バビ・ヤールの作品情報・感想・評価

バビ・ヤール2021年製作の映画)

Babi Yar. Context

上映日:2022年09月24日

製作国:

上映時間:121分

あらすじ

「バビ・ヤール」に投稿された感想・評価

taka

takaの感想・評価

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これは歴史的資料価値がとても高いのでは

鮮明な映像(所々カラーも)と音(多くは映像に合わせ新たに録音されたもの)で物凄い臨場感
字幕での説明は少なくやや説明不足か

列を作ってひたすら歩いて移動させられる捕虜たち
スコップやツルハシで強制的に労働させられる女性たち
ホウキの様な道具で遺体の埃を払い一体一体掃除させられるこれまた女性たち
裁判から処刑、それを見守る夥しい群衆など
全てが鮮明で表情まで確認出来る

アインザッツグルッペン(ドイツの特別行動部隊)による火炎放射器での家屋の焼き討ちの様子も燃える轟音と共に映し出される
映画「炎628」の舞台はベラルーシだったがウクライナでもやはり同じ事が行われていた
ベラルーシで628もの村を焼き尽くしたというが、ウクライナと合わせたら一体どれだけの数に上るのだろうか・・

バビヤールでの2日間で3万人以上のユダヤ人を射殺した映像こそ無いがその後の残骸は静止画によって突きつけられる
ウクライナでもユダヤ人ヘイトがあり、虐殺の加害者である側面は隠蔽したくなるというもの
その後バビヤールが産廃処分場となった様子も執拗に映され何とも言えない気持ちになる

今も尚、翻弄され続けているウクライナの立地的不運と教訓から何も学ばない人間の愚かさによって、例え今の戦争が終わったとしても再度繰り返されるだろうことは残念だが想像してしまう

このレビューはネタバレを含みます

「ドンバス」「国葬」のセルゲイ・ロズニツァ監督による最新ドキュメンタリー映画。

ナチス・ドイツ軍に占領されたウクライナのキエフにて起きた大規模爆発に端を発するユダヤ人虐殺の経緯をドイツ側、ロシア側の双方に残されたアーカイブフィルムを編集し、歴史という物語をモンタージュ的に見据えた作品です。

作品の魅力を伝えるために、終盤部分を含む感想になります。
歴史にネタバレはないですが、鑑賞予定の方はご注意を。

まず、こういう映像がナチスドイツ軍の広報活動用に撮影されて保管されていることに驚きがあって、一部は兵士が撮影したものも含まれるようですが、前半ではドイツ軍による占領を歓迎する光景が描かれていて、ヒトラーのポスターを張り巡らしたり、鉤十字の旗を群がるように手にしたりするキエフの人たちの総意であったことが映像で証明されていることが如実にすごいところでした。

映画の大半はモノクロで、虐殺自体の場面は映像がないですが、その翌日のおびただしいほどの残された衣服の数々がカラーフィルムで映されると、それだけでもその悲惨さは徹底的な悲壮感として伝わるものがありました。

ここを境にロシア側の映像となるのですが、戦犯裁判で証言される当時の光景の生々しさや、その後の部分など、歴史という現実を見せつけられるのは、ショックな場面も含まれるので、戦争と死というものを真正面から受け止めるという意味で、覚悟がいる鑑賞にはなりますが、ウクライナから見る第二次世界大戦の見え方としては的確で、だからこそウクライナ国内では上映されないという皮肉が事実である裏付けにもなっているのでしょう。

非常に丁寧な作りではありますが、後半あたりから集中力が切れかかってしまうところがあったので、体感的には前半部分がもう少しコンパクトにまとまっているか、後半の裁判証言
自体を短くするかがなされると、最後までキープできたと思いますが、興味をどこまで持続できるかは、観る人次第なのであくまで個人の感想です。

虐殺という大きな出来事を軸に、冷徹な視線で時系列に整理された構成力は圧倒的で、実際は音がない素材にはアフレコされていたりしているようですが、あくまでドラマチックにならない施しは、セルゲイ・ロズニツァ監督の演出ならではというところで、淀みない快作だと思います。

最後に先ほどTwitterで知ったのですが、セルゲイ・ロズニツァ監督の過去作「アウステルリッツ」「粛清裁判」「国葬」「ドンバス」が配信スタートしたようですので、興味のある方は併せて鑑賞してみてはと思います。
民族主義を燃やして湧き上がる黒煙はいずれ空に紛れてしまうけれど、非人道的犯罪の記録は決して歴史に埋没させてはならない。

このレビューはネタバレを含みます

ソ連占領下における侵攻ナチス軍による"解放"と、ナチス占領下における侵攻ソ連軍による"解放"。それらを受けることになる当の市民の反応は、まるで片方の再放送であるかのように同じである。間にユダヤ人虐殺を挟んで対称のように示されたこの反応はこうして編集されるとほとんどシュールの域に達しつつあり、ゆえに末恐ろしい。辺り一面に散乱する衣服と辛うじて生き延びた者の証言もさることながら、映像に付せられた音がまた恐ろしく、特にナチス占領期にユダヤ人を連行するくだりでの連行される人々の悲鳴と市民たちの狂乱の声、最終的に産廃処理場と化した峡谷に垂れ流される排水のゴポゴポとした音は映像以上の強度がある。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

