糧なき土地の作品情報・感想・評価

「糧なき土地」に投稿された感想・評価

R

Rの感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

ナレーションが一歩ほど先走っている印象を受けた。数日間同じ場所に座り込んでいた少女が亡くなったとナレーションで語るが、少女が数日間座りこんでいた時間がみえない。そのこともあり実感として骨まで伝わってこない。省略によって描かれない部分が多いことも大きな要因だろう。ナレーションはその省略によってできた空白を言葉で埋めようとするのだが、その言葉が一方向への解釈を促すような、そして、あたかもそうであると確信しているような印象を受ける。このことを一歩先走っているとわたしは形容した。
村の「野蛮な」儀式において、生きた鶏の首を引きちぎるシークエンスがあるが、そこは鶏のクローズアップとロングショットによって構成されている。そのこともありこのシークエンスの強度が下がっていると言えるだろう。それは崖からヤギが落下するシークエンスも同様である。さらにヤギのシーンでは、カメラの真下からヤギが転落することを考えると、演出が一際目立ってしまっている。
今作のプロパガンダ的側面(主にナレーションとキャプションの一方向性)やモンタージュ、省略法によって幾分か映像の強度を損なっていると感じるし、また、フィクショナルな印象も多大に受ける。フィクション性を強く意識する観客のわたしと、事実であることを必死で伝えようとするナレーターの間の大きな溝、終始この溝は埋まらなかった。
画面はちょくちょく凄いが、ナレーション(英語版を観た)は違う方向にとんでもなくて笑ってしまう。
『糧(パン)なき土地』

シュルレアリストによる短編ドキュメンタリー。しかし、『アンダルシアの犬』や『黄金時代』とはうってかわって、超現実的といえる表現は「足を滑らせ落下する山羊(実際は撃ち落とされているが)」や「不慮の事故で(これもわざとだろう)ハチミツに塗れミツバチに襲われるロバ」など、暴力的なものに限られる。言い換えれば、厳しい不毛な土地の惨状をただリアルに描写している。

これは、ブニュエル監督が視線を向けた対象が、近代化していく都市から見れば、ラス・ウルデスは超現実な場所であることだからだろう。

新郎が馬にまたがり、鶏の頭を落とす儀式(作中では解説は控えられたが、新郎=性的経験がない男、鶏の断頭=筆下ろし?もしくは、去勢?)。どの集落からも歌が聞こえてこない不穏さ。子供が持つパンは取り上げられる、そもそもパンがない、夏季はジャガイモが底をつき、未熟なサクランボを口に入れる、などの貧しさ。咳の大合唱、蚊を介して住民ほぼ全員が感染するマラリア、などの不衛生さ。日常的に起こる子供の死。撮影に非協力的な一部の凶暴な人々や、飢餓・不衛生さ・近親相姦などによる小人症などの障害をもった人々。こんな土地でもキリスト教だけはどことも変わらず存在し、教会も厳かである。最後の女性のセリフ、「常に死を思うことが最高の用心さ。魂の平安のために祈りなさい」からも宗教の普遍さが感じられる。

これらの要素全てがブニュエルの超現実主義を刺激した。つまり、近代化が進む都市部から見れば、これらの状況はそのままで充分に超現実であったということだ。実際、途中のナレーションにもあるように、「スルバラン(宗教画家)のレアリズムもこのリアリティには及ばない」。この異様な土地を取り切ることが、本作の超現実性を形作ったのだろう。

前述の作為にまみれたシュルレアリスム表現2つ(山羊とロバ)も、ただ撮りたかった映像をてっとり早く撮っただけなのだ。(そもそも、ドキュメンタリー映画という分野はまだ未開拓だった)
BGMと映像との
ギャップ

貴重な映像
観たなぁ

なあ
ひろし
kazu1961

kazu1961の感想・評価

3.8
▪️JPTitle :「糧なき土地」
ORTitle:「Las Hurdes」
▪️First Release Year : 1933
▪️JP Release Date : 1977/11/19
▪️Production Country : スペイン
🏆Main Awards : ※※※
▪️Appreciation Record : 2022-096 再鑑賞
🕰Running Time : 29分
▪️Director : ルイス・ブニュエル
▪️Writer : ルイス・ブニュエル
▪️MusicD : ブラームス
▪️Cast : コメンタリー:ピエール・ユニク、フリオ・アシン
▪️Review
文明国と呼ばれたスペインに存在した貧困、病気、栄養失調、無知を、力強く、かつ感傷を完全に排して描かれたルイス・ブニュエル監督が山岳地帯の秘境、ラス・ウルデスのドキュメンタリー。
スペインでは完成後、上映禁止となりましたが、しばらくして、パリで配給業者のブロンベルジェによりサウンド版が制作、公開されました。
鳥の首を祭りでちぎるシーン、ロバが蜜蜂に襲われるシーン、病気の人々の身体、赤ん坊の死体。。。目を覆うシーんも多いですが、感傷を拝してドキュメンタリーに徹しているからこそですね。。。。

