大虐殺の作品情報・感想・評価

「大虐殺」に投稿された感想・評価

最初に言っとくと映画として相当面白い。
アナーキスト集団【ギロチン社】を描いた映画で「面白い」と思ったのは本作が初めて。
因みに劇中では【ギロチン社】という名称は登場しない。

長らく未DVD化でもう見る事は叶わないかと思ってたら突然DVDが発売。
しかしレンタル・配信はないと思われるのでネタバレで失礼<(_ _)>

冒頭の関東大震災、崩れ落ちる浅草十二階と炎に包まれる帝都東京。
このカタストロフの光景は映画で何度見ても、同じ特撮でも怪獣映画の都市破壊のシーン等とは違った恐怖と迫力がある。
この震災の混乱と社会不安に乗じて軍部・憲兵隊、特に甘粕正彦大尉を中心とする急進派グループは社会主義者・無政府主義者の一掃を目論む。
そして「主義者」の中心的存在であるアナーキスト大杉栄の抹殺及び政府への不満分子を一挙に粉砕する計画を実行に移す。
「朝鮮人が井戸に毒を入れた、火を付けて回っている」等の根も葉もない悪意に満ちたデマ、そして「社会主義者達が混乱に乗じて政府転覆を狙っている」等の流言飛語を利用したものであり、何の罪もない大勢の朝鮮人が虐殺される阿鼻叫喚の地獄絵図が展開される。
この関東大震災における朝鮮人虐殺の殆どはそれ迄は曲がりなりにも普通に隣人として暮らしていた多くの「日本人」によって行われた。
ルワンダの虐殺も人類最大の愚行とも言えるホロコーストもこうした「一般市民」の協力がなければこれ程エスカレートし大規模には起こりえなかった筈。
寧ろ市民の中から戦争や災害という社会不安の中で生まれる負のエネルギーみたいな物の捌け口として、それ等を手近に存在する「他者」への攻撃へ変換する事によって政府や為政者に対する不満や国政への疑問をすり替えをし考えさせない、そして民衆一人一人もファシズム・独裁国家を形成する一員となり支配者達に従順な「国民」を作るという効果も持つ。
本作では一般市民による虐殺は僅かなシーンのみで殆どは憲兵隊によるもの。
この時代には未だ大日本帝国の憲兵隊をナチスみたいな悪辣集団として描く事が可能だったのか。
甘粕率いる憲兵隊は軍隊というよりも権力を笠に着たゴロツキ集団であり正にタランティーノの映画に出て来るナチスみたいである。
そして甘粕と憲兵隊による大杉栄と妻・伊藤野枝が上野で拉致から連行、尋問とは言えない難癖の様な尋問から即二人とも余りにも簡単に殺されてしまう。
因みに上野の西郷さん像から京成上野駅方面に続く階段へと連行されて行くのだけど今と当時の風景は殆ど変わってないのだな~と思った。
この時一緒に居た為に巻き込まれて殺された子供は大杉栄の甥の橘宗一(むねかず)であり女装していた為に長女・魔子と間違われたという話しもある。
何れにしても酷い。
更に酷いのはこのいわゆる「甘粕事件」の軍事法廷。
仮にも軍人が何の犯罪の容疑も嫌疑もない民間人三人(しかも一人は子供)を拉致して殺した大事件を内々の茶番に等しい裁判で片付けてしまう。
笑ったのが甘粕が「子供は部下が勝手に殺した」と部下に罪を擦り付け、部下は当然「甘粕の命令」って言うし裁判長の「どっちなんだ」って問いに甘粕が逆ギレ気味に「俺が全部独断でやったんだー!」ってなったら「全ての罪を甘粕は一人で背負う覚悟」みたいな感じになって裁判長が何故か涙ぐんで感動してるって、
( ꒪Д꒪)はあ?????
何かこんな光景を最近テレビで見た記憶があって、スガが辞めるってなった事に関して小泉のバカ息子が「スガは誰よりも働いて頑張った。その責任をとった」みたいなイミフな事言って涙ぐんでたのとそっくりな気がした。
( ꒪Д꒪)はあ?????
かように甘粕事件の顛末は甘粕の懲役十年の判決ながら特赦されて数年後には甘粕は釈放のち満州映画撮影所所長となり国策映画を作るのは歴史の通り。

そしてこの国粋主義者・ファシスト達の蛮行に対して主人公である社会主義者グループのリーダー古川(天知茂)が遂に復讐と革命の為に仲間を率い立ち上がる。
と、ここまでは社会派・反権力のメッセージを多分に含むネオリアリズムモ・ドキュメンタリータッチの映画。

