説経節の演目を基とする森鴎外の小説を映画化した、溝口健二監督の最高傑作とも言われる名作。ヴェネツィア国際映画祭グランプリ受賞作品。
人買舟に売られて離れ離れとなった母とその二人の子供、安寿と厨子王…
一家離散と”奴婢“⁉︎という、我々にはパンクじみたテーマ。消滅した日本独自の神聖さもフィルム全体に染み渡っていて、良い。
鴎外版(原典)にあった地蔵の治癒能力も排したのは英断。あのぬるい救済が入って…
名作を撮った名監督という意味を超えて、完璧なショットとは、どういうものであるのかを教えてくれる映画監督のうちの1人として、『雨月物語』(1953年)を通過したのち、溝口健二は胸に刻まれることになった…
>>続きを読む地獄はたしかにそこにある。あった。
完璧なショットの数々はもはや言うまでもない。驚いたのは精緻な作劇性だ。
いかにこの平安時代が狂気の時代であったか。
それでも父は人間の平等を謳い続けた。
しかし…
他のを先に何作か見て、そこから雨月→近松→山椒と見てきた中で、ここで一つの到達点に近づいたのではないかと思う美的センス・日本的幽玄さに、ただただ平伏す。
展開も多く、家族という普遍的に思えるものを…