「首」に投稿された感想・評価

なか

なかの感想・評価

4.0
ラピュタ阿佐ヶ谷
隠匿を暴くために遺体の首を持ち帰る映画。
実話にもとづく正義と狂気。
めっちゃ面白かった。
前半はそこまでだったが後半から最高。大久保正信がとにかくヤバすぎる。どこでもタバコをふかし、仕事が終わるとうまそうに鍋を食い、基本喋らないのにいきなり変なこと言い出すのが最高。小林桂樹も中々狂っていたが、大久保正信が出てきてからはそっちにしか目がいかなくなる。
お堅い感じの話なのに首を切り取りにいくシークエンスとそれを持ち帰るシークエンスとか超面白い。電車内の下りとかかなり天才。「生首を運んでます」「そんなバカげた話があるか!」みたいなやり取りも素晴らしかった。生首の空襲のショットとか結構強烈だし、『二人の恋人』を観た時にやばい監督だと思ったが、森谷司郎はやっぱりヤバい監督だった。今年は森谷司郎掘り下げたい!
正義に忠実な名うての弁護士が遺体の首を切断して運ぶ羽目になる
ラストの法廷での弁護士の形相がまさに鬼
lavande

lavandeの感想・評価

-
最高だった。観てよかった。
水炊きうまかったっす!!

この50年+αで日本は(世界は)本当に変わってしまったと舗装されていない道路や車、鉄道などを見て思い、同時に、不正、隠蔽、いじめ体質は全く変わってないなとも思った。見た目や形、生活形態は変わっても、身に沁みついた体質や因習のようなものはそう簡単に変わらないのだなとしみじみ。

昔の映画はみんなセリフが聞き取りやすくて好き。今の邦画は字幕が欲しくなる。
べらし

べらしの感想・評価

3.3
「正義とは、案外合理的な判断に基づくものでなく、必要な時に必要なことをなすということなのかもしれない」
【それは果たして正義か狂気か】

前から好きな作品だったけど、改めて観てとんでもない傑作だと感じた。

森谷司郎監督、小林桂樹主演、橋本忍脚本のサスペンス映画『首』。何年か前にCSで放映していたのを録画したが、これはぜひ商品化してほしい作品のひとつ。

反権力主義で有名だった正木ひろし弁護士が、若き頃に担当した『首なし事件』を映画化した作品で、これが本当の "衝撃の実話を映画化" というやつ。

1968年製作の映画なので既にカラー映画が当たり前の時代にも関わらず白黒で撮影しているのは、生首がでてくるショッキングさを抑えるためかもしれないが、ドキュメンタリータッチを狙ったものであり、全編に渡って異常な緊張感がある。

そしてその緊張感の源になっているのは小林桂樹扮する正木ひろしの異様な正義感に他ならない。

本作のあらすじをざっと説明すると、ある炭鉱夫が警察の取り調べ中に脳溢血で亡くなるが、鉱山主は死因に疑いをもち、正木のところへ死因の再調査を依頼する。

当初、正木は形式上の手続きを済ます予定だけだったが、警察や担当検事の不穏な態度から、正木は被害者は拷問死によって亡くなったのではないかと疑う。事件解決に心血をそそぐ。

やがて正攻法だけでは事件解決できないと悟った正木がとんでもない手段を使い出すところから、本作は単なるサスペンスではなくサイコスリラーのような趣になってくる(さらに医学部の小遣い役の俳優さんの薄気味悪さが怖さに拍車をかけている)。

これを異常と言うべきか言わざるべきか。

狂気のように見える正木の正義であるが、本作の舞台となった太平洋戦争真っ只中、時代自体が狂気だった日本において、狂気じみたものでなければ対抗できなかったかもしれない。

……と思わせておいて、戦後になっても全くスタンスを崩さない正木の姿を描くことによって、理不尽があの時代だけのものではなく、いまだ現代にも続いており、それに対する正木の終わりなき戦いが続くことを示唆している。

まさにダークヒーロー。

■映画 DATA==========================
監督:森谷司郎
脚本:橋本忍
製作:田中友幸
音楽:佐藤勝
撮影:中井朝一
公開:1968年6月8日 (日)
2019 0926 ロイヤル劇場にて観賞。

取調で行われた警官の暴行による死亡事件。戦時下の統制、警察と検察の共謀隠蔽を暴こうと正木弁護士(小林桂樹)が奮闘する。
手がかりとなる遺体は日に日に腐っていく。焦りから暴走気味になる正木。そして、ついに墓地から「遺体の首」だけを持ち帰り鑑定を行おうという...
異色のサスペンス。しかも実話が基になっているらしい。

肝となるのは、東北の墓地から東京上野まで「首」を持ち帰るまで。
機関車内での警官とのやりとり、ハラハラはもちろん腐った魚と誤魔化す降りも少し面白かった。

『戦争が終われば、こんな酷い事件は無くなる...』
結局、世の中は変わらなかったんですねえ...
ガルシアでもなくウォーレン・オーツでもない、実話をベースにしたポリティカルなフィルム。そういう意味では真昼の暗黒と似てる。昔、知ってるつもり?というテレビで正木ひろしが取り上げられた際、本作のフッテージが使用されていましたね。作りとしては演者の顔芸を押した演出で全体的なバランス(ラストも唐突)は悪い。あと、この流れだとあたかも正木ひろしが首なし事件後も取り憑かれた様にされてるけど、チャタレイ裁判では長々と講釈したが意味不で誰も理解出来なかったりとかオリジナル体操の発案やら、ツッコミ所も多い人でもありました。
こんな傑作があったんだ。
史実ベースなのも驚いたが、これを本質を壊さず100分のエンタメ映画に仕立てた手腕に感服。
面白い脚本のお手本のような構成。胸をえぐるサスペンス。派手さはないが、そんなものは必要がないことの証明を見せられた。
正義の本質と日本の組織の本質を見事に突いてて良くも悪くも普遍的なテーマ。ホントいい社会派映画を堪能できました。
りっく

りっくの感想・評価

4.3
前半の警察署での炭鉱の先行が不審死した事件を追うミステリーとしての面白さ、そして中盤から弁護士の小林桂樹が執念妄念に取り憑かれ、正義を追い求めれば求めるほど、反比例してどんどん道を大きく脱線していく禍々しい面白さ、そして墓場から首を切断し無事に東京に持ち帰れるかという終盤のサスペンスと、息もつかせない傑作である。

それでいて戦中の日本の隠蔽体質、そんな空気に飲み込まれていき、正義がまた悪を生み出す悪循環。モノクロームの絵作りと吹き荒ぶ雪模様が陰湿な雰囲気を醸し出す。ラストに戦争によって首は焼け果てたが、その後遺症は確実に小林桂樹を蝕み、裁判所で被害者がどのように刺されたか模型で実演する狂気。フィクションと戦争の絡ませ方もまた見事。
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