▪️Overview (映画. comより)
文明が美しく発展したヨーロッパの都市の、わずか100キロわきに、原始のままの生存闘争を刻々つづけ、残酷な日々を生きる人々の村がある。栄養失調のため不自由な身体の人々、ただ死を待つのみの人々と、直視しえない光景。死と背中あわせの日常。そこで聖者に救いを求める人々、だが、その人々こそ聖者のようだ。製作はラモン・アシン、監督・脚本・編集は「自由の幻想」のルイス・ブニュエル、撮影はエリ・ロタール、コメンタリーはピエール・ユニク、フリオ・アシン、朗読はアベル・ジャッカンが各々担当。ブラームスの「第四交響曲」が挿入されている。フランス語題名はTerre Sans Pain。
この映画は「かてなきとち」といいます。往年の名作ドキュメンタリーの一つで、スペインの貧困層の様子をけっこう生々しく描いている。但し、演出もちゃんとあることもわかってはいるけど。しかし難しい説明より、映像は本当のことを語っているというのがよくわかる。見ているだけでエグられるような感じで、ナレーションが冷静なのがまたいい。
初期ブニュエル鑑賞ウィーク。ブニュエルの3作目、初のドキュメンタリー。宝くじが当たった友人の支援金により製作。スペインの貧しいラス・ウルドスという地域を捉えたドキュメンタリー。ブニュエルが撮ると奇妙なグロテスクさが出るから不思議。ヤギーっ!てなる。
mare

mareの感想・評価

3.5
シュールレアリズムから脱却したブニュエルの3作目はスペインの山岳地帯の小さな村で過酷な生活を強いられる人々のドキュメンタリー映画。30分にも満たないが季節を通して村人の生活、周りの自然環境に左右される食糧事情、病弱な者は理由なく淘汰され生き延びるために生きることの重みがのしかかる。愛国心批判だと多くの罵声をブニュエルは浴びたようだが、表沙汰にはならない見えない先進国の裏側の現状を炙り出した貴重な資料映像であり残酷な演出もありつつ問題定義している。ラストに老婆が「起きろ、死の天使が来る」と呟く。今日という日すら満足に生きていける保証はどこにもない。
ブニュエルにはじめて興味を抱いたジャケット。蓋を開けると、30分ほどの短い時間に綴られたハッと息を飲む描写とナレーションが続く。

スペインのある未開の村を撮った短編ドキュメント。開けていて華やかな冒頭の街とのギャップ。食糧難、不衛生、疫病蔓延、近親結婚など知識不足が招く必然的事実。かと思えば三角関数を学ぶ幼児たちの奇異な光景…

「アンダルシアの犬」はあくまで作り物に対する衝撃だったけれど、本作は現実に基づくセンセーショナルな映像が多く、当時物議を醸したのも無理はない。
sonozy

sonozyの感想・評価

3.0
ルイス・ブニュエル『黄金時代』の流れで、次作となる短編も英語字幕にて。
ユダヤ人たちが迫害を逃れてたどり着いたというスペインの山岳地帯の極貧地域ラス・ウルデスの生活を捉えたドキュメンタリー。

村人は収入ほぼ無し・僅かな農作物とたまに豚やロバを食すため栄養失調・汚い水を飲むなどの不衛生で医師もおらず、当然のように病人・病死者多数の酷い実情を捉えた約30分。
このジャケットの女の子は、撮影隊が様子を見たものの何も出来ず、その2日後に亡くなってしまったようです。。。

当時のフランコ政権でファシスト達の愛国心的反発を受けて今作も上映禁止&指名手配とまでなったそうで、初期のブニュエルさん、不遇ですね。。

今作の製作秘話をアニメ化した『Bunuel in the Labyrinth of the Turtles』という作品も2018年に製作されてるようなのでチェックしてみます。
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