バッタ君町に行くの作品情報・感想・評価

「バッタ君町に行く」に投稿された感想・評価

 フライシャー兄弟による2作目の、そして最後の長編アニメーション。幸い、『ガリヴァー旅行記』と違ってこちらはDVDで観ることができる。
 
 
■ストーリーとキャラクター
 
 フライシャー兄弟は本作においてもディズニーの一歩先を行った。「オリジナルストーリー」という点で(ディズニーでは55年の『わんわん物語』が最初)。
 大都会の片隅の小さな空き地は、長らく柵が壊れたままで、しだいに人間たちが侵入するようになっていた。火の残ったマッチや吸い殻を捨てる大人たちや、駆け回る子どもたちに生存を脅かされる虫たちの苦難を描く。悪役のビーグリー・ビートルは人間の来ない高地に住んでおり、虫たちに新居を提供するかわりに、ヒロインの蜜蜂ハニーとの結婚を彼女の父に持ちかける。ところがハニーには楽天家バッタのホピティという恋人がいるのだった。彼はみんなのために新天地を見つけようと奮闘するが、ビーグリーが黙って見ているはずもなく……。
 単にオリジナルというだけでなく、舞台が現代の都会というのがディズニーと差別化されて目新しい。ストーリーもお金の絡んだ内容で、現実にもあるような世知辛さがある。悪役ビートルは資本家の戯画であり、善良な主人公たちは庶民階級である。しかも、両者の関係は人間のあいだでもパラレルに描写されており、人間側の事情がストーリーに組み込まれているという、なかなか巧みな構成である。やはり、ディズニーよりもやや大人っぽい。もっとも、従来のフライシャー作品に比べたら、ずっとディズニー寄りの作風であるのも確か。
 本作の弱点も前作とおおむね同じで脚本がイマイチで、キャラや音楽に魅力がない。敵も味方も失敗してばかりで話がなかなか進まず、一本調子な展開。さらに無意味なやりとりが冗長。ヒロインのハニーがやたらと可愛い(というか、どのキャラも可愛い)のは見所だが、彼女も主人公も単なる善男善女で個性に乏しく、しだいに飽きが来てしまう。それでも、『ガリヴァー旅行記』に比べると全体的にずっと良くなってはいるのだが。
 ただし、ラスト20分の展開は文句なしに熱い。とうとう空き地が売られてしまい、高層マンションの建築が始まる。その屋上に緑豊かな庭園が造られるとの情報を信じ、進退窮まった主人公たちは最後の冒険に出る。クレーンに乗り、鉄骨を渡り、続々と積み上げられるレンガをのぼり、圧死と落下とセメント漬けの危機をかわしながら上へ上へと勇ましく進んでいくのだ。
 ちなみに主人公とヒロインは、おかだえみこ著『歴史をつくったアニメ・キャラクターたち』の表紙を飾っている。同書によると、本作には『出エジプト記』(フライシャーはユダヤ系)、戯曲『虫の生活』、『ピノキオ』のジミニー、映画『我が家の楽園』の影響がみられるとのこと。また、宮崎駿は本作のファンだそうだが、結末に対するコメントは実に彼らしい。
 
 
■見所
 
 オープニングの、夕日に照らされたビル群から小さな草地へ、等身大の人間から等身大の虫たちへとカメラがじわじわ近づいていくのが何とも焦らされている感じ。ビル群やアスファルトなどの都会の景観、現代的な洋服を着た人間たちを描き、最初からディズニーとの対照性をアピールしてくる。このビル群はかなりリアルだし、マルチレイヤーになっているので、お得意のミニチュア撮影を使っているかもしれない。明らかな使用は、中盤の主人公が閉じ込められるジョウロの内側と、マンションの建築シーンでみられる。もうひとつのフライシャーの十八番、ロトスコープは人間のアニメーションではほとんど使っていると思われるが、違和感を抱かせない。また、『ガリヴァー旅行記』で反省したのか、人間たちは顔を映さないことで世界観を壊さないように配慮している。また、草をかき分けるようにカメラが進むショットは、普通のマルチプレーンで撮影しているように見えるが、どうだろう。
 興味深い独特の構図もみられる。悪役ビートルの登場シーンで、澄まし顔の彼は内心で空き地が危機に陥るのを期待しているのだが、固定されたカメラに近づくように歩き出す。徐々にアップになる彼の顔は、その腹黒さをあまりに強調した醜いもので、子ども向けのカートゥーンの水準ではない。また、ビートルの子分たちがクラブからつまみ出されるショットも、彼らや守衛の姿を映さないがPOVともまた違う、変わった撮り方がされている。こうした独特の構図、実写映画を意識したようなカメラワークやディゾルブの多用なども、ディズニーの長編では見られない独自性といえるだろう。
 