5.0
【他者からの文脈を前に我々は何も見ていない】
歴史とは、「ヒトラー」、「スターリン」のように固有名詞として後世に語り継がれる人だけで紡がれるものではない。それ以外の、忘れ去られた人の運動と結果が地層のように積み重なって歴史は形成される。『バビ・ヤール』は、フッテージをつなぎ合わせ、無数の朧げな人の影を通じて大きな運動を捉えようとする。戦火の足音が聞こえてくると、街は慌ただしくなり、通りではヒトラーのポスターを貼る者、群がる者による波が形成されていく。やがて、ナチス・ドイツがウクライナへと侵攻していく。そして人々は連行されていく。無数に続く人の鎖は、容赦なく建物を燃やしていく。

そしてバビ・ヤールで殺戮が行われた。殺戮後の様子は、映像ではなく写真で、つまり静止したものとして提示される。谷にて無数に積み上がるヒト、ヒト、ヒトの塊、ヒトが人だった頃の形跡が強烈に眼前に叩きつけられるのだ。

後半になると、ソ連がウクライナを奪還し裁判となる。我々は2022年に、セルゲイ・ロズニツァ監督の編集によって、当時の人が瞳に焼き付けるしかできなかったもの、部分的にしか知ることのできなかった歴史の全てを知った気になっている。

しかし、軍人が淡々と120人近く殺してきた語りを聞くと、我々は全てを観た気になっているが何も観ていないことに気付かされるのだ。歴史とは、無数にある過去を語り手が編集して提示される真実であるため、真実は人の数だけあるのだ。惨劇の場所バビ・ヤールが産業廃棄物によって埋められて、「過去」が忘却の彼方に追いやられるかに思える場面は、ある真実が踏み躙られることを象徴しているように思える。

そして、歴史の流れの中で復讐として行使される暴力。我々はナチス・ドイツによる殺戮の瞬間を観ることはできないが、被害者による膨大な憎悪が生み出した暴力による死を目の当たりにする。

凄まじいスピードで過去が刷新され、真実が紡がれていく勢いの中で人は倫理を簡単に超えてしまう。本作はバビ・ヤールの惨劇に関するドキュメンタリーの枠に留まらず、まさしく「今」を、「未来」を語っているのである。『バビ・ヤール』の原題は"Babi Yar. Context"。つまり、我々が歴史を見る時に「Context(=文脈)」を把握する重要性を訴えており、他者から語られる「歴史-文脈(=Histroty.Context)」を批評的に見る手法を提示しているのだ。

これを踏まえると『バビ・ヤール』はクロード・ランズマン『SHOAH ショア』を立体的に描いた作品と言える。『SHOAH ショア』ではホロコースト関係者による語りを通じて、鑑賞者の脳裏に凄惨なイメージを焼き付けるドキュメンタリーであった。『バビ・ヤール』では、映像、静止画、そして語りの3つを通じて歴史を構成する。前半では、事実である映像、静止画を並べていく。しかし、後半の語りによって、フレームが捉えることのできなかった事実を、他者の語り(=事実を繋ぎ合わせた真実)を介して知る。それにより、「バビ・ヤール大虐殺」を立体的に捉えることに成功している。

12月には元リトアニア国家元首ヴィータウタス・ランズベルギスの政治活動を追った4時間にも及ぶドキュメンタリー『ミスター・ランズベルギス』が公開される。こちらも楽しみだ。
mas

masの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

あっという間の2時間
この時代のこの手のドキュメンタリーは色々観てきたが、観たことのないシーンばかりだった。
冒頭の黒煙シーン、生々しい。
ラストの公開◯刑、生々しい。
今につながるところあるから、生々しい。
pa4

pa4の感想・評価

4.0
延々と続く男たちの行軍。誰か。どの陣営か。ゲルマン人とスラブ人、それにユダヤ人の見分けがつけにくい私にとって、この映画は説明不足で、途中までは「とりあえず、この時代の雰囲気だけは、つかんでおこう」と開き直った。
最初の30分で退席する客がいた。一瞬、私も続こうかと思った。
しかし、我慢して見続けるうちに、じんわりと、そして激烈に分かってきた。スターリンを罵倒してヒトラーの肖像を窓に貼り、…それをはがしてスターリンを貼り…。でもスターリンだって…。ドイツとロシアに蹂躙されるウクライナよ。
そして、最後の30分で言葉を失う。見逃すことなかれ。聞き逃すことなかれ。目をそらすことなかれ。戦争に大義などない。人殺しの連鎖を呼ぶだけだ。
まあ、その瞬間の映像なんて残って(残して)無いわな。今のウクライナもそうなんだから。
ナチスを受け入れたウクライナ人を映したかったんだろうけど、にしても前半長いよ。戦後の裁判はかなり見応えあり。
ヒトラーの肖像がスターリンのに置き換わるキエフの街を、見てるこっちはどう受け取るべきか。
sasha2022

sasha2022の感想・評価

4.5
"大量虐殺の次に起きたのは歴史の抹殺だ"
セルゲイ・ロズニツァにより蘇るホロコーストの凄惨な記憶。キエフ北西部のバビ・ヤール渓谷で33771名のユダヤ人が惨殺された事件を全編アーカイブでお届けする超貴重作品でした。他のドキュメンタリー作品ではあまり見たことのないショッキングな内容がたくさんありました。解説はなくテロップに記載される年号と場所だけが頼りだが映像がその全てを語っていました。特にナチスの犯罪を糾弾する裁判での生還者の生々しい証言映像とかはすごく重みがあった。
"ウクライナにユダヤ人はいない。美人も子ども老人も女も男もみんな殺された"
ts

tsの感想・評価

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家の中はまた違うのかもしれないし、談笑してる映像とかたまにあるけど、にしてもみんな何かのモジュール、歯車?のように、自分の身体が自分のものではないような感じがして怖かった。ずーっとスマホみてる今もそう変わらんのかもしれん
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