人間の條件 完結篇の作品情報・感想・評価

「人間の條件 完結篇」に投稿された感想・評価

「人間の條件・第五部~死の脱出」
2014年10月13日、鑑賞。

五味川純平の原作読んだのも学生時代、この「人間の條件<6部作>」をオールナイトで観たのも学生時代であった。(初見が1980年だったので、約34年ぶりに再見)

小林正樹監督の他の作品も、この映画を観た後にも観ているが、この作品がやはり代表作ではないか、と思う。原作(文春文庫)に忠実に描かれた骨太な傑作である。


◆第五部◆
さて、この第五部では、「梶(仲代達矢)たちには、敗戦の連絡は無いが、生きる道を歩く様」が延々と続く一篇である。


敵(ソ連)のど真ん中、敵中突破して逃げる3人の敗残兵である梶たち。
森の中で女子供(その中には岸田今日子もいる)と出会う敗残兵3人だが、その後の女子供を連れての行軍では、飢えと疲れで森を進むうちに脱落者が次々と出る。
大地をさまよう梶は、過去を回想するシーンが多数あらわれる。

中国人の民兵団に狙われながら突進する梶たちだが、兵士xxx(内藤xx)の「くだらん自由を、高い金払って買っているだけかもしれん」のセリフは状況を顕著にあらわしており、素晴らしい。

梶が女(岸田今日子)を見ている時に、それが妻(新珠三千代)に置き換わって見えてしまうシーンなどは映画ならではの表現である。

◆第六部◆
この第六部(完結篇)では、「梶(仲代達矢)の生き様」が集約されている。


まだまだ森の中、原野を彷徨い続ける梶たち一行、ときおりロ軍と対峙して小競り合いしながら、日本人ばかりの避難民部落に辿り着く。そこには、避難民の女(高峰秀子)や老人(笠智衆)が居る。

ここでも、梶は、避難民の女(高峰秀子)の話し声が、妻(新珠三千代)と姿も重なる。

避難民たちは、「ロ助」や「満人」を警戒しながら生きているが、その部落にソ連軍がやってきて、女(高峰秀子)の叫び声によって、梶たちは降伏して捕虜となる。
そして、某所での労働を経て、通訳の意図的な誤訳によって梶はシベリア送りとなる。
その後は、幾多のエピソードを経て、曠野に小さな雪の丘が出来る。


「にんじんクラブ」を中心に、小林正樹監督らスタッフや出演者たちの苦労の結晶となる傑作である。
mikoyan358

mikoyan358の感想・評価

4.5
2015/9/25鑑賞(鑑賞メーターより転載)
【第6部】6部合わせて点数つけたい所だが凄すぎてこりゃ無理だわ。梶がどうなるかを見届けるべく入った最終部が、悲惨さという意味では一番強いかもしれない。ソ連の捕虜になり、あれだけ人の事を考える思慮深い男だったはずなのに私刑を加えたり、梶の精神はもう破裂直前。それでも妻に会いたいという一心でかろうじて我を忘れずにいる梶には光明を与えて欲しかったが...とにかく、この全く別人とも言えるような変遷を一人で演じきった仲代達也の凄まじいばかりの演技力に大拍手。こんな「映画と思わせないような映画」もう出て来ないのではなかろうか。

2015/9/24鑑賞(鑑賞メーターより転載)
【第5部】敗戦を迎え、シベリア戦線から満洲へと向かういつ終わるともしれない逃避行が大半を占める、ただでさえ陰鬱なこのシリーズの中でもことさらに辛い第5部。何としても妻に会うためにまさに鬼のような形相で歩を進め人の命への向き合い方もかなり粗雑になってきた梶が、それでももうあと一陣の風が吹いてしまうと消えるようなはかない「人間性」というろうそくの火を何とか消さずに状況を切り抜けようとするのが、もう正直正視できなくなってきた。実際の戦地でも、多かれ少なかれタイトルにある人間の条件というものが試されたのであろうが...

このレビューはネタバレを含みます

第5部・第6部の見所といえるのは、ひとつはやり返すところなのだが、それよりも何よりもそれ以降のどうにも何の救いのない最終であり、一緒に観たまあまあ大勢の観客は終わってからも言葉を交わすのも憚られ、全員無言でシアターを立ち去った。
仲代達也に、金子信雄、笠智衆、高峰秀子……、と日本の名優によって完結する一大大河映画。日本映画の頂点の一つ。
スタ

スタの感想・評価

5.0
6部まとめての感想

梶という人間を通して経験する地獄の不条理。正しいことを貫くことに意味はあるのか。苦悩し、絶望し、殺し、狂い、しかしそれでも希望は捨てない。いや、捨ててはならない。

