女医絹代先生の作品情報・感想・評価

「女医絹代先生」に投稿された感想・評価

後輩ちゃんにおすすめして貰った映画です。
恋愛もの? フェミ的なお話? と思ったら、確かに恋愛要素はあるけれど、力強く逞しいテンポがとても良いコメディでした。
ドイツ語挟んじゃう当時の高学歴女性素敵だよね、私の二外(0に近似できる)だけど、ドイツ語にすれば良かったかな。リーベ!
1937年(昭和12年)の作品。

当時27歳の田中絹代を主演に据えたアイドル青春ロマンチック・コメディー。今リメイクしても問題なく通用しそうな、古さを全く感じさせない傑作。むちゃくちゃ面白い。

漢方医である山岡医院は今日も閑古鳥、患者がさっぱりやってこない。ところが、医大で西洋医学を修めた一人娘の絹代(田中絹代)が、内科と小児科を開業した途端、医院は元気な若い男性患者で溢れかえる。彼らのお目当ては若い女医さん。どこも悪くないのに理由をつけては訪れて、診療などそっちのけで絹代を口説きまくる。そんなろくでもない患者に絹代はウンザリ顔。さて、山岡医院には、先祖代々いがみ合うライバルがあった。浅野医院である。いずれは医院を継ぐ跡取りの安夫(佐分利信)は、現在は大学病院に勤めている。寄ると触ると喧嘩する絹代と安夫だったが、実は密かに思いを寄せあっていた。そんな娘の秘めたる心中を知った山岡医院の漢方医は、長年の確執を乗り越え二人を結婚させるべく、勇気を出して浅野医院を訪れる。だが、頑固な母親の反対にあい、あえなく撃沈。事態はどんどんこじれてゆく…。

とにかくオシャレ。

かちっとしたスーツ・ルック、カジュアルなセーター&パンタロン、タイトなワンピース、そして白衣と、目まぐるしく衣装をチェンジする田中絹代のファッションは、意外なほどのスタイルの良さもあって、センス抜群。また、往診に出かける絹代医師が乗り回す、ダットサンの小型オープンカーの可愛らしいこと。他に自動車一台走っていない往来を、颯爽と運転する田中絹代が実に格好いい。女友達や男性患者と一緒に泊まりがけで出かけるスキーも、板やストックこそ古めかしいが、サングラスやウェアはちょっと身につけてみたくなるようなデザインである。

そして笑える。

天気の良い診療日に「こんなお天気、また一日中働くのかなあ」「どこかに遊びに行きたいなあ」などと、極めて職業意識の低い発言をしてみたり、繁盛する自分に対してさっぱり患者の来ない父親にお小遣いをあげたりする田中絹代の演技には、そのコケティッシュな魅力も相まって、思わずクスクスしてしまう。スキー場で人にぶつかって転倒した田中絹代が、キビキビと手袋を外し、相手を気遣うよりも先に自分の脈を診る、などといった小ネタも満載である。

田中絹代は決して美人では無い。だが、人を惹きつける強い魅力を持っている。もちろん演技力は抜群だ。晩年、日本初の女性映画監督としてデビューした田中絹代を、小津安二郎や成瀬巳喜男といった巨匠たちが率先してサポートしたというが、周囲をそんな気にさせる力を持っていた人だったのだろう。