人間魚雷回天の作品情報・感想・評価

「人間魚雷回天」に投稿された感想・評価

mh

mhの感想・評価

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人間魚雷回天という非人道的な兵器の話と、軍隊組織における予備学生(学徒兵、予備仕官とも)の位置づけの話と、特攻する四人が散華するまでの24時間を描いた群像劇。
航行速度がわからないとか、訓練中に何人も失ってるなど、回天がほんとひどい兵器であることを具体的にして見せてくれる。
軍隊ヒエラルキーの異常な部分も描いている。それでいて「きけわだつみのこえ」みたいに、糾弾するわけでもなく、ただ、十年前の戦争について正直に伝えてる。
「娑婆っ気が抜けてない」というのが予備学生に対する罵倒だった。
国を挙げて戦争をしているというのに(大学行ってor勉強して)シャバにしがみついて貴様それでも日本人かというロジック。
頭のいいひとにとってはなかなか過酷な世界。帝大の教授が兵舎の雑用やらされてる不条理も戦争の側面なのだった。
目をつぶってからのデートシーンがすげー良かった。誰もいない江ノ島の海岸とか白黒映画ということもあいまって、異様にファンタジック。これは戦争映画全部ひっくるめてもなかなかお目にかかれぬ名シーン。これ見るためだけにこの映画を見る価値ある。
海軍でおなじみ「帽振れ」のほか、「刀振れ」もやってた。「刀振れ」のほう、ググっても出てこない。
ラストは余韻の強いいい終わらせ方だった。
ほか、こんなこと思ってはいけないのかもしれないけど、旭日旗や「南無八幡大菩薩」の幟はかっこいいよね。もしいま戦争始まってたら、「南無八幡大菩薩」の幟立てるのかなぁとか思いながら見てた。
反戦色をなるべく薄めた方が、反戦に効果的な気がするね、この映画みたいに。
面白かった!

このレビューはネタバレを含みます

https://umemomoliwu.com/kaiten
ゆう

ゆうの感想・評価

3.5
僧侶で元海軍将校でもあった松林宗惠監督の1955年の作品。
回天は1人乗りの人間魚雷。体当たり攻撃(いわゆる特攻)として考えられた最初の兵器。
この映画は、出撃直前の回天乗組員たちの物語。

ほぼ事実に基づいた設定でありながら、その辺の虚構作品よりも遥かに異様な状況。
演出に目新しさは無いけれども、このリアルかつ常軌を逸した設定に呑まれた。

ラストシーンは岡田英次の驚くべき最期だが、前夜に彼が言った「僕たちが死んでいくのは無謀な戦いを無謀なものだと気付かせるためなのです」という言葉を踏まえて考えると、更に衝撃的。
2009年の感想。最近亡くなった松林監督作品。この映画の中でも自分の分身のような龍谷大学出のお坊さんが回天に乗り込む。わざわざ言うところがわざとらしい。特に出港シーンなど回天乗組員に誇りあるシーンを与えており敬意を払った見事なシーンです。ほかはセンチメンタリズム満載で戦争反対、海軍はやなこともあったが良かったぜみたいな松林監督の実感でしょうか。「出口のない海」と比べればずっといい作品でした。
特攻兵器「回天」に搭乗する若者たち(木村功、岡田英次、宇津井健)を中心とした戦争映画

共に訓練を積み生活をして来た仲間たちが次第に減っていき今では半分以下
そしていよいよ残された者たちの出撃が決まり残りの時間は僅か、多くの者は街に繰り出し酒や女で気を紛らわす
木村功もその一人であるが、そんな時恋人の津島恵子が訪ねてくる
一方、一人宿舎に居残った岡田英次は年長者ながら下っ端軍人である加藤嘉や殿村泰司と交流を深める
各自様々な思いを抱えながらもその時は迫る、、、

戦後の戦争映画ってそのほとんどが反戦ものだと思うんだけど、この映画はそんなに反戦って感じでも美談って感じでもなく淡々と現実をって感じ
何か大君のためとかお国のためとかそんなのも特にって感じで、
この時代に生まれて、事ここに至ってはもうやるだけ、流れには逆らえないみたいな、そんなやるせなさ
かといって彼らも人間で若者なので当然悩みもあって、、、

印象に残った場面は
木村功と津島恵子が浜辺を歩いて、実現するはずのない夢を語るシーン
機体の故障からなんとか浮上し、汗だくで生きている喜びを語る岡田英次
あとは残された3人の出撃が迫る中、撤退命令が出て力が抜けた後、再び戦況が変わり全員出撃、ここら辺の気持ちの切り替えの辛さ

特攻兵器って出撃したら生きては帰れないものって当然覚悟はしていて、でもいざその時に機体の故障であったり撤退命令であったりで出撃出来ないこともあって、そうなった時を想像するだけでストレスがやばそう、その時は流れてもいずれ再び出撃しなきゃいけないわけで、、、

その上回天は機体の性能も悪くて操縦が難しく脱出装置もない、訓練中に命を落とすことも珍しくない
でもやるしかないんだもんねー、「回天」って名前からして追い詰められてるんだもん

回天ものでは「出口のない海」を原作、映画両方見ているのでそっちのほうが思い入れが強いんだけど、
こちらは落ち着いた描写が多いながらも戦後まだ10年という時期に作られてるだけあって、淡々とした中に見える現実感が印象的

