どんてん生活の作品情報・感想・評価

「どんてん生活」に投稿された感想・評価

晴天でもなく、雨天でもなく、曇天な日々。雨は降らないから、地は固まらないし、晴れないから晴れ晴れとした気持ちにもならない。なんとなく、曇天な日々なのだ。サンダーロードの仁さんが仁さんにならなかったら、このリーゼント頭の山本浩司になってた気がする。


私は、ここに出てくる人たちのことをうまく語れない。因数分解して分析したくない。わかった風の物言いをしたくない。怒ってないのに、「怒るなよ」と言われると、何だかムカついてくる。ビール1缶を万引きして、コンビニの裏の部屋に連れて行かれた際の妄想。電話での伝言はあえて当人に伝えない優しさ。俺たちが撮ってんのは、AVじゃなくて、裏ビデオ。はじめっからボカシないのを前提に撮ってんだぜ、という、プライド。炬燵には頭を突っ込んでほかほかしてみる。色んなことがあるけれど、曇天な毎日でも、桜の季節は巡ってくる。



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*収録されていたメイキングもいい。どうやら今作は、大阪芸大の卒業制作作品らしい。若かりし山下監督や向井康介など、スタッフも多数登場。

まだ何者にもなってないけど、何者にか、なろうとしていて、自分たちはすごいものを作っているのだと不安ながらも信じていて、自分たちの映画づくりを楽しみ、熱中しているように感じる。映画作りへの思いが、伝わってくる。そしてそれは全て、観ている私が、後付けの理屈を加えて、そう思いたくてそのように観ているのだということも、私は自分でわかってる。それを承知のうえで、いい。最近観た『ハード・コア』と今作は繋がっていることを教えていただいき、それを契機に観た。確かに、今から20年ほど前のこの作品と、今年公開の『ハード・コア』は繋がっているように思う。山下監督の思いが(向井康介の思いが)、ここにある。進化するために脱皮して、鮮やかに華やかに羽ばたいていく人も見事だなあと思うけれど、原点を大事にしていて、そこにこだわっていくような生き方も、これまた凄いなあと思うのだ。そして、格好良く羽ばたけない人に、やはり抱きつきたいと思ってしまう。
ropi

ropiの感想・評価

4.5
元暴走族のキーさんと冴えない無職の青年ツトム。二人は曇天のなか開店前のパチンコ屋で出会い、何となく意気投合する…
山下敦弘監督初の長編作品。文字通りどんよりして先の見えない生活を送る二人の男の物語。

柱から見えるリーゼントを見て喉をゴクリとする冴えない青年、リーゼントの方もなんとなく青年を気にしている。似た雰囲気を感じながら温かい缶コーヒーを足がかりに何となく意気投合する…この自然な空気感がとても心地よい。
呪と書かれたマスクをみてから般若をなぞる場面がなんか好きだ。「まぁ生きてりゃいいか」の一言に二人の生き様が詰まっている。赤犬の音楽がこのオフビートな世界にぴったり。結論、この映画なんかすごくとても好きだ。
『鬼畜大宴会』で近藤龍人と共に撮影助手として参加した後、山下敦弘が初めて手掛けた長編監督作。この頃から安定感のある演出で「職人気質」という肩書がよく似合う。

師である熊切和嘉のダーティーな作風を受け継ぎながらも、ほんのちょっと含み笑いのある飄々とした雰囲気が特徴の駄目人間謳歌ものに仕上がっている。デビュー作からやたら映像の「間」が多く、撮影も暗くどんよりしている。まさしく「曇天模様」。日本のインディーズ映画にありがちな作風だが、少なくとも自閉的な感じはしない。

しばしば比較されるアキ・カウリスマキやジム・ジャームッシュ作品とは全くもって異なる都会の廃棄物やヘドロのような臭みを放つ青春映画の怪作。

『天然コケッコー』辺りでメジャー進出してからはどんどんボルテージが下がっていった山下監督だが、一貫してイビツな人間関係を描くというスタンスは初期の頃から確立されていた。
とても23歳の若者が撮ったとは思えない洞察力である。
りっく

りっくの感想・評価

3.5
オフビートでシュールな雰囲気。
細々と生き、ボソボソと喋る人間たちに、サクセスストーリーは訪れない。
けれども、何故ラストで人間たちが集まるだけで、ここまで清々しい気持ちになるのだろう。
山下敦弘は人と人との間を凝視する。
そこにこそ、「人間」が宿っていると信じているからだろう。
カメラは不動で、物語の動きも少ない。
だが、人と人との間は常に動いている。
だからこそ、そこに情動が生まれるのだろう。
きったねぇ、、部屋、服装、髪型、生活。
フィルムの感じ、時代の感じ、なぜか震えちゃう。
呪いのマスクと突然の万引きに笑う。
妄想ではよくボコボコにする。
ただただ撮す。そういうことなんだなぁ。
山下監督若い!
昔テレビの深夜放送で観た。もっかいちゃんと観たい。天然コケッコーの監督とは思えないくらい面白かった記憶。
犬

犬の感想・評価

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"どんぞこ"じゃなくて"どんてん"なんだよ。ただ曇ってるだけなんだよ。なんだかラストの花見で救われる。「一億あったらどうする?」からの「まあ生きてりゃいいか」は曇天なのに眩しい。
万引きで急なバイオレンスを挿入するの上手い。んでメイキングめっちゃ笑える。
Oto

