も美しくおすすめです。
螢

螢の感想・評価

3.3
芸術って、ある種の麻薬のようなものなのかもしれないと思った作品。
はたからみれば関わるだけ馬鹿だし、自分でも身の破滅だと冷静な頭ではわかっているのに、そばにあると多幸感が得られるからどうしても離れられなくなってしまう類のものという意味で。
特に、天才を見分ける審美眼はあるのに、欲しくてたまらない天賦の才能は持たない凡人にとっては。

ポーランドに実在した謎に満ちた天才画家ニキフォル(1885-1968)と、彼の晩年を支えた画家マリアンという男の物語。

役所で美術関連の仕事をしている、画家のマリアン。画家としては正直鳴かず飛ばずだが、安定した職と収入があり、妻と二人の幼い娘と幸せに暮らしている。
そんな彼の職場に、ニキフォルと名乗る謎の老人が現れ、マリアンのアトリエを占拠してしまう。
ニキフォルは文盲かつ言語障害もあり、頑固者で人とうまくコミニュケーションが取れない。そして、氏も素性もわからない浮浪者同然の男だった。
しかし、一日に三作もの色彩画を描く男で、地元の新聞に取りあげられたことも。
彼の絵に目をつけたマリアンの上司は、マリアンにニキフォルの世話をするように命じる。
最初は嫌々ニキフォルの世話をしていたマリアンだったが、いつしかニキフォルの才能に魅せられていく。
しかし、ニキフォルが重篤な結核にかかっていることが判明する。
周囲の非難や忠告を無視してニキフォルの面倒を見続けたマリアンのもとから、妻と子どもは去ってしまうけれど…。

不世出の異端の天才と、支え続けた凡人の姿がとても静かなトーンで描かれており、1960年代の冬のポーランドの田舎街の寒々しく侘しさに満ちた風景と相まって、独特の吸引力があります。

描き続けたニキフォルと支え続けたマリアンの努力が身を結び、国内の大きな美術館で大規模な個展が開かれるシーンなども、しみじみと胸に染みます。

しかし、展開の中で、ニキフォルの作品をちゃんと見ることができる場面も、マリアンがニキフォルの才能に決定的に魅せられる場面もないので、自分の仕事や家庭を失ってまでニキフォルに尽くすマリアンの心情はいまいち理解しきれず…。

うーん、映画の構成としては、こういった基点となる場面はきちんと盛り込んで作って欲しかったです。自然な感じにしたかったのかもしれないし、ポーランド人にとっては、「あのニキフォル?すごいよね!」という常識があるのかもしれませんが…。

とはいえ、エンドロールではニキフォルが実際に残した作品がたくさん観られます。技巧的では決してない、子どもが描くような非常に素朴な作風ですが、なんだか胸に残るものがある作風です。

いつもと違う雰囲気の映画を楽しみたい時にいい作品ですね。
たてぃ

たてぃの感想・評価

4.0
またしても映像美のあるポーランド映画に出会えました♪( ´▽`)そして、主人公の老人男性を演じたのが80歳代のポーランド女優さんと観賞後に知ってビックリwww

ニキフォルという画家の晩年を描いた作品で、その無名な画家を世間へ知らしめたマリアンという男の物語。1960年、共産主義国家のポーランド南部、役所での美術関係の仕事をしているマリアンの家に入り込み、彼のアトリエで絵を描いては観光客に売るニキフォル。普通ならば追い出されるはずがニキフォルの才能に惚れ始めたマリアン。しかし、ニキフォルという男はコミュ力0で感謝の念などこれっぽちも感じない畜生な野郎であって…

あの時代のポーランドは共産主義国家で表現の自由などない時代…それでも必死に生きようとする人々…その一方で希望を見いだせない人もいて…この作品では悲壮感はほとんど描写されていないのですが、ただわずかですがそういうのが見え隠れして…例えば、マリアンの娘たちの会話でも表現されていたり…またそれだけ余裕がないため、他人を労わる気持ちを持てない「寛容のない社会」というのも感じたり…監督が表現したかったのは「マリアンのように他人を労わる気持ちを持て」だったのではないでしょうか。

1960年代のポーランドが舞台の作品はこれで4度目ですが、全て当たり作品でしたwもっと見たいなぁ、ポーランド映画…(^_^;)
ポーランドに実在した素朴派の画家・ニキフォルの晩年を綴った物語。

街ゆく観光客向けに、物乞いのように絵を売り歩き、日銭を稼いで路上生活をしていたニキフォルだが。冬を前にして、とある建物に潜り込んだ。そして誰が何と言おうと彼は居座った。
一方、居座られた側のマリアンという男性は、美術関係の公的職務に就いていて、自身も画家であった。突然のニキフォルの行動に困惑し、最初こそ拒絶するも、華奢な老人を外に投げ捨てられるわけもなく、絵の具や食事の用意をするようになる...。

マリアンが、家族のことや世間体を気にせず、自らの人生を投げ打ってニキフォルのお世話をしたのは、彼の絵を見て、同じ画家として“放り投げてしまってはいけない宝物だ”と思ったからだろう。

ニキフォルは生涯に4万点もの作品を残している。
文字の読み書きができず、言葉は不自由だったそうですが、それは素敵な絵をたくさん描いてもらうために施した、神様の仕業ではないかと思えてくる。
世の中に本当に必要な情報なんてほとんど無いのだから、それらが排除されたニキフォルの絵描き人生は、描けば描くほどシンプルに研ぎ澄まされていったことだろう。

筆と紙と絵の具と小銭。
持ち物はそれだけの、豊かな人生に憧れる。
たなぴ

たなぴの感想・評価

4.2
この映画は、世間に相容れぬ生き様を最期まで貫いたポーランドのイコン画家「ニキフォル」の人生を描いたものである。
しかし、偶然の出会いから、いつの間にか彼の絵を通して彼自身にまで魅了され、看取るまでに至った「マリアン」を描いた映画でもある。

病気が発覚し疎外される場面もあるが、晩年ではパリでも認められ個展まで開かれるほどになったニキフォル。しかし、社会的成功や権威には全く無頓着で、ギャラリーから抜け出してしまう子供のようでもあり皮肉の利いたシーンがとても好き。
「汚れなくして素朴な芸術性」という表現は、まさにニキフォルの生き方そのものだと思った。

あくまで素朴で、たんたんと進む映画。
しかし、現代社会において「ニキフォル」のような人間の存在はほとんどなく、忘れてしまったものを取り戻せるというか、とにかく素直に感動できる作品。

ニキフォルを演じたのが「クリスティーナ・フェルドマン」という女優さんだというから、本当に驚きであり、素晴らしいの一言です。
George

Georgeの感想・評価

2.8
あまりにも静かで、何も起こらない映画です。でもそれは批判的な意味じゃなくて、主人公の圧倒的な存在感を示すためには良かったと思う。でも最近は刺激的な映像しか観てなくて、なかなか心に響かなかったなあ。これはやばいかも。あと知らなかったけど主人公の方は女性でした。ビックリです。

このレビューはネタバレを含みます

ポーランドの画家ニキフォルの芸術家らしく自由で拘りの強いキャラクターがなかなか魅力的。音楽もかなり良い。家は土台から描かなけりゃ崩れてしまう