しかし後半はほぼコントである。
同じ事が繰り返すギャグを「天丼」て言うらしいけど後半は正にテロを計画→失敗が繰り返される「天丼」状態のループに入っていく。
関東大震災における戒厳司令官・福田大将をターゲットに暗殺計画を何度も繰り返すも失敗する。
古川をリーダーに青地、和久田、村上の四人の事実上ギロチン社メンバーの底抜け大作戦が始まる。
それから古川が懇意にしてる新聞記者の妹・京子と古川のロマンスも差し込まれるけど、言っちゃ悪いがこの京子って女がとんでもないおバカちんで全てを台無しにしてくれる。

【交番爆破事件】
テロ作戦実行の為、缶詰爆弾による演習作戦。
朝鮮系組織と思われる女爆弾武器製造人がかっこいい。
缶詰爆弾は冗談みたいに物凄い威力である。
初期仮面ライダーで怪人が爆発する時位の威力がある。
逆をいえばこれ程の必殺兵器を持ってて何故尽くテロは失敗するのか。

【資金調達の為の銀行員襲撃強盗事件】
何度も映像化されてるグダグダの一般人襲撃作戦。
出来の悪いコントみたいで被害者の銀行員は何にも悪くないのにただ気の毒。

【戒厳司令官福田大将暗殺未遂】
陸軍省へ入る福田大将に青地が缶詰爆弾を投げて爆殺!
しかし会議の開始が1時間遅れて待ってても来ない福田大将。
周辺を彷徨いてた青地は詰め所に居た警官に怪しまれて(何故前を通る('-' )........)計画失敗。

【福田大将の講演会での暗殺未遂】
福田大将が車から降りたところを和久田が銃で撃つ。
しかし銃から発射されたのは空砲(確認しとけ!৲( °৺° )৴)
撃たれた福田大将は(´・ω・`)?な感じで終了。

【陸軍省にて幹部が集まる会議室で全員爆殺!!】
電話の修理員を装って陸軍省に潜入(何で簡単に入れる?)
会議が行われる部屋に爆弾を仕掛けるも古川を助けたい一心で京子が警察にこの計画をチクっており(ダメダコリャ(T∀T ))呆気なく失敗。
鉄格子が付いた憲兵車両で連れて行かれる古川の叫びと共に【終】である。
革命は果たされる事は無い。
ファスビンダー『第三世代』にも通じるテロの空しさとその虚無感。

ギロチン社のリーダーとその片腕とも言える二人、中濱鐵と古田大次郎。
天知茂の古川はこの二人を合わせたキャラクターだったけど矢張りこの二人が大日本帝国という嘗て存在した悪の帝国に挑む『フィクション』の物語が見たい。
『大虐殺』に関してのグダグダぶりは、この二人を演じるのは『菊とギロチン』の不倫野郎と二世俳優よりは志村けんと加藤茶が合ってると思う。

『菊とギロチン』も『シュトルム・ウント・ドランクッ』もダメだった。
現実を超えて幻想の「テロ」と「革命」を成し遂げるギロチン社、中濱鐵と古田大次郎を見たいものである。
カルビ

カルビの感想・評価

4.0
再販されたDVDにて鑑賞。
震災シーンの特撮や虐殺シーンはかなりの迫力。
ストーリーも見応えあるしこれは中々の映画。一見の価値ありだと思う。
かなり左寄りの反権力な内容だが関東大震災時の虐殺については実際にあったことだ。
しかし劇中で描かれてる描写の正確性はどうだろうな…
色々と思うことあるが観て良かった作品。
『大虐殺』
関東大震災直後と虐殺(軍人やべえなあと思わざるをえない描写ばかり)を丹念に描き、大杉栄が見せ場なく死に、中濱鉄と古田大次郎が混ざった役を天知茂(役はどうあれ、くそかっこいい)が演じ、『菊とギロチン』が参照してるであろうシーンが多々あるというだけの映画だったけれど、未DVD化なため伝説になっていた映画。セクシーなシーンが一切なく、無駄に硬派なのがギロチン社の滑稽さを強くしている。


ちなみに『菊とギロチン』が参照してるであろう場面は、和久田なる人物が大杉栄の演説中に逮捕されるシーンと、「女が守れなくって〜」の部分。まじでこんな映画から良いとこ盗んでるなって思う。


