ニーチェの馬の作品情報・感想・評価・動画配信

「ニーチェの馬」に投稿された感想・評価

sunflower

sunflowerの感想・評価

5.0
素晴らしい。
本当に素晴らしかったです。

静謐な空間の中に流れる、重く垂れこめるような空気。

必要でない要素は、最大限まで削ぎ落とされています。
説明的な部分は皆無に等しく、必要最小限の情報提供しかしないことで、鑑賞者の思考を起こし、観賞後も考えさせられ続けるような。

生きるとは何だろう。食べるとは何だろう。
次の日を迎えるとは、何なのだろう。
何があっても、どんなに過酷な状況下にあっても、生きていかなくてはならない。
そんな人間の根源的なことを、考えずにはいられませんでした。

この作品を知ることができて、良かったです。
初、タルベーラ・ワールド上陸。最初の馬のシーンが度肝を抜かれた。長回しで車を引く馬を撮ってるだけなのにあの迫力と映像美。あそこがピークでした。あれだけで見る価値はある。そこからはほんとに特に何が起こるわけでもないのに只只辛いシーンが続く。あの荘厳な演出はタルベーラにしか出来ないだろう。セリフもなく、これといった事件も起きないのにひたすら長回しすることで、とんでもない重たい空間の中、一言も発せず居合わせないといけない空気感がすごい。娘が静かに狂っていく様や、馬が生気を失っていく演出が凄まじい。正直馬の演技にやられた。超演技派。演技界のダークホースでした。
2.5hもずっと見てられるような面白い映画ではないが、もう一度時間がある時に咀嚼してみたいと思う。

2020 #115
shooooo

shoooooの感想・評価

4.1
鬼才タル・ベーラの世界。
とにかく重苦しく、深淵で、不条理な映画。

貧しい御者とその娘の閉塞感ある6日間をモノクロームの長回しで映し出す作品(しかも2時間半)。
強風が厳しく吹き付ける中、商売道具の馬は動こうとせず、食事はいつも茹でたジャガイモ一つ。疲れ果てた父娘の間にほとんど会話も無い。
そんな真綿で首を絞められているような映像をひたすら眺めるだけ。ある意味では苦痛に近い感覚なのですが、本当の生の不条理とは、どんな劇的なバッドエンドよりもこのような単調な生活の中に存在していて、それを如実に描いたという点で評価すべき作品です。
モノクロの映像は現実それ自体よりも現象を重苦しく感じさせますが、それだけに毎朝ドアを開ける際に光の白さが画面を支配する場面が印象的でした。


⚠️以下ネタバレ



監督が明言しているように描かれる6日という長さは創世記にて神が世界を創りあげた期間と対応するが、作中で父娘は一つまた一つと失いついに終末を迎える。まるで創造主への当て付けのように。
そして、長々と彼らの生の厳しさを見せられたあとで、終末はひとつの救いであるとさえ感じられる。最後のシーンで娘はジャガイモを食べようとしないが、いったい誰がそれを食べて生にすがりつくべきだと言えるだろうか。この状況は食べるのを拒む馬とも共通する。
このように捉えると本作のメッセージは安直な人生賛美へのアンチテーゼといえるが、それは最も小さき者へのまなざし故のものだ。(同時に、ニーチェの逸話に触発されているが、読み取るべきはアンチ・ニーチェ的な思想だろう。実際、哲学的な大言壮語を吐く酔っ払いが登場するが、彼の言葉は父娘の慰めにはならず、父は「もうたくさんだ!」と追い返す。)
mayuyu

mayuyuの感想・評価

4.5
圧倒的な映像美。
フィルムノアール
タルベーラ監督長回しの巨匠。
クセになります。
救いようがないです。
毎回人生最後の作品と言ってますが、これからもずっと作り続けてほしいです。
最近脚が痛くて不眠症気味だしチャンスと思って観てやった。無事完走。

そういう映画を作ったらまぁそういう感じになるよねっていうのを良くも悪くも超えてこない。でもこれが狙いなのか。薪割りで薪を置くたびに音割れしてたのが気になってから風が視覚的に凄い、というより聴覚的にノイズが苦痛になってきて、無の境地からしばらく心が離脱した。海辺の小屋であれば、音楽は波の音でも代替可能だったと思うし、余計な雰囲気も出ない分寧ろ良かったと思うけどどうなんだ。どちらにしろ本当の意味で極限を目指した作品では無いと思う。とにかくおっさんよりポーク・エリカの方が肝が座っていることは確か。深淵を体現した人だと思う。
S

Sの感想・評価

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パーリンカ
N

Nの感想・評価

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世界は7日間で創られ7日間で終わる、、、と思ったら7日目見せず映画が先に終わった!

真意を読み解くのは難しそうだけどちゃんとセリフのヒント通り、強者と弱者があるのではなく変化は静かに訪れるという映画ですシンプル!
繰り返しの日々の中で静かに何かが変わっていく
最後に火を失うのは文明が絶えるということか?

単調な日々なのにドラマチック
会話じゃなく連携した動きで2人のコミュニケーションを表す
家と外の画のコントラスト
薄暗い家から外に出ると一転凄まじい風のうねる音と光、舞う砂塵
家の中だと自然2人の動きや表情に注視するので同じ動作を次の日は別角度で見せたり

でも正面から顔を捉えたとこは1箇所だけ
4日目戻ってきて窓から外を見る娘を屋外からおさめたシーンのみ
なんか緊迫した空気を感じたのははじめての正面顔だったからだろうな
このシーンで娘は父が落とした馬具が見えてるはずなのに拾わなかった
それまで父の動きに連携していた娘が動かなかった
恐怖だろうな

限られた場で物語を作ってしまうすごさ
どういう生活だろうと興味を持たせて、あれなんか昨日と違うと違和感持たせて最後まで引きつけられてしまった

なんだこれすごいな
モノクロで長回しでセリフがなくてこの分厚い空気感はなんなんだろう
どのシーンも美しいけど馬小屋の中の画が好きだ
teru

teruの感想・評価

4.2
人はどんな生き方をしているのか。
自分はどんな生き方をするのか。
色々考えさせられる映画
終始風が強く吹き付けている家の中で明かりと言えば余命僅かな電灯と暖炉だけ。茹でたじゃがいもと塩のみの粗末な食事が食器のかちゃかちゃという不愉快な音をよりはっきりと意識させる。日増しに状況は悪化して、どうにかしようと試みるも結局もとの場所に戻ってきてしまう。見ている方も陰鬱な気分が次第に堆積して頭の中に真綿が詰まっているかのような感覚に引き込まれる。
終末の一言に尽きる。繰り返される単調な生活の幅が少しずつ縮まっていくあたり、世界の終わりとはこのことなんだなと思わされる。
父と娘の全ての行動が生きるためだけに行なっていることで、そこには一片の楽しみもないし、そんなことを表すのにbgmも一曲しかない。現代の人間に当てはめる事はできないけど、作品の舞台の時代における無神論者(信仰を持たない者)の生活はこれほどの仄暗さとしんどさを持つものだということを突き付けられた。
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