1,2部では管理者として、2,3部では兵士として、5,6部では敗者として。

ありとあらゆる視点から暴かれる戦争というものの虚無。

それでも梶は「人間の隣には人間がいる」と信じ、抗い続ける。

果たして彼は何を得るのか。私の稚拙な言葉では書きつくせない。この映画の9時間半を梶と共に耐えること、それが私にできた精一杯のことだった。
まとめての感想
長いから見るのを躊躇うけど
見てしまうと本当に見てよかったと思う
正しいことをしようとドンドンと窮地に追い詰められていくのが見てて辛い
主人公とは対照的に悪質な行為をしてるような人物たちが優位な立場にあったり生きていく上で正しいことを言ってたりするのも面白い
迫力のある映像を沢山みれて
満足感が凄い大傑作な映画でした映画館でみてみたい
Hero

Heroの感想・評価

5.0
【そして人間でなくなる】
ソ連軍との国境攻防戦に惨敗した関東軍はほぼ全滅。辛くも生き残った梶は食料や武器もそこそこに、永遠に続く密林と曠野を妻の存在を支えにひたすら邁進する。迷い込んだ部落でのある出来事がきっかけでソ連軍の捕虜となる梶。進むも地獄、退くも地獄、追い詰められた梶は“人間”でいられるのか?
全6部作の 第5部 死の脱出篇 第6部 曠野の彷徨篇。

第4部のラストでの苦渋の決断により辛うじて梶は生き残る。しかし、その選択が梶をこれまでになく苦しめる。愛する妻との約束を果たすために、自問自答を繰り返し密林と曠野をひたすら歩き続けるその背中に見える絶望を直視できない。そんな矢先、ある出来事によりソ連軍の捕虜となってしまう。
第1部・第2部では命の安全を保障された状況下で人間を管理する強者として、第3部・第4部では生きるか死ぬか敵も味方も対等な、いやむしろ不利な弱者として、第5部・第6部では明日の命の保証もない逃げ惑う敗残者として、そしてついに管理されるという圧倒的弱者の立場で梶の思想は試される。

誰よりも犠牲を払い、誰よりも人間を信じていた梶を待っていたのはあまりにも残酷な現実でした。
これが戦争なのだ、、、と。

梶という人物を描き切った小林正樹渾身の全6部作計9時間31分から強烈な反戦のメッセージを受け取った。映画館で観て良かった、というか絶対に映画館で観なければならない作品だと確信した。
演出・脚本・撮影・音楽・役者、すべてにおいて超一流。人生ベスト級の傑作を体感できたことに感謝したい。

最後に、この作品を端的に言い切った小林正樹のコメントを「青春を戦争の中で送り、自分の意思に反して戦争に協力する形でしかあの時代を生き残ることができなかった不幸な経験を、梶という人間像の中でもう一度確かめてみたかった」それは確かに、そして見事に成功していた。

《生誕100年 小林正樹映画祭 反骨の美学》

2017-16
☆☆☆★★★

“生き残る為”に敵兵とは言え、人を虫けらの様に殺してしまった《梶上等兵》の苦悩は続く。
戦争事態はもう既に終わってはいるが、“最前線での戦闘”はまだまだ終わってはいない。

第五部では、指揮官となった梶のもとで出会いと別れが繰り返しあり、時には人が虫けらの様に死んで行く。
梶がリーダーとなりゲリラ戦となるが、彼が指揮する事によって、他人に命令する事態になる。その事で映画的な面白味が多少薄くなって来る。

明らかに“上手く立ち回った者が得をする事態”に於いて、彼の生真面目な行動は果たして正解か否か?
その答えは第六部まで待たなければならない。

やがて強盗等の行為が発覚し、統制が困難な状況に及び、「1人々々が自分で考えて行動をするのが吉!」と考えるのだが、この第六部になると高峰秀子が登場して、俄然面白くなって来る。

男と女は常に一対となって行動を共にしなければ生きては行けない…。

気丈に振る舞いながらも女としての弱さを垣間見せる高峰秀子は絶品です。

そして舞台は遂に“あの地へ”

梶の直属の部下となる川津祐介との師弟関係を縦軸にして、“人間らしさ”を追求して来た作品は、金子信雄の非道な悪役っぷりへの怒りから意外な局面を迎え、クライマックスへと至る。

凡そ10時間に迫ろうかとゆう超大作の本編を観終えた今、最終的な結末は本来作品が当初打ち出していたテーマからは大きく逸脱してしまったかの様な印象を持つ。
圧巻的な仲代達矢の演技力に、全六作全てを担当した撮影監督宮島義勇の力強い映像は圧倒的な締め括りです。
然るに、長時間に渡り作品と向き合って来た人には非情な結末が牙を剥く。

