その手紙を見つけなければ、僕らは家族のままでいられたろうか。
絵に描いたような理想的な家族が、父の浮気に端を発し一気に崩壊していくお話。母の精神崩壊、離婚・再婚、引越し、そして父のアル中、暴力、死。とことん暗く悲しく切ない話だからそれについて行かなきゃいけないのだろうけど、幼い兄弟の視点(回想)で物語が進行していくため、その微笑ましさに劇場内には笑いが起きる(なんとなく投げたダーツの矢が弟の頭に刺さったり…)、どちらに照準を合わせるべきか分からず、こちらの感情も終始ぐらつく。『こわれゆく女』のジーナ・ローランズ、と言ったら言い過ぎだが、母親の躁鬱の演じ方がリアルすぎて、ちょっと見ていてキツい。父を父と呼べず、母を母と呼べず、時には罵倒し殴り倒さねばならないと言うのは、どれほど辛い事なのだろうか。キーアイテムの効果的な使用、伏線の回収もスムーズに行われていき、脚本の巧さが光る。どうすれば救えたのだろうかなんて言う後悔が滲み出ながらも、それでも最後まで固く結ばれる兄弟の絆、特に兄の心境の描き方がトトロのさつき並みに上手い。母の前で「シューガーベイビー・ラブ」をバックに兄弟が仲良く踊るシーン、あれはちょっと…やばいですね…。そしてなぜか「おちんちん」って単語が4回?5回?くらい出てくる、そこがまた子供の成長と言った感じでとても良い。