 本作では、小さな虫たちの視点で世界を描くなかで、大小の対比が極端となることで、ディズニーを上回る立体感が画面に生まれている。アイディアが独創的で、動きもリッチで、ディテールにも富んだ、見応えあるシーンが多い。ホピティが人びとの足をかわしながら進むくだりは、序盤の見所である。また、ホピティが感電するシーンは何とも奇天烈で、真っ暗な背景に、ネオンのような蛍光色で輪郭のみが描かれたホピティが、火花のエフェクトをまき散らしながらジタバタする姿が30秒にわたって描かれる。そして、先述したラストのビル登りはテンション上がる。
 背景もすばらしい。冒頭のビル群も洒落た感じだが、虫視点で大きく描かれた草花たちが実に美しいのだ。
 
 
■フライシャーの終焉
 
 残念ながら、すでに太平洋戦争が勃発していたこともあり、本作は興行的大敗を喫した。すると、かねてよりパラマウントとの関係が悪化していたフライシャー兄弟は、自分たちのスタジオから追放されてしまう。その後、彼らが表舞台でふたたび輝くことはなかった。スタジオは、フェーマス・スタジオと名前を変えて続いたが、やはり2人のアイディアマンを失ったことで衰退していくのだった。こうして劇場公開用の長編アニメーションは、以後長らくディズニーの独壇場が続くこととなる。
 公平を期すために補足すると、ディズニーにしても、戦前・戦中の5作すべてが成功したわけではない。しかし、戦後は『白雪姫』『ピノキオ』『ファンタジア』『ダンボ』『バンビ』のいずれもがカノンとして崇められている。『バッタ君 町に行く』も、フライシャーが戦後に息を吹き返していたら、再評価をされていたのではないだろうか。歴史に埋もれた傑作である。
過去観賞記録(2012年6月)。
この作品は私がTSUTAYAでアルバイトをしていた当初に思い切ってレンタルして観たもの。
どうせクソみたいなアニメなんだろうなぁくらいに思っていたし、今となってはほとんど内容も覚えていないんだけど、Filmarks評価が高くてビックリした。
話の途中で「ブンブンブン」って台詞があったことしか覚えてないわ(笑)
機会があればまた観てみよう。
虫の世界。安心して暮らせる住処を探して奮闘する話。

かわいかった
正直、フライシャー兄弟とかあまりよく分からず観たんだけど、これはすごい出来ですね。

人間の世界が別物に見えるのに、虫達の世界観はとても親しみやすい。
そしてとにかく動きが楽しいし、何度も笑った。

間抜けな手下の2人組が好きだなあ。
martroniks

martroniksの感想・評価

3.8
オススメされての鑑賞。途中から娘も一緒に。
これは素晴らしかった。なんとなーく聞いた事のあるフライシャー兄弟という名前と古いアニメーションだという情報しかなかったけど、むちゃくちゃ面白くて驚いた。
古いアメリカのアニメーションに対しては、物だとか生き物の動きのデフォルメのされ方が過剰すぎて苦手だという意識がなんとなくあったけど、この作品にはあまり嫌悪感がなかった。それどころか、物の動きに生理的な気持ち良さを色んな場面で感じた。
クライマックスの虫独特の散らばる動きの描き方も凄いと感じたけど、一番グッと来たのは感電するシーン!ちょっと短いのが残念だけど、サイケデリックでめちゃめちゃヤバい!有名な「ダンボ」の酩酊シーンを連想したから調べてみたら、「ダンボ」も「ばったくん」も'41年の作品!すっげー!!
脚本も良いしオチも良い。文句なしに素晴らしい作品だけど、一つだけ不満だったのは自分がレンタルしたDVDの仕様で、吹き替えが無くてそれなりに難しい漢字が出てくるから、娘には読めなかった箇所がかなりあった。
古いアニメーションは凄いのが沢山ある様だから、これから掘っていくのが楽しみ。
chisa

chisaの感想・評価

3.1
ダンスや歌など
人がするミュージカル映画を擬人化したバッタでアニメ化したものという感じ
これが1941年製作だなんて!
緻密で滑らかなアニメーションは素晴らしい。ディズニーよりもずいぶん擬人化されたキャラクターたちがよく動く動く動く。
バッタくんはおっちょこちょいだけどかっこいいヒーローで、ヒロインの蜂の女の子も可愛い。
人によって生活環境を脅かされる庭の生き物たち。何気にメッセージ性も高い。
全員コミカルによく動く。
絵に古さは感じなかった。
バッタ君はヒーロー。
5

5の感想・評価

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ああ、主人公ってこういうことか、という気づきがあった思い出。
明らかに、物語ることよりもスラップスティックなアクションやギャグ、ディテール描写に力が注がれている。
万人に愛される為、ディズニーが手放した面白さがフライシャー兄弟のアニメには在る。
小バエがとても可愛かった。
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