まごころの作品情報・感想・評価

まごころ1953年製作の映画)

製作国:

上映時間:94分

3.5

「まごころ」に投稿された感想・評価

センチメンタルな小林正樹監督作品であった。

小林監督の前作『息子の青春』に引き続いて、石浜朗が学生役で出演しているが、煮え切らない態度にイライラさせられる。
田中絹代は「賛助出演」という珍しい表記、野添ひとみは当時「S.K.D.」などが印象的な出演者。

物語は、裕福な家の息子(石浜朗)が、向かいの北向きボロアパートに越して来た肺病の少女(野添ひとみ)と、窓ごしに惹かれあう青春ドラマ風のもの。

冒頭はラグビー場面から始まり、息子(石浜朗)がラグビーをしている。彼の家は裕福であり、父親(千田是也)は実業家、その妻(田中絹代)、姉(淡路恵子)と祖母(東山千栄子)と一緒に豊かな生活をしている。
その代表的エピソードが、家で飼っている犬を入院させるというもの。

一方、向かいの貧しい少女(野添ひとみ)と姉(津島恵子)は、強欲な叔父から逃げて来て辛い生活をしている。それを支えるのが姉の恋人(三橋達也)。
この少女が、病床で「手鏡を使って顔を映すシーン」が、ベルイマン監督『野いちご』に似ていると思ったが、この映画の方が製作年は早いのでビックリした。

ただ、物語は、あちらこちらで破綻しており、木下恵介の脚本が失敗している感あり。
だいたい少女が死にそうな状況なのに、なぜ彼女に惚れている息子がメンツなどをかなぐり捨てて父親に助けを乞わないのか?
なぜ少女が死んでしまったのにラグビーしているのか?
少年の気持ちがよく理解できない場面あり。
「木下恵介がどうして自分名義で撮らなかったのか?」と言いたくなるくらいの傀儡映画。ホントに小林正樹が監督したのかな。良い作品なのでどっちでもいいけど。

デビュー作である前作『息子の青春』ではギリギリ抑えられていたものが初長編である本作ではブチまけられていた。つまりブローアップ作。全く繋がりはないけど続編と言ってもいいくらい。

前作でも大概だった石濱朗への愛情目線が、他には目もくれるなと言わんばかりにフォーカスされっぱなしで異常。驚きのテヘ演技、異様なまでの顔のアップ、知能を疑うくらいの純真さetc.が凄い。しまいにゃラグビーで泥んこにさえなっちゃうし。

混んでいる電車の中を石濱朗が見回して「美しい女性ってのはなかなかいないねぇ」とボヤかせているところは木下恵介イズムがビンビンで最高。セリフだけでなくちゃんと不細工な女性乗客たちの画をしっかり挿入しているw

物語は、金持ちボンボン受験生・石濱朗が、家の裏の陽当たり最悪なボロアパートに越してきた肺病持ちの野添ひとみに一目惚れ、名前さえも知らないまま夢中になるという純愛+難病もの。はっきり言ってありがち。でも本作は直球アイドル映画なのでそんな些細なことはどうでもよい。

孫(石濱)を溺愛する婆さん・東山千栄子が何げに素晴らしい。孫にはとことん優しいけど、近くの不幸な他人(=野添ひとみ)に対しては当たり前だけど無関心。それどころか比較して孫に「(あの娘に比べたら)あなたは幸せよ〜」とまで言う。決して悪人ではないのに。
死期の迫った野添ひとみのことを近所の飼い犬くらいにしか思っていないような口調で話すところに小林正樹らしいリアリズムを感じました。死んだ人のことをくよくよ考えるな、というところも。

とりあえず『息子の青春』とセットでマスト。