暗くじっとりした質感のため、失敗が陰惨になってしまう。本来、本気の失敗は笑いに転ずる可能性を孕んでおり、ギロチン社を題材にした作品(映画、小説、伝記など)はどこをどう落とすか、どんなふうに失敗を描くか、がキモになるのだが、『大虐殺』は失敗している。笑 実は『日本暗殺秘史録』の古田大次郎パートも似たような質感になっていて、これが昭和のギロチン社の映画の空気とも言えるのかもしれない。


瀬々敬久監督は、この昭和的質感を逃れるために、女相撲を登場させて、見事な青春群像劇に仕立て上げたのだろう。
2018/9/19@ シネマヴェーラ 新東宝のもっとディープな世界
あんなに美しい天地は初めて見たかもしれない。
正義とは難しいものだ。作戦は「SW 最後のジェダイ」のレジスタント並みの成功率(つまりめちゃくちゃ低い)なんだけど、そうしたのは正当化したことになるからかな。
状況を何にも分かっていない美人(恋人)が何もわからぬまま「ついていく!」と言い出さなかったのは救い。。
shibamike

shibamikeの感想・評価

3.0

このレビューはネタバレを含みます

自分にとって見応えのあるシーンは全部序盤に出てしまい、残りはあまり興味持てず、消化試合を観戦するような気分であった。

大正12年の関東大震災から映画は始まるが、凄い大きな地震だったんだなと、今さら認識した。
関東大震災発生後、大勢の被災者が出て、日本が大変なことになる中、大規模な天災の陰で凄惨な人災が起こる。

震災のさなか、世間では以下のような噂話が出回る。

「騒ぎに紛れて在日朝鮮人が泥棒や放火の悪さをしてるぞ!社会主義者達が混乱に乗じて革命を企てているぞ!」

まったく根拠のないデタラメなのに、普段から彼らを憎んでいた狂信的愛国主義の憲兵達が在日朝鮮人と社会主義者を大虐殺する。河原に在日朝鮮人と社会主義者を集めて、土手から機関銃で一斉に射撃するシーンは衝撃だった。あれは歴史的にマジなの?

こういった究極に理不尽な横暴に我慢の限界を迎えた左翼の青年達がテロを計画する。映画の中盤から最後まで彼らの闘争が繰り広げられる。が、正直興味が持てなかった。主義とかの映画と思ってなかったので、観ながらちょっとゲンナリした。

新東宝特集、今日でおしまい。
buccimane

buccimaneの感想・評価

3.5
天知さんの険しいツラがハマってて良かったけど古田大次郎の役菊ギロで佐藤浩一の息子がやってたのとだいぶキャラ立ちが違う印象。
月の砂漠とか最後のアジりにめちゃグッときた。
寝た相手が実はみたいなのは話盛りすぎじゃないのと思ったけど。
爆弾作るとことか見たかった気もする。
ていうか2人で逃げてて爆弾同時に投げてるの勿体なかった。
念願の鑑賞。関東大震災と虐殺場面は期待通りで良かったし、前半なんかは『デトロイト』みたいでテンション上がった。虐殺場面とか人死に過ぎてビビる。尋問場面でオカンが打たれてるのをガキが扉を開けて見ちゃうってのがまたイイね。後半からは失速していったけれど、如何にも新東宝らしいゲテモノ映画でなんやかんや素晴らしかった。
一

一の感想・評価

-
関東大震災の戒厳令下での朝鮮人虐殺と社会主義弾圧を扱った力作!ではあるんだが、気合いの入った震災のスペクタクルと酷いジェノサイド・弾圧のシーン以外たいして面白くない~。クライマックスの爆弾テロもやり方杜撰すぎ!当然未遂!その前に一般人相手に数人がかりで襲い掛かっておいて強盗も失敗するし、逆になにが出来るんだってかんじのポンコツアナーキスト天知茂。でもサマになってるんだな~。
現実に起こった傷ましすぎる事件を容赦なく映像化。真面目すぎて中盤以降は平坦な印象もあるのが難点。遺児をだっこした天知茂が「月の砂漠」を半泣きで歌うシーンでもらい泣きした。
関東大震災の後の社会主義者の虐殺を経験し、甘粕事件で師を殺されたことにより、天知茂が復讐のテロを計画する話。

罪もない人を殺す憲兵は極悪だけど、天知だってやってることは似たようなもので、見てるのはつらい。けど、暴力がさらなる暴力を呼ぶことや、テロリストになっても良心の呵責に悩まされる姿を描いた力作と思う。

関東大震災の場面など、大量のエキストラを使っていて、迫力があった。

ちょうどこの映画を見た、9月16日が甘粕事件が起きた日だった。

「玉石混淆⁉︎ 秘宝発掘! 新東宝のまだまだディープな世界」@シネマヴェーラ渋谷
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