これがもしもハリウッド作品だったなら…。

しかし、この事実こそが現実なのだろう。

「現実を直視しろ!」

そんな小林正樹監督の“檄”が聞こえて来そうな、入魂の作品でした。

(2009年1月21日 新・文芸坐)
小一郎

小一郎の感想・評価

4.8
『生誕100年 小林正樹映画祭 反骨の美学』にて6部作を連続鑑賞。その合計時間は9時間31分。午前11時頃から午後10時近くまで映画館に入りびたり。息つく間のない展開に退屈を感じるどころではなく、ひとつの部が終わるとすぐに次が観たくなる。とにかく凄い映画。

満州戦線に従軍した五味川純平氏の体験をもとにしたベストセラー小説が原作。召集免除を条件に満州の鉱山に赴任するも、やがて戦争に参加することになる主人公・梶を通じ、戦渦における人間性を描いた超大作。

大量の情報量にまだ未消化の部分はあり、もう一度観たいけど、全体を通した感想を(個別のあらすじなどは下の方にあります)。

ヒューマニストで妻を深く愛する梶は、人間を蔑ろに扱う戦争に疑いを抱いている。そして、ソ連のような社会主義が良いとは言わないけど、まだマシではないか、と思っている。

徴兵を回避できる仕事を選び、理不尽がまかり通る戦時中にあって、自分の管理下の仕事場では人間性を大切にしようと奮闘するものの、苦難の連続。あげくの果てに、自らの人間性を失いかねない危機に直面し、それは何とか回避したものの、結局、戦争にかり出される。

戦場はヒューマニストの信念がほとんど通用しないリアリストの世界。そんな中でも人間的に生きようと、必死にもがき続ける梶。しかし、梶も生きるためには非人間的な行為にも手を染めなければならない。

自分自身に苦悩しながらも、帰りを待つ妻のもとへ戻るため、必死に生き続ける梶。しかし、捕虜となったソ連も結局、日本軍と大差がないことがわかると社会主義への期待も消える。人間性を肌身離さず生きた梶の最後は…。

普通の人なら早々に心が折れて、思考停止し、大勢に従うような状況下でも、信念を曲げずにヒューマニストであり続ける梶。小林正樹監督が描き、仲代達也さんが演じることで、凄みが一段と際立つが、それ故に戦争がいかに救いのないものであるかを痛感する。

そして「人間の條件」とは何なのか。梶を通じて思うことは、自分の信念をやすやすと放棄しないという気構えを持つこと、そして愛する者(愛してくれる者)の存在を忘れないこと。

このことは今を生きる人にも通じると思う。誰かが虐めあったとき、梶のように振る舞えるだろうか。自分が愛し、愛してくれる人の存在を忘れずに、梶のように行動できるだろうか。

自分は、梶のように強くなれないことは間違いない。しかし行動はできなくても、気持ちを持ち続けること。これが最低限の「人間の條件」なのかもしれない。

<人生に一度、見ておくべき映画が『人間の條件』。まさに『人間の條件』。人間の条件は『人間の條件を見ること』>(町山智浩)。
(http://miyearnzzlabo.com/archives/29819)

【5・6部のあらすじなど】

ソ連国境で梶の隊は梶を含め3人を残して全滅した。今や梶の生きる目的は妻・美千子のもとに帰ること。梶をリーダーに南満州に向け、途中、避難民や敗残兵と合流しながらひたすら歩く梶たち。

ソ連兵のみならず、中国人民兵も殺さずには、進めない。そんな中でも、梶のヒューマニストとしての矜持はくすぶり続け、非人間的な行為には怒りを爆発させる。

とある集落で、梶たちは、思いもよらぬことからソ連に降伏する。連れて行かれたソ連の収容所では、途中追い出した桐原伍長が捕虜の管理者となっていた。

ある日梶は、捕虜の食料を確保するため、やむなくサボタージュするが、桐原伍長は意趣返しとばかりに、ソ連兵に告げ口する。尋問に正直に答える梶だったが、情状酌量の余地はなく、重労働の懲罰を受ける。日本の状況よりもマシだろうと思っていた社会主義国ソ連にも疑問を抱き始める梶。そして罰を終え戻ってくると、桐原が許すことのできない非人間的な行為をし、ソ連兵はそれ見て見ぬふりをしていた。

全員平等であるはずの社会主義に対するかすかな希望も打ち砕かれ、もはや希望はどこにもない。絶望した梶が直後にとった行動は、この映画唯一にして最大の溜飲を下げるシーンとも。

ラストは哀れというほかないが、梶は最後まで自らの信念を、人間性を、手放さなかった。アイヒマンが一方の極なら、梶はその正反対の極。どちらの極も知ることで、自分の立ち位置がわかるかもしれない。自分はややあっちよりかも…。
yoruichi

yoruichiの感想・評価

4.0
日本人として観るべき作品と勧められ。
気合を入れないと完結編までたどり着けない。簡単に言葉にできる作品ではない。
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