Otoの感想・評価

3.6
今泉監督の講義で「笑いの原点はどこ?」という質問をした時に教えてもらった映画。その理由として「中の登場人物は一生懸命で面白いと思っていないのに、コメディとして成立しているから」と監督は言っていた。

どこまでも情けなくて欲に正直な二人が描かれていて、自分にとっては笑いよりも切なさが勝ってしまった。
・元妻とやりたくてホテルの前で腹痛のふりをして
・唯一の収入源の裏ビデオさえもなくなり
・いい歳こいて暴走族を続けて
・ビール1本のために万引きをして
・上手くいった妄想をする(パチンコ、撲殺、花見...)
・けど自分の意思では結局何もできない
・病院に行く金も保険証もなく
・後輩から金を借りて子供のプレゼントを買うが
・嫁が会わせてくれず自分がおもちゃで遊ぶ
・それでもパチスロには通い続ける...

それにしても大学の卒制でこれだけ面白い芝居が作れるのは凄いな。。会話のテンポとか間とか明らかに異質。片方が寝てしまっているのとか、ヘラヘラ話してるだけのしょうもないやりとりを長回しで撮れる勇気。短編ばかり作っていると身につかないかもと思った。
あとは制作部を経験するようになってから衣装とか小道具とかにも目が行くようになって、時制の表現としても注目できる。

イチャンドンとかLIFE!よりもいち早く妄想を表現として取り入れてるのナイス。フェリーニとかもっと早いか。あとは引きの画とオフの会話が印象的(公園のブランコ、裏ビデオを捨てに行く、駅で待つキーさんと後ろを通る知り合い、河川敷での高校生との対比、ラストの花見)。笑いのツボがイマイチ合わないのは手数の少なさ?終盤の長さが少し苦痛に感じた。

最近映画祭とかでよく感じるのは、「巧さ」で正々堂々と勝負しても、四六時中映画のことを考えている人たちとか、成瀬巳喜男、相米慎二、深田晃司...のような巨匠に勝てるはずなくて、他の軸足を持ってる変わり種だからこそ産める変な映画を作ることが自分にとっても観る人にとっても一番幸せなのかもしれない。てかそうじゃなかったらこれだけ面白いものが溢れている中、自分で作る意味ないよなーとか。なんで作るのか再考すべき…。
「文脈」に依存したコンテンツの99%は埋もれてしまうわけで、いくら千原ジュニアに憧れようとも、それよりは文脈の恩恵を捨てた野爆や天竺を目指すべきだと感じて、その意味では学びがあった。

たまには家で鍋つついたりとかだらしないパーティーをやるのもありだなぁとか思ったよ。自己実現、利益、名誉とかに囚われないかっこよさがこの映画の人物にも今泉監督にもある。笑い泣きできる映画を作りたい...。
山本浩司が俺の中でいちばんきてる。

山下敦弘監督の『バカのハコ船』がかなり面白かったので、彼の最初の作品となるこちらを借りた。
ハコ船の主演を務めたのが、山本浩司なのだが、彼がかなり良いのだ。顔つきや言動、風貌すべてがいかにもクズ男っぽい。クズ男は大好きなのでドンピシャだった。日本のクズ男代表としてあげるなら山本浩司を推すと思う。

今回の作品『どんてん生活』だけど、こちらもやはり(やはり?)山本浩司含むそれら取り巻きのクズっぷりというか良い感じのクズぶりで観ていて心地よい。いま学生生活を送っている俺だが、自分含めた大概クズみたいな生活を送っている人たちにはたまらないであろう生活感を演出している。宇田鉄平さんのクズっぷりな演技も好き。

山本のアパートで山本と宇田がテレビ観ながら新年を迎えるときに、テレビから聞こえる3.2.1掛け声で山本が小さくジャンプして、宇田はずっとテレビをみるところとか微笑ましかった。
YOU

YOUの感想・評価

3.6
題名がいい。
「どんてん」とは「曇天」のこと。
ひらがなにして「生活」を付ける。
「暮らし」よりは軽やか

デヴィッド・リンチ監督の
『インランド・エンパイア』の冒頭
「ある冬の曇り日と古いホテル」という曲名が出てくる。
「ある冬の曇り日」と「古いホテル」。素敵だ

「どんてん生活」…
でも、やっぱり「くもり」で「生活」なのだ。
開店前のパチンコ屋に並んでいて知り合った
さえない男二人の話。
山下敦弘映画でお馴染みの山本浩司と
将棋の藤井聡太七段似のプー。
裏ビデオの仕事、VHSテープ、モザイク、
ビデオ付き小型(ブラウン管)テレビ…昭和のにおい。
部屋の照明に笠がない。細かい

「冬の曇り日」「古いホテル」
「サンダルに靴下履きでパチンコ」
「こたつ寝」「裏ビデオ」「古いラブホテル」
「敷きっぱなしの布団」「蛍光管むき出しの照明」
「廃墟のようなパチンコ屋」
そういったものの魅力ってある。
山下敦弘監督は、苦笑しながらも、
温かく描いている(たぶん)

ダメ男三部作の一作目。
三作目の『リアリズムの宿』では
さえない中に、一点、尾野真千子が
奇跡のように初々しく輝く。
ジャ-ムッシュほどおしゃれじゃないし、
カウリスマキほどスタイリッシュじゃない。
でも二人に双する監督と評価される

「貧乏」「古いもの」「ダメなもの」って
「わび・さび」に通じると思う。味わい深い
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