出演者ではメインの3人も有名だけど、チョイ役で西村晃や丹波哲郎なんかの姿も見えて、それが見れた点でも収穫
戦後10年くらいの作品なので質素であったが、リアリティがあった。実際もあんな感じだったのだろうか。
回天の乗組員の訓練と出撃前、実際の出撃を追った作品で、怖そうな題材だけど、比較的淡々としていて(でも悲しみや恐怖などは伝わってくる)、最後まで見ることができた。
出撃前の岡田英次と加藤嘉のやりとりや、木村功と津島恵子の海岸で幸せなひとときを夢想する場面が素晴らしくて、その後自爆しなければならないのがやりきれない。見終えて無性に腹が立ってきたけど、この怒りをどこにぶつけたらよいか分からない。

「没後十年森繁久彌と松林宗恵監督」@新文芸坐
メッシ

メッシの感想・評価

3.8
海版の特攻隊の話。空の特攻隊の話は数あれど、人間魚雷にスポットを当てた話は珍しく、ある意味で感心しながら観てしまった。本当に魚雷に人が乗って操縦するんだ、とか、なかなかコントロール効かないし乗る意味あるのかコレ?とか。かなり反戦、反特攻の思いが込められていて、終始漂うのは「無駄死にして意味があるのか?自ら死ぬ意味とは?」という自問自答に苦しめられる主役たちの憂鬱な雰囲気。4-5人を中心としてるので、各人様々な苦悩を丁寧に描いていて胸が苦しくなる。特に岡田英次は帝大を出てエリート中のエリートで特攻する意味に最後まで自答し、強烈なラストを迎えてしまう。間違いなく戦争なんてダメだとストレートに思える一本。
あと軍人の同僚たちは「貴様、貴様」と笑顔で呼び合っていて、響きが良くてちょっと面白い。私も明日から同僚に「おはよう、貴様っ。元気かっ、貴様」とキサマと連呼したくなった。
戦後10年しか経っていないからか、監督が海軍出身だからか、戦中軍部の描写にただならぬリアリティがある。
太平洋戦争の末期、海軍は必死必中の人間魚雷回天の特別攻撃隊を編成。嬉々として「回天」なる特攻兵器の戦術性を説く指導官と、爆破実験を見せられ「あれが俺の死に方か…」と絶句する訓練兵たち。本作で描かれる指導教官もあくまで旧日本軍の負を背負ったキャラクターだが、『兵隊やくざ』や『陸軍残酷物語』で描かれるような地獄のしごきをする卑劣の鬼ではなく、あくまで上司であり教育者であり時に人らしい顔ものぞかせる。
ひとりの若者が「みんなは本当にこれでいいのか?」「嫌なのは俺一人なのか?」と現状を疑ったり、良心的士官が「海軍の伝統は誤りだ」と精神論を否定するのは確かに象徴化的ではあるが、戦争なんて誰もしたくないし、死にたくないのはわかりきっているのに、どうしてこういう世界に生きているのかと、そんな問いを投げ掛けられているようだ。
人間魚雷回天を操舵して、敵艦艇に体当たり攻撃を行うのは、まごうことなく血の通った人間であり、20代半ばの若者なのである。零戦はかつての日本の工業力の象徴として、その流線形の美しさを誇らしくも感じられるのだが、回天という死を前提とした兵器の異様さったらない。実践投入されるのは1944年の終戦前年ではあるが、実戦ではなく訓練中に半数が死ぬような危険な乗り物だったとは。開いた口がふさがらない。
生きて帰ってきた男に、「とにかく生きていて良かったよ」と肩を叩いて励ます同期たち。これが正常であるべきで、死ななかったことを悔いる精神なんてものが如何に異常であるか、死の意味を自問自答する登場人物たちの群像を追いながら、全体主義への憎悪を込めて描かれている。
エリートだとしても特攻的な価値観を賛美奨励する組織構造に取り込まれなければ生きていけないのが、日本人・日本人社会の最悪な所だ。回天に乗り込む青年将校たちは、みな名門大学卒のインテリであり、日本のおかれている状況を冷静な目でみている。一方、教養の無い若者ほど「お国のために死にたい!」などと目を輝かせながら勇ましいことを言う対比がおぞましい。
そして恋人との海辺デート。打ち寄せる波と逆光のバレエ、空想の海水浴場、最上のメロドラマだったとしても、これほど悲しい海辺を撮れるだろうか。そう遠くはない未来、男は太陽の光の届かない海の底の底に骨を沈めるのだと、この絵がそんな悲劇を強く印象付ける。
クライマックスで回天に乗り込む主人公たちを長回しで追いかける映像は、さすが東宝の職人監督なだけある。大人が腰を屈めて頭を下げなければ通り抜けられないような細い通路のあいだに、映像を少しもぶれさせることなくカメラを通したのか、どうやって撮影したのだろう。
「我未ダ生存セリ」と刻む主人公。身体が朽ち果てたとしても、海の底で日本への思いが生きている。それはきっと、愛であり、怨みでもある。
なやら

なやらの感想・評価

3.0
春日武彦氏が言及しており、気になって観た。
出撃間近となった人間魚雷隊員たちの群像劇。隊員たちが国への忠誠心と生への未練に引き裂かれる様子や、死を前にして深まる友情、親や恋人への思慕など、大方の手堅い要素をきちんと盛り込んだ真っ直ぐな反戦映画。真っ直ぐ過ぎてちょっとベタっぽい。あと全編に渡って散々大仰な音楽使いで煽っといて、ラストショットでは対位法的に「赤とんぼ」の唱歌を使うのがエモを狙い過ぎててちょっとダサいか。
一方、木村功が浜辺で彼女(津島恵子)との幸せデートを夢想するシーンは、これも情感過多ギリギリではあるものの良かった。

あと、セリフに「エビオス」が出てくる。ほんとに昔からあるんやな すごい!
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