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愛してる、愛してないのemilyのレビュー・感想・評価

愛してる、愛してない(2011年製作の映画)
3.8
結婚5年目を迎えた夫婦、ある日妻が出張のため空港まで見送りに行く。その車中で、妻は別れ話をする。夫は取り乱すことなく、その言葉を受け入れるのだ。自宅、彼女が出て行く当日、嵐の中荷造りをしている妻。お隣の猫が迷い込んできて、仲良しのお隣さんが訪ねてくる。

車内の二人、なんか微妙な空気が漂い別れ話をサラッと話す。そのタイミングが非常によい。トンネルの暗さがふたりの雰囲気に寄り添い、トンネルを抜けたところでし、考え直してと夫は言う。そこから暗転してのタイトルコール。この冒頭の一コマの光と陰からセンスを感じる。

男と女の距離感も閉鎖的な空間、雨で暗い室内、同じ場所に交互に配置し、一人はさっと去るのに対して、もう一人はそこに佇む。何気ないシーンにも心情をたらし込み、じわりじわりと二人のそれを見せてくる。

当然二人が元に戻れそうなエピソードもいくつかあり、女が窓を閉められず、男に頼むところや、猫に引っ掻かれその手当をするシーン。二人がふれあい静止する。時間までも静止したように、雨の音だけが儚く流れるのだ。

何でも完璧にこなす、何をしても怒らない夫。タバコばかり吸って、他に男が出来てしまった妻。捨てるのが得意な妻と捨てられない夫。料理のシーンもあるが夫の、丁寧な作業と手先の美しさに釘付けになる。その最中ある刺激が彼の眠って居たものを揺さぶり、溜まっていたものが溢れ出た瞬間、安堵を感じるのだ。待ってたのはそれなんだと。

人の数ほど夫婦の形がある。離れた方がうまく行くカップルもいれば、喧嘩ばかりでもきちんと愛を伝え合ってる夫婦もいる。二人が納得できる形は無限大だ。しかしそれは話し合い、自分をさらけ出すことで見つかるのだ。静かながらしっかり心の動きをみせ、夫婦の形を考